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斧を振り下ろす‥

【発症2日目〜】

次の日、オット、マッキーは目を覚ましていた。

鼻にはチューブ(流動食)右手は点滴、左手にはミトンのような平べったいグローブのような物を付け(チューブを引き抜いてしまうのを防ぐための物)
右目は焦点が合っていないものの、私の顔を見て何度も頷いてくれた。

主治医「指示は入るようになってますネ...」と。

私「もしかしたら、回復が早いのかも!!」

と期待しながら、色々聞かないといけない事があったので(暗証番号系の事)尋ねたら、マッキー答えようとはするけど、呂律が回らないので何を言っているかわからない。看護師さんが50音表を使って指差しで伝えるように促すも、マッキーが指す音をつなげても言葉にならない。

昨日先生からチラリと聞いて、朝までネットで調べまくった

「これが〝失語症〟なのか??」

片麻痺だけではなかった。。。
ショックと不安と焦りが湧き上がってきた。

本人はというと、何故伝わらないのか??と少し苛立っている様子。
幸い携帯のロックは何度か間違えながらも、外すことが出来た。

心配していた通り、仕事の確認メールが何通か来ていた。オットは慌て返信を打とうと左手で操作し始める。でも打てた言葉は

「ぬは」

仕事相手からはすぐ返信があった。

「ぬは??w」

オットはそこで気づいたようだ。平仮名が分からなくなっている事を。
自分では連絡が出来ないと判断したのか、呂律が回らない声で私に連絡する様に伝えてきた。必死に何人かの名前を言っている。聞き取れない。。
でも必死に言っている。何とか聞こえる音を繋いで私から知っている名前を言うと、

「そう!そう!」と激しく頷く。

病室は通話禁止なので、ロビーまで行ってメッセンジャー通話で相手に連絡。
ひと通り状況説明すると、驚きながらも「お大事に!」と言っていただいたが、麻痺のことは話せなかったので、「じゃ、次回またお願いしますー!」と。

次は無いかも、、、

マッキーはその後しばらく携帯電話を触りたがらなくなった。
持って帰ってくれと。

その後は私がオットの携帯を管理し、連絡が来たら対応するを繰り返した。最初の連絡と同じで、麻痺の事はどうしても言えなかった。
連絡相手はいつ頃戻れるのか尋ねてくる。仕事だから当たり前のことだ。大変な迷惑をかけている。申し訳ない。。。。でも言えなかった。

「長期の入院になりそうです」とだけしか伝えられなかった。

オットは自営業だ。
仕事を断ればそのお仕事は別の人がすることになる。それは当然の事。
でもその一つ一つの仕事はマッキーがコツコツ積み重ねて得てきたもの。
私は電話一本でそれを断ち切っている。
何年も年輪を重ね、沢山の枝を付け太くなっていったマッキーの樹を
私は斧を振り下ろし、バッサバッサと切っているのだ。

電話をするのが辛く、電話の後は泣かずにはいられなかった。


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