金色のコルダAS函館天音 支倉宇宙攻略感想

※個人の感想ですよ

ASラストは函館天音。
「トーノはラストにした方がいいですよ」とフォロワーさんに教えていただいたので、とりあえずソラから攻略する事に。
函館天音とは他のルートで何度も戦っているので「お噂はかねがね…」という感じだが、逆に言うと彼らについてお噂以上の事は一切知らない。
小日向が他校に転入した理由をざっくりまとめると、神南に転入したのは「ヴァイオリンのレベルアップのため」、至誠館に転入したのは「音楽を楽しむ気持ちを取り戻したかったから」、横浜天音に転入したのは「案内状が来たことに後押しされて自分を変えたいと思ったから」。三校とも主な目的は微妙に違うものの、小日向の「このままでは終われん!変わらなくては」という気持ちから物語がスタートする。
函館天音の場合はどうなんだろう?と思っていたら、なんの前触れもなくいきなりバスに揺られて現地に向かっていた。
行き先もわからず記憶を失い、持ち物はヴァイオリンだけ、隣には謎の美少女。
今にもタモリさんが語り手として登場しそうだ。
何でこんなところにいるのかわからんまま、というか何もかも忘れてしまった状態で函館天音の門をくぐる小日向。お前が真っ先に行くべき場所は学校ではなく警察だ!と思わなくもないが、自分がこの学校に向かっていたことには何か意味があるのだろうし、記憶を呼び戻す手がかりがあるのではないかという期待を胸に小日向は門をくぐる。
古城風の校舎には、長い階段や不思議なオブジェ、長テーブルが置かれた天井の高い食堂などがある。これから帽子を被って組分けするぞと言われても違和感がない。
そして転入早々、小日向は他の3人と共に御影さんに呼び出され「このままではブラボーポイント不足で留年する。学園側としてもそれは忍びないから救済措置をとる。手っ取り早くBPを稼ぐ手段としてコンクールがある。それに出て進級に必要なBPを集めて来なさい」と告げられる。
このセリフだけですでに頭の上を疑問符が百個くらい飛んでる状態なのだが、他に選択肢はない。「お、おう」と頷いた小日向と3人は内地に行ってコンクールに出ることになった。
AS函館天音はこのシリーズ中で(オクターヴは除くが)、いつもは自主的に行動する小日向が唯一、理不尽なものに巻き込まれる形でストーリーが展開する。

さて、他校ルートでは楽器を構えただけで聴衆に勝利を感じさせてしまうラスボス的存在が函館天音である。謎のベールに包まれ、冥加や天宮でさえ一目置いていた。
だから私は、函館天音に転入してコンクールに出るのなら、さぞかし厳しい学内選抜を勝ち残らなくてはならないのだろうと思っていた。しかしまさか、函館天音代表のアンサンブルが、留年の危機にある生徒だけを集めた逆選抜だったとは。
また他校ルートでは、函館天音の二人がやたらとBPを集めているのもミステリアスだった。だから私は、もしや彼らはBPがなければ生きていけない特殊な生き物なのでは?と思っていた。BPをキラキラした欠片にして瓶詰めしていたので、それを食べるのかな、ロマンティックだなあと思っていた。しかし実際の彼らはBP払いで魚肉ソーセージを買って食っていた。
事前のイメージとだいぶ違うし、ロマンティックでもなかった。

函館天音のアンサンブルメンバーは進級のため、あとは生活費と携帯電話の買い戻し費用に充てるBPのためにコンクールに参加する。
記憶がないなら交番に行けと何度思ったかわからないが、つまり函館天音は他校と違って、銀のトロフィーに対しての情熱を一切持たない。国内コンクールなど過程に過ぎないと言っている横浜天音の方が「勝利以外にない」と言っている時点で、まだ優勝に対する熱を感じる。
メンバー4人は横浜滞在中、天音学園の持ち家をシェアして暮らしているのだが、住居費はともかく食費や雑費は自腹(BP払い)である。4人はバイトしながら練習し、コンクールに出場する。
しかし、こんな状態でもあっさり勝ち上がっていくのだから、やはり函館天音は「別格」という気がするし、そこに属している小日向もまた他校にいた時より確実に技術が高い設定である。他校にいた時には必ず小日向を「地味子」呼ばわりしてきた東金でさえ「函館天音にしてはパッとしない女」くらいに表現を抑えていた。
小日向にどのあたりからの記憶がないのかはよくわからないのだが、函館天音の小日向は、長かったスランプそのものを忘れて、結果、幼い頃の才能をそのまま伸ばした小日向のような気さえする。音楽表現や能力の足りなさで悩む描写がほとんど無いからだ。

前置きが長くなったが、今回攻略したソラはニアの兄。ニアによく似た中性的で綺麗な顔をしている。幼い頃に両親が事故で亡くなったため、ニアは母方の伯父アレクセイの元へ、ソラは父方の伯父の元に引き取られて育った。
ソラは常につれない態度で、アンサンブルメンバーとも群れず親しまずなれ合わず。クールというよりやる気の無い猫みたいな男だが、音楽の才能はすごい。
こちらがグイグイ行っても嫌がられるが、かといって引き気味でいたらいつまで経っても仲良くなれない。
ソラは間違いなくAS攻略キャラの中で誰よりも仲良くなるのが難しいタイプであり、実際、話すたびに好感度が下がるので何が正解なのか全然わからない。それでも小日向は諦めずにソラと話すし、誘う。
これだけあからさまに邪険にされているのに、このメンタルの強さは一体なんなんだ。しかしこの強引さが後々活きてくる。
ここで私がこのゲームを「うまいな」と思うのは、シェアハウスをしているという設定だ。会話するのさえ億劫がるソラに、小日向がそれでもめげずに絡みに行くにはそれなりの理由が欲しいからだ。それが無いと、小日向は「邪魔に思われていることがわかっていない鈍感女」もしくは「しつこいだけの女」になってしまう。
しかし「シェアハウスのルール作りのため、ソラと話すことが必要」という理由があるため、粘り強くソラと会話しにいく小日向の行動に納得できるのだ。
しかし、それでもなかなか小日向とソラとの間には雪解けが訪れない。ソラからは、小日向に限らず他人とは必要以上に馴れ合いたくないという明確な拒絶を感じる。
もちろん攻略対象の中には、ソラ以外にもこちらに冷たかったり厳しかったりするキャラはいる。氷渡や冥加、長嶺がそうだし、ハルや火積も最初から優しいわけではない。だが、彼らの場合、どうして冷たいのか厳しいのか、理由が最初からこちらにもなんとなくわかるようになっている。だから「ま、そのうち靡くだろ」と余裕を持って眺めていられるのだ。
だが、ソラの場合は、どうしてこんなにこちらを拒むのかがわからない。何か理由があるのはわかるが、それが何かはっきりしないままストーリーが進む。もどかしいが、だからといってつまらんわけではない。ソラは初めて攻略対象になったキャラなので、彼からどういう反応が返ってくるのかわからない事自体を楽しめる(海に行くイベントでは大いに萌えた)。
そんな中、最初はつれないだけだったソラが段々と会話を嫌がらなくなってきて、昼食にも応じるようになる。そのあたりから過去のトラウマが見え隠れし始め、ソラが他人から距離を取りたがる理由が知らされる。一緒に暮らしてソラにフルートを教えてくれた大切な伯父の死という、かなり重い事情からソラは人と親しむのを恐れているのだ。
こんなに苦しいのならば、悲しいのならば愛などいらぬ!
そう叫んで悲しみのあまり暴君化したキャラが北斗の拳に出てきたが、ソラもサウザー様(各自ググろう)と同じ精神状態だったのだ。ソラは、大事な存在や居場所を失うことを恐れるあまり最初から誰とも親しまないようにしていたのである。
しかし、共に練習しシェアハウスで過ごすうちに、仲間とのやり取りに心地よさを感じ始めたソラは危険を感じる。仲良くなってからそれを失うのと、たいして仲良くないまま失うのとではダメージが違う事を知っているからだ。何かを得る前に失う前提で行動しているのは、ソラにトラウマがあるからだ。
小日向に惹かれていることを自覚してから、ソラはあからさまに距離を取り始める。しかし、その理由を知った小日向は拒絶されても拒絶されても諦めずに寄り添い続け、ソラはついに陥落する。
私が、「この小日向は他のルートに比べてやたらと押すタイプだな」と思ったのは前述の通りだ。だが、ソラみたいなタイプの男に対して遠慮していたら話が進まない。その点、多少強引なこの小日向ならソラを説得するのに最適という気がする。たとえ失われることがあるとしても一緒に過ごす時間には意味があると小日向はソラに強く思わせたのだ。
腹をくくって小日向への気持ちを受け入れたソラは、ソファに座った小日向にくっついてきたり、さらりと可愛い事を言ったりする。ソラはベタベタ甘々なことを照れずにやってくるタイプではないが、いつの間にか近くにいる。最初の無関心ぶりを思えば、警戒心の強い猫がようやく懐いてくれたような達成感があった。
また、最初ソラは聴衆を「BPをくれる人たち」くらいにしか思っていなかったようだが、次第にその気持ちが変化していくのも恋愛と関係なく面白かった。

このようにソラのルートは必要以上に楽しんだが、結局小日向がなぜ函館天音にやって来たのか、どうして記憶を失ったのか、これから小日向はどうなるのかなどはよくわからないままだった。
ファイナル後の選択肢によっては小日向が星奏、横浜天音、至誠館、神南に戻るエンディングになるが、その場合は函館天音にいた事自体が夢だったという流れになる。それなら問題ない。ゲーム内で起きた「どうして?」という疑問はすべて「夢だったのならまあいいか」と解決出来るからだ。
しかし、問題は小日向が函館天音メンバー(今回はソラ)と共にいる事を望んだ場合だ。
ゲーム内の疑問が全て未解決のまま残ってしまい、非常にモヤモヤする。そのモヤモヤが「夢かうつつかわからない函館天音の魅力」ならば、そこはもう少しファンタジーに徹して欲しかった。
例えば、小日向と祖父とのやり取りは無い方が良かったと思う。また、如月兄弟とのやり取りも「心配してたんだぞ!」ではなく「お前、函館行ったんだってな」くらいにして欲しい。小日向が覚えてないだけで、実は函館転入は周知だったという方がいい。それなら一ヶ月も放って置かれた理由になる。
しかし「一ヶ月も何してたんだ、心配していたんだぞ」と中途半端に現実的な事を言われると「じゃあ祖父は一ヶ月も孫が行方不明だったのに警察に行かなかったのか?」「長野から函館まで行ってんだぞ?」とさらなる疑問が浮かんで、せっかくのファンタジー性が失われてしまう。
ソラの攻略とは関係ないが、ゲーム全体としてそこが少し残念だった。
また、ソラルートだけでは、冥加や天宮が警戒する函館天音らしさや怖さがいまいち伝わってこなかったのだが、ニアとトーノを攻略したらわかるに違いないと今からワクワクしている。

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