ニル・アドミラリの天秤 鵜飼昌吾攻略感想

※個人の感想ですよ

ニルアド攻略3人目は鵜飼昌吾。
首相のご子息、セレブな美形メガネだ。
彼はフクロウの構成員ではないが、前回攻略した紫鶴と同じくヒロインと同じ場所に住んでいるので、そこでなんやかんやあって親しくなっていく。

ヒロインのツグミには、稀モノを見ただけで判別出来る特殊能力があるが、彼女がその能力に目覚めてフクロウに入ったきっかけは、弟ヒタキが稀モノのせいで自殺を図る所を見てしまったからだ。
そして、ヒタキが焼身自殺を図ったその日、偶然にもやはり稀モノに操られて自殺しようとした人がいた。それが鵜飼である。
首相の息子の自殺未遂は世間の注目を集め、「稀モノ」への恐怖心を一般人に植え付けるきっかけになってしまう。稀モノかどうかに関係なく本と見れば手当たり次第に焼くような過激派も現れ、世間はひどく混乱している。また鵜飼自身、稀モノへの恐怖が刷り込まれてしまい、普通の本にまで忌避感情を抱くようになっていた。
ということで、鵜飼は稀モノからは一番安全なフクロウの寮に住むことになる。避難でもあるが、世間からの隔離でもある。
使用人の雉子谷一人を伴って寮にやってきた鵜飼だが、他のメンバーと交流する意志はまるでない。
前述の通り、鵜飼は好んでここ(小綺麗ではあるが風呂トイレ食堂台所が共同のアパート)に住み始めたわけではない(実は自分で望んだ事でもあるという事実がわかるのはずっと後)。
根っからのお坊っちゃん育ちで、実際に雉子谷には「お坊っちゃま」と呼ばれている。乙女ゲームに金持ちキャラはつきものだが、ヒロインの前で「お坊っちゃま」という呼び方をされているキャラは初めて見た気がする。
とにかく鵜飼はお坊っちゃまなので、こんな所で暮らすのも嫌なら、庶民に交じるのも嫌、共同生活も嫌で、挨拶さえあからさまに無視を決め込む。
なんて感じの悪い野郎だ。
ただ、初対面でヒロインに冷たかったり偉そうだったりする攻略対象がいるのは、ニルアドに限ったことではない。アンジェリークなんてプレイ開始直後はほとんど全員がこちらに冷たい。だが、鵜飼に対するような腹立たしさは感じない。
では、なんで鵜飼に限ってこんなにムカつくのか。
それはおそらく鵜飼が、彼自身の才覚で得たわけではない家柄や身分や財力を盾にして、しかもこちらを見下すような言い方をするからだろう。さらに、掃除当番などの共同生活のルールは完全に無視。話しかければ小馬鹿にしてくる上、彼がこちらを見下す理由は「生まれ育ち」や「女であること」という、本人の努力でどうにもできない部分なのだ。例えば「僕に構うな!」という言い方でなく「お前らみたいな庶民が僕に構うな!」という言い方をしてしまうのが鵜飼なのである。
だが、私も乙女ゲーマーの端くれ。鵜飼のこの態度が精神的に傷ついているがゆえの八つ当たりだということくらいはわかるし、ここからこいつがヒロインにズブズブになる展開を想像してウォーミングアップを始めるのが鵜飼への正しい向き合い方だろう。

しかしこんな鵜飼とどうやって仲良くなればいいのか、この時点(共通ルート)では取っ掛かりすらないのだが、専用のルートに入ると「せっかく同じ所に住んでいるんだから仲良くしようぜ」とツグミ(と尾崎)が鵜飼に積極的に話しかける展開になる。
もちろん最初は邪険にされるし、翡翠や鴻上に至っては早々に鵜飼から距離をとっている。ルートに入ってからも、燕野の差し入れの煎餅を「庶民の食べ物」と馬鹿にするなど、鵜飼はここに馴染むことを全力で拒否しているように見える。
ただ、彼のセリフや表情から、キツい言葉を投げた後に「言い過ぎたかな…」と後悔したり、本当はちょっとずつ馴染もうと頑張っている様子が伝わるようになっている。
その後、寮の中や外出先で交流を深めるようなイベントが続き、鵜飼とツグミはお互いをちょっとずつ意識していく。
ツグミの弟も自分と同じく稀モノの被害者であると知ったあたりから、鵜飼は目に見えてツグミに惹かれていくのだが、可愛くドレスアップしたツグミに照れるあまり「全然似合ってない!」と言っちゃったり、ツグミが仕事で同僚と話しているのを見て不機嫌になったりする。
プレイヤーには彼からツグミへの好意はめちゃくちゃわかりやすいのだが、箱入りのツグミにそんな事はわからない。彼女の立場になってみれば、鵜飼は「何か知らねえけど、こっちが何を言っても何をやっても怒る人」だろう。
また、ツグミや他の攻略対象が全員仕事を持っているのに対して鵜飼は学生なので「自分だけまだ学生」というコンプレックスがある。
だから、大好きなツグミが自分を頼ってこなかったり他のメンバーに真っ先に困りごとを相談したりしたら、鵜飼は落ち込むし「そんなに僕は頼りにならないか!」と怒る。かといって「私が弱っているあなたを守りたい」という構い方をしてもやっぱり「そんなに僕は頼りにならないか!」と怒る。
つまり、構ったら構ったで「どうせ僕なんて頼りにならない」と拗ね、構わなくても拗ねるという状態だ。
めんどくせえな全く、どうしろっつーんだよ。
このように鵜飼は完全に遅れてきた反抗期だし、ツグミはツグミで口がそんなにうまくないので、ひとたびこじれるとなかなか修復できないのだ。
だだ、鵜飼がツグミに「好きだ!だから他に構うな、僕だけを頼ってほしい」と素直に言いさえすれば大体の揉め事が片付きそうではある。

ニルアドでは恋愛が進行しても、フクロウの仕事が置き去りにならずにストーリーに絡んでくるが、鵜飼ルートでは、稀モノを扱う闇オークション潰しが軸になっている。
セレブである鵜飼は、稀モノを扱う闇オークションの元締め四木沼(フクロウはなかなか尻尾をつかめず摘発できずにいる)にも顔がきき、館にもよく招かれている。ツグミは鵜飼のパートナーとして四木沼の館を訪れ、そこを探るという展開になる。
だが、鵜飼がフクロウの元にいる事を知った四木沼サイドは、その鵜飼を使ってフクロウのトップ朱鷺宮を殺害しようとする。鵜飼は、マッドサイエンティスト百舌山に薬を盛られ、朱鷺宮を殺害するように暗示をかけられ発砲する。
結局、鵜飼による朱鷺宮殺害は未遂に終わるが、加害者になってしまった鵜飼は、まんまと操られた自分を責める。精神的ショックによりベッドから出てこない鵜飼は見舞いに来たツグミに、自分の弱さをやコンプレックスを語り始める。
首相の息子だというプレッシャーや将来への不安、稀モノに操られた事を不甲斐なく思っている事、周りから好奇の目で見られることの苦痛など、プライドの高さから言えないでいたあれこれを、泣きながら一気に吐き出す鵜飼。
知人の目がないこのアパートでならようやく平穏に暮らせると思ったという鵜飼だが、いきなり「それなのにお前が悪い」とツグミを責めだす。
なんだと!?この後に及んで貴様という男は!やんのか、コラ!
と私が身を乗り出したその時、「お前が可愛いのが悪い」みたいな事を言い出す鵜飼。
なんと!これはどうやら鵜飼流の愛の告白である。スチルをよく見れば、手で覆った頬のあたりが赤い。
なるほど、わかった。
ならば、こちらも姿勢を正して話を聞かねばならん。何しろここはベッドの上だ。ここでおっぱじめる可能性は高い。
私がそう思った直後、「どうせ僕は死んだも同然だ。だからやりたいことをやる!!」と叫ぶ鵜飼。
こ、声がでけえ〜〜!
しかもそこからなんと、
「久世ツグミ!…鵜飼昌吾はお前のことが好きだ!」と、上杉達也は朝倉南を愛しています方式の告白。とはいえ、無人の河原で告白した上杉達也と違ってここはアパート。
壁が薄いんだから、もうちょっと静かにやろう。
と思ったところで、ツグミが鵜飼に「私も好き」と告白。これまでの行き違いについて話し、二人は改めてお互いの気持ちを確認する。
そこで「口づけしていいか?」とちゃんと確認を取るあたり、鵜飼はやっぱり育ちがいい感じがする。キスしてるうちに「くっ…!もう駄目だ…!」とか言いつつも「頼みがある(やらせてくれ)」と許可を取るのも鵜飼らしい。
まだ許可してないのにブラウスのボタンを外し始めやがったぞこいつ!とは思ったが、その後「男には男の事情というものがある」「頼む!(やらせてくれ)」とこちらを拝まんばかりの勢いで頼まれたので「お、おう」という気持ちにはなった。
多分ツグミもそう思ったのだろう。
わかった、やりましょう。ただし部屋を暗くしてその眼鏡は外したままでよろしく、と眼鏡キャラ殺しのリクエスト。だが、鵜飼はそれにもちゃんと従い「では続けようと思う」と律儀に宣言する。
ものっすごいハァハァしてるけど、触る側のお前がそんなに鼻息荒くしてどうするんだ。面白すぎるだろ。
私は普段あんまり声優さんの演技を聞かないでボタンを連打してしまうのだが、この鵜飼の演技は珍しくちゃんと聞いた。
まだ翡翠と紫鶴しか攻略していないが、鵜飼とのセックスは何というか一番普通だった。
貶していない、むしろ褒めている。
告白し合って、お互い拙いキスをしてるうちに「我慢できない」→「ちょっと待って」→「…嫌なのか?」→「カーテン閉めてほしい」→暗転
と、3次元の初体験でもありそうなシーンだ。
少なくとも男の長手袋で目隠しされてから事に及ぶよりはありえる展開だと思う。
事が済んだ後で、二人は枕を並べていわゆるピロートークをするのだが、そこを含めて素晴らしく普通だった(褒めてる)。
しかしピロートークの最中に、鵜飼が再び元気になってしまったらしい。「カーテンを閉めたらまだ夜だと思う」と言うツグミに、座布団一枚!と、そのまま2回戦が開始された所が前の二人と違う所だ。

ツグミに愛されているという事がはっきりわかったせいか、これまでの誤解や行き違いが解けたせいか、翌日から鵜飼は憑き物が落ちたように素直になる。
鵜飼はこれまで少しずつフクロウのメンバーとも馴染んできていたのだが、一緒に花火をやるまでに仲良くなっていようとは。
しかし、その後使用人の雉子谷が裏切り、鵜飼はツグミとともに誘拐されてしまう。
主犯は軍縮路線の首相を蹴落としたい軍部の尾鷲。鵜飼がツグミと無理心中したように見せかけるために誘拐したのだ。前回の自殺未遂に朱鷺宮の殺害未遂、さらに今回の「無理心中」と、度重なる息子の醜聞によって首相を辞任に追い込む計画である。
ただ、ツグミの機転と本物の首相からの電話、さらに鵜飼の乗った高級車の情報などからフクロウメンバーと警察が現場に急行。尾鷲と雉子谷は現行犯だし、それに協力した四木沼と笹乞もまた取り調べを受けるだろう。こうして、鵜飼が稀モノを手に取ったことから始まった首相絡みの一連の事件は解決をみたのだった。
ラストは温室のピンクのソファで膝枕をしてもらってご満悦の鵜飼が、ツグミにプロポーズしているシーンだ。
大学卒業後の進路を自分の意志で選んだ鵜飼の成長ぶりが伺える。

鵜飼のルートは稀モノの被害者からの視点であり、帝都の政治機能が稀モノによって崩壊するのを止めるという、ある意味ではニルアド全体のまとめみたいなストーリーだった。
翡翠や紫鶴ルートのように意外性のあるストーリーというわけではないのだが、恋愛部分を含めて全体的によくまとまったシナリオだったと思う。
特に、色っぽいシーンはそこに至るまでの会話といい、終わったあとの「身体は大丈夫か?」みたいなやりとりといい、慣れていない二人の初々しい感じが良かった。
シナリオはハラハラ急展開もいいが、セックスシーンまでハラハラしなくていい。「普通が一番」という結論に至ったのだが、なにしろまだ3人しか攻略していないので、これからものすごく意外性のあるエロシーンが見られるのかもしれない。
制限のかかっている尾崎には期待している。

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