ニル・アドミラリの天秤 鷺澤累攻略感想

※個人の感想ですよ

ニルアド、攻略5人目は鷺澤累。
物腰は柔らかく、言動は優しく、スイートなことも照れずにさらりと言ってくる。加えて、帝大の医学部という学歴の高さ。
鷺沢は汀のようにツグミをからかって遊ぶタイプではないし、鵜飼や鴻上のように会話に困るタイプでもない。聞き上手で話し上手、場の空気も読むし、ツグミの事もさらっと褒める。売りに出せるほど出来のいい万華鏡やブローチを手作りするという小ワザまで持っている。
このそつのなさ、全てが平均以上なのにクセのないイケメンぶり、そして出会ってすぐに笑顔で距離を詰めてくる感じ。
間違いない。
鷺沢、お前には裏の顔がある(そしてその予感は当たった)。

稀モノに操られて自殺未遂する者が続出している帝都では「本を持っていたらヤバい」と、手当たり次第に本を燃やす過激派が現れている。
そんな中、本が燃やされている現場に居合わせた鷺澤と、その騒ぎに駆けつけたツグミが知り合うという流れである。
鷺沢はかなり早い段階から好意を伝えてくるのだが、ツグミもそれに満更でもない様子(このヒロインは言い寄られると、すぐに相手を意識しだす)。
本を燃やしている連中は風体からしてどうやら学生、しかも組織だっていて「カグツチ」と名乗っていることがわかってくる。
他人が買った本を奪って、燃やして、抵抗したら殴って、警官に怪我をさせたのだ。捕まって当然の行いであり、いくら「稀モノは危険だから燃やすのは正義だ!」などと主張しても犯罪は犯罪である。むしろどうして今までフクロウと警察がこいつらを本気で捕まえようとしなかったのかわからない。この時点で、私のカグツチに対する好感度と共感度はゼロだ。
稀モノの出どころであるカラスと百舌山、とにかく本を燃やそうとするカグツチ、そして稀モノが世に出ないように回収しているフクロウ。帝都には稀モノを巡ってこの三つの勢力が成立している。

そういう状況下でツグミと鷺澤は親しくなっていくわけだが、ツグミがナハティガルに潜入捜査した事で事態が動く。
ナハティガルで違法薬物入りのジュースをうっかり口にしたツグミを介抱する過程で、鷺澤が「僕は実はカグツチのリーダーなんだ」とカミングアウトするのだ。それはまあいいのだが「もっと僕を知ってほしいと思っていた」みたいな流れで、薬で目眩を起こしてる女を押し倒すのはどうなんだ。
まだ鷺沢への気持ちが固まってないツグミは抵抗し、なんとか貞操は守られるのだが「僕じゃなかったら(途中で)止めてもらえなかったよ」という鷺澤の言い種!
じゃあ最初から襲いかかるなよ。
このルート(と鴻上ルート)をやってみて、私はどうやらこの「正体を明かすついでに襲いかかる」という展開がとにかく好きじゃないんだな、とわかった。カミングアウトとお楽しみは分けた方がいいと思うし、そういう流れで押し倒されるとどうしても「どさくさに紛れて」と思ってしまうんだと思う。
自分自身への新たな気付きである。

鷺沢は、ツグミとの出会いも単なる偶然ではなくフクロウの情報欲しさから近づこうとしたのだと打ち明ける。カグツチの構成員は稀モノによって死んだり傷つけられたりした者の友人や身内で、最終目標は稀モノを作ったり売ったりしているカラスを壊滅させること。
やはり鷺澤には裏があったか!と膝を叩いて喜んでいるのは私だけで、ツグミはショックを受ける。だが、鷺澤はツグミの純粋さや懸命さ、稀モノをなんとかしたいという強い気持ちなどに今は本気で惹かれているのだと話し、ツグミにフクロウをやめてカグツチに来ないかと引き抜き交渉をしてくる。
カグツチとフクロウ、どちらも稀モノをなんとかしたい気持ちは共通しており、カラスを敵視しているのも同じである。ツグミは引き抜きを断るのだが「フクロウとカグツチは手を組めるのでは」と考え始める。

しかしその矢先、カラスのカグツチへの攻撃が始まる。カラスにしてみればカグツチもフクロウも同じように邪魔なのだ。あっという間に鷺沢はリーダーだと特定され連れ去られることに。
やっぱりそうなった!!
学生で構成されているカグツチの基盤は弱すぎて、いくら志が高くてもカラスと戦うのは無理なのだ。
そこに居合わせたツグミも一緒に連れ去られて、鷺澤はこれまでのおイタ(カラスが作った稀モノを燃やすなど)のお仕置きとしてボコられることに。しかも鷺澤への見せしめ的な意味で、四木沼はみなさんの前でツグミをレイプしようとする。
こういう時、「ひどい!」と思う前に「こいつ、他人の前でよく自分のチ○コ出したりハァハァした顔を晒したりできるな…」などと余計なことを考えてはいけない。
まあなんとか無事に二人は解放されるのだが、鷺沢はそこで、自分が四木沼の妻薔子の実子だと知らされる。鷺澤は薔子が結婚前に密かに生んで手放した子どもで、父親は百舌山だったのだ。
も〜!情報量が多いよ!
鷺澤にとって百舌山は自分の両親(義理の)を死に追いやった男で、稀モノを作り出している元凶。
そんな男が父親だと知って自暴自棄気味になった鷺澤は「僕の仲間になってくれないなら君は要らない」とツグミを一旦はわざと冷たく突き放すのだが、「やっぱりだめー!僕は君を手放せない!」と瞬時に撤回してくる。
その間数十秒。
自暴自棄の冷たい言動から前言撤回までの早さたるや、である。
そこから鷺澤は、ツグミが好き好き大好きやりたくて仕方ない、みたいな事をもっとオブラートに包んだ言い方で迫り、ツグミもそれを受け入れる。
鷺澤は全てにおいてソツのないキャラなのだが、セックスも何というか普通だった。まあ、普通で悪いことは何もない。むしろ三次元ではその方がいいのだが、
「ブラウスのボタン外して、正常位」
という五七五ですべて説明できてしまう。
鵜飼のエロシーンも同じく普通だったのだが、彼の場合は童貞と処女らしいあれこれが微笑ましくてそれが充分に萌えに繋がっている。しかし、鷺澤には童貞くささがないため、鵜飼のようにはいかない。
あえて特色を挙げるなら、一回やったあとすぐさま第2ラウンドのゴングが鳴らされたことくらいだろうか。
おいおい、なんのための帝大医学部だよ、ここは「お医者さんごっこ」でキマりだろ?
と思わないでもない。
その後ちょっとそれらしい事はやっていたが、医学部を前面に押し出したプレイではなかった(勿体ない)。
いやね、何度も言いますけどセックスが普通なのは悪くないですよ?経験があるのも手際がいいのもスマートでいいと思います。
むしろ、自分がさっきまで身につけてた長手袋で目隠ししてことに及ぶよりは全然いいです。
ただ、私はニルアドエロシーンもこいつで5人目なので、ちょっと普通だなーって思っただけです(なぜか敬語に)。

一夜明けて二人はラブラブな雰囲気なのだが、ツグミは改めてカグツチへの誘いを断る。
前の感想にも書いたが、ツグミのいい所は、仕事に関する事では困ったら上司か仲間に相談するところだ。乙女ゲーヒロインとしては珍しく独断専行しないタイプで、今回もフクロウ本部に電話して上司に事のあらましを報告している。また、カグツチとは手を結べるのではないかとも話す。
そもそもカグツチが単独で行動しているのは、国家機関という縛りがあるフクロウと組めば自由に動けなくなるからだ。しかし、その自由は暴走を生み、カラスに追われる原因になった。カグツチなどといっても所詮は学生からなる組織なので、財閥のカラス、国家機関のフクロウに比べたら脆弱そのもの。
ということで、鷺澤以外のカグツチメンバーまでカラスに狙われ始める。
自分の仲間がカラスに痛めつけられたのを知った鷺澤は、ツグミに麻酔を打って自分を追いかけて来られないようにし、単身で四木沼の元(ナハティガル)に向かう。
無謀すぎる。
しかし根性を見せたツグミがふらつきながらも上司にそれを告げて(やはりちゃんと報告し応援を頼むツグミ)、フクロウたちもナハティガルへ。
ツグミたちが着いた頃、鷺澤は四木沼に怪我を負わせ、本命である百舌鳥山に対峙していた。
たった一人の学生に突破されるナハティガルの警備!
結局、ここで殺人者になったらだめだと説得された鷺澤は百舌山を殺すのではなく、捕らえた身柄を警察に任せることになり、一件落着となる。
カグツチは緩やかに消えていくことになり、ラストは公園でのんびりいちゃつく二人の図である。

人当たりの良い男が裏の顔を見せるというシナリオは悪くない。だが、この鷺澤は私としてはちょっと残念だ。残念というのは「惜しい」という意味に近い。
高学歴で成績トップというポジションのわりに、カグツチとしてはツメが甘すぎると思うのだ。1から組織を作る有能ぶりはわかるが、それならもっと早くリーダーとして組織の基盤の弱さに気づいて対策を打つべきだし、本を燃やすだけでなく人に怪我させるようになったのはやりすぎである。
カラスに対して無策のままだったこと、利害が一致するはずのフクロウと手を結ぼうと考えられなかった頑なさ、リーダーとして面が割れた後も他のメンバーにカラス対策をさせずにいたこと。どれを取ってもツメが甘い。ほんとにお前は首席なのかよ?と言いたくなり、せっかくの賢い設定が台無しになってしまう。
また彼の性格も、優しいのにやたらと冷めた部分があるという所に着地するはずが、ツグミを突き放してすぐに前言を翻したり、利用しようとして近づいたわりにすぐに本気で惹かれだしたりと、あまりにもチョロい。
君は冷めたキャラには向いてないんじゃないかな。
もうちょっと鷺澤の冷たさというか、復讐と組織のためなら何でも利用するぜという部分を見せてほしかった。
その方が、彼の本当の顔を知りながらも受け入れるツグミとの恋が引き立ったような気がする。
あと、正直言って、物語のメインであるカグツチの話やツグミとの恋よりも、薔子と百舌山(薔子の妊娠は百舌山のレイプによるもの)の過去、それから薔子と四木沼の関係性の方に興味が行ってしまう。
鷺澤の生い立ちは、メインストーリーを完全に食ってしまうほどの濃いエピソードなので、肝心のツグミとの恋愛がぼやけてしまったのが残念。
鷺澤のキャラ自体は面白いものなのに、濃すぎる生い立ちとカグツチという半端な組織を背負ったことで損をしてしまって勿体なかったという印象だ。

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