下天の華 夢灯り 森蘭丸攻略感想
※個人の感想ですよ~。
ゲーム前半の蘭丸は、前作よりずっとヒロインに冷たい。
ほたるの正体が忍びだとわかったため、信長の身辺警護を担当する蘭丸は彼女を警戒しているからだ。さらに、前作でほたるが明智の姫として入城していたことそのものを、ほたる(と光秀)に「謀られた」と思っているふしがある。
蘭丸が何よりも重きを置くのは常に信長で、その忠義心は彼の魅力の一部である。
蘭丸のように、ヒロイン以外に忠誠心を向けるキャラは意外と存在する。ネオロマなら遙2の頼忠、遙3の九郎、遙6のルード、コルダは学園物なので分かりづらいがおそらくハルもこの属性だ(律に対して)。
そしてそのようなキャラは大体、最初ヒロインに冷たい。だからこそ、段々仲良くなり、ついには彼らを恋につき落とすのが楽しいのだと思う。
つまり蘭丸が冒頭いくら冷たくても腐らず、それを「これから彼がより高く飛ぶための助走」と捉え、オラわくわくしてくるのが乙女ゲーマーの必須スキルといえるだろう。
さて、胡散臭いくのいちとは絶対に仲良くしたくない蘭丸だが、彼がめちゃくちゃ気に入っている若武者七介の正体はほたるである。
その彼がほたるの変化した姿だと知り、さらに変化には相当な努力が必要だと知り、ほたるの志が本物だと次第に認めていく蘭丸。二人は安土を守る同士として友人として親しくなっていくが、蘭丸は段々ほたるを女の子として意識し出す。
堅物でくそ真面目な性格体育会系の男が恋をして、あたふたしたり照れたりして「俺は何を考えているんだっ!」みたいなことを言い出すのは、王道だが確実に萌える。
それに蘭丸というキャラのいいところは、年下らしい可愛い言動をしているにもかかわらず、ビジュアルがショタ系美少年ではないことだと思う。蘭丸は美少年ではあるもののガタイがよく、女の子顔ではない。そこが「乙女ゲーの年下キャラがとにかく好き」という人々のみならず「ショタ系年下はちょっと苦手」という人々の心まで掴んだのではないだろうか。
ほたるを意識し出してからの蘭丸はとにかく可愛い。すぐに照れるし、無意識のスキンシップに対してはこちらの期待どおりのリアクションを見せてくれる。お香という名の媚薬を嗅がせたときも、ヒロインを意識する前と後であれだけ反応が違うのは蘭丸だけだし、リアクションの全てで「俺は!恋に落ちました!」(クソデカボイス)と表現してくる。
それに、蘭丸ルートはただ、恋に落ちた堅物の童貞を愛でて楽しむだけのシナリオではない。蘭丸の成長についてもきちんと描かれているところがとてもよい。
城持ち大名でありながら信長の小姓を務める蘭丸は、金山城に城代を置いて領国には帰っていない。名だけではなく実質的な城主になってはどうかと周りに勧められても、今の状態に充実を感じている蘭丸はいまいち乗り気になれない。そこにほたるが「蘭丸ならやれる!もっと上を目指そう!」と修造流の叱咤。
私はこのイベントのほたるは本当に勇気があると思った。ほたるは、城主になるという選択が蘭丸にとって気が進まないこと、だから下手に助言すると気まずくなることをわかっていて、あえて蘭丸の成長のために口を出したのだ。黙っていたら、ほたるだってそのまま蘭丸とともに楽しい安土の盾ライフをおくれるのに、蘭丸のために言いづらいことをしっかり伝えた。それがとても良かった。
その後、伊賀に謀反の濡れ衣がかけられて、伊賀を攻めるかどうかの評定が行われる。ここはどのルートでもそれぞれのキャラが、自分の好きな女の故郷を攻めさせまいと男を見せるシーンだ。
奇策を使った秀吉や光秀、無実である証拠や真犯人を示そうと乗り込んできた百地や信行。同盟破棄を盾に信長に伊賀攻め撤回を迫った家康。
そこで蘭丸はといえば、無策というか情熱というか、とにかくものすごく蘭丸らしいかばい方をする。
なにしろ、疑われている七介について熱く熱く語った後で、「証拠も何もないけど、犯人は七介じゃない!七介じゃないなら伊賀じゃない」の力わざ。しかも七介が犯人じゃないなら例の文は罠だ!と何が何だか知らないうちに真実にたどり着く蘭丸。
信長はこの蘭丸の意見を容れて伊賀攻めをストップ。
そ、そんなんで説得されていいのか!
と思わなくもないが、信長のことだから元々罠を疑っていて、軽々に伊賀攻めはしないつもりだったんだろう。だがそこでわざわざ「蘭丸がそこまで言うのだから」と付けるあたりがニクい。
これまで蘭丸の忠義ぶりを見守ってきただけに、信長からの言葉には「蘭丸~、よかったねえ!」という気持ちになった。
トンネルから出てきた半兵衛と野犬をほたると蘭丸で迎え撃つ展開は、さすがに武闘派の二人だけのことはあり、背中を預けられるというセリフは信頼の表れだ。
蘭丸には最初あからさまに信頼されていなかっただけに、ここに来ての背中合わせ共闘はかなり嬉しい(死人は出たけど)。
半兵衛の罪を軽減してほしいと談判するのは蘭丸ルートならではで、ここでも信長から蘭丸への信頼を感じて嬉しい。
ラストは城主になることを決意した蘭丸からほたるにプロポーズ。
おまけの後日談がその直後の顛末になる。
信長と光秀に祝言の許しを得たあと、安土の面々や城下の民にからかわれまくる二人が見られる。
蘭丸の盛大な照れや、「我慢できない」的なあれこれも盛り込まれていて期待通りのイベントだった。
後日談のさらに「数年後」がエンディングである。城主になった蘭丸のお披露目の日に、お揃いの着物を着ていちゃつく二人。
ただしこの蘭丸、色恋に関してかなりのレベルアップを果たしていることがわかる。照れとか恥ずかしさとか、そういうものが吹き飛んで「好きならやって当たり前」という自信に満ちている。どう考えても彼は、ほたる相手に色々経験を積んだのだ(オブラートに包んだ言い方)と思えた。
なんということでしょう。あの照れ屋の蘭丸がこんなことを言えるようになったなんて!
と、このままでは下天版蘭丸劇的ビフォーアフターが始まってしまうのでこれ以上は控えるが、とにかく目出度い(赤飯を炊こう)ラストだった。
蘭丸ルートの魅力は色々あるが、個人的には、色んな人にからかわれるシーンが多いのが好きだ。弟たちや信長はもちろん、同僚の小姓や通りすがりの武者、それから一般市民。家康や光秀たちはからかうわけではないが、それでも蘭丸をあたふたさせる。蘭丸ルートではそういう絡みがたくさん見られてとても楽しかった。