金色のコルダオクターヴプレイ記 榊ルート感想

七海や新と同じく、榊も外見と中身にギャップがあまりないタイプである。榊は呼吸するように女にスイートなことを言うが、軟派でチャラいのとは違うので「成績がいい」というのはギャップにならない。
イケメンで優しく賢く家は金持ち、普通科所属でもあのメンバーに交じれるほどヴィオラが上手い。
前世でどれだけ善行を積んだらそんな風になれるのか。
世話焼きだし、猫島では環境に順応する逞しささえ示した。フェスタメンバーにタメ語で接するのに抵抗感を示すあたり、育ちのよさを感じてかなり好感が持てる。
それに、あの甘さについ目が行きがちだが、榊はかなり老成したキャラである。
君、本当は28歳でしょ?
といつも思う。
榊は一言で言い表すなら「そつがない」。
しかしそれ故に、私は3でも4でも榊ルートは一番印象に残らなかった。良い意味でも悪い意味でも、特に変わったことが起きなかったからだ。それに、彼は最初から最後までどんな女にも甘く優しいので、一体いつヒロイン小日向に惚れたのかよくわからなかったのだ。まさか飼い犬に似ているから、というだけではないと思いたい。

オクターヴでも相変わらず榊節は全開であった。彼のすごいところは「君がそう言うなら◯◯しようかな」ではなく、「君みたいな可愛い子がそう言うなら◯◯しようかな」と、甘さにさらにひと手間をかける所だ。
ジェリービーンズが出てきたあたりから、ハルモニアでまたこいつはどんなに甘いことを…?と期待が高まったのだが、榊ルートのキーパーソンは完全に律である。
榊は、律の怪我が悪化して演奏者としての未来を失ったことを自分のせいだと気にしている。副部長として部の勝利を優先させたばかりに、律の将来を奪ってしまったと後悔しているのだ。
榊はそこで、魔法の島になら律の腕が良くなる何かがあるのではないかと思い、鐘楼にたどり着く。鐘を鳴らして願いを言えば、それが叶えられると聞いた榊は、自分の身体の自由を代償に律の腕を治して欲しいと願う。
…いい話ではないか。
しかし、皆さんお気づきのようにここまでの話、ヒロイン小日向がいなくても充分やっていける。
「俺はもう帰らせてもらう!」
そう言いながら小日向(私)は、車に乗り込んで走り去ってもいいくらいだ。
火原ルートでも思ったのだが、乙女ゲーの恋愛イベントにおいて、あまりに熱い友情を見せつけられるとヒロインの存在感が薄くなる。
ただ、ラストにジェリービーンズで小日向に告白させるあたりは、榊らしい甘さとちょっとした策士ぶりが伺えてよかったと思う。
ただ私の場合、榊が余裕たっぷりに接してくる時よりも、彼らしくなく苛立ったり嫉妬したりしたあと「我ながら大人げないなあ」みたいになった時の方が好感度が上がる。だから土岐と榊のからみはすごく好きだ。
そんな私なので榊ルートは律のことは置いといて(置いといて、のジェスチャー)、ジェリービーンズをもっと活用して欲しかったと思う。
「恋に素直になれるジェリービーンズ」もいいが、食べたら数時間だけ最初に見た人間を好きになるジェリービーンズ、もしくは逆に嫌いになるジェリービーンズを小日向が食べてしまって、榊が慌てたり嫉妬したりする、みたいな話が見たかった。
律のことは大事だが、あんまり律に焦点が当たりすぎると私は「大地先輩って、律が女だったら私(小日向)より律に惚れそうだな」とかうっかり思っちゃうのだ。
惚れるとまではいかなくても榊は多分一生、律の事を気にして生きていくし、何かある度に「そういえば律はね」と嬉しげに律の話をしそうだ。
その話を聞いている恋人が小日向以外の女だったら、その多くが「律って男と私、どっちが大事なの?」と詰め寄るだろう。
だが小日向は榊と同じように、律を気にかけている。小日向となら律の話をいくらでもできるだろう。
だからそういう意味でも、榊が小日向を選んだのは大正解な気がする。

余談だが、榊ルートをやる傍ら、私は響也、東金、七海を同時に攻略していた。これらのルートは、七海以外の全員が律の事を気にしているという、驚異の律出現率であった。
律は愛されてるなあと改めて思った。

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