金色のコルダAS全体感想

※個人の感想です

これは、コルダ3はやったもののそれ以来離れてしまい、ASを食わず嫌いしている人向けのASおすすめ文だ。
だから、ASの正史であるコルダ3について少しも触れないというわけにはいかない。
私はPS2版のコルダ3について不満を持っている部分があるので、1ミリでも否定されるのが嫌な方は退避するか自己責任で閲覧してください。

私はコルダ無印→コルダ2→アンコール→コルダ2ff→コルダ3(PS2)→コルダ4→オクターヴ→ASの順でプレイしている。
コルダ3を発売日に買ってプレイし、いつものようにクソ長い感想を全員分書いた。が、後に発売されたASに手は出さなかった。それどころか、もしツイッターを始めていなかったら4すらもやらず、今回プレイしたASをやることもなかったかもしれない。しかし今、ASをもっと早く、せめてVita移植のタイミングでやればよかったと後悔している。
もしかしたら、世の中には私と同じようにPS2版のコルダ3(色々補完されたフルボイス版の方ではない)に不満を持ち、一旦コルダから離れてしまった人が意外といるのではないかと思ったのだ。
私の他にいないのならそれでいい。だが、もしいるとしたら、あまりにも勿体無い。
ASはシナリオにもボリュームにもすごく満足できるゲームだったからだ。だから、AS食わず嫌いだった私のような人にこそぜひ勧めたいと思う。

コルダ3は無印と同様に音楽をテーマにしながらも、前作とは違うものを作りたいという気概を感じるゲームだ。ヒロインはヴァイオリン未経験者ではなく技術力のある経験者に変わり、他校生徒を攻略対象にして学内ではなく全国のステージが舞台になった。
マエストロフィールドが登場し、演奏中にリズムゲームが加わった。攻略対象は増え、プレゼントシステムに手作り品が加わった。
発売当初、前作に拘るあまりその変化を悪く言うレビューをよく見かけたが、私は「違うコルダが見られる!」とワクワクした勢である。実際、コルダ3はキャラも良かったし新しいシステムも楽しめた。新ヒロイン小日向にも満足であった。料理が得意という設定もいい。
マエストロフィールドについては、もともと妖精がいるような世界観なので、それを叩いていたレビューのような悪感情は抱かなかったし、リズムゲームが入ったことについても難易度設定ができるので「新しい」と思っただけだ。そのあたりは個人の好みの問題であり、ゲームの問題ではない。前作と違って部活動として戦っているのだから、リズムゲームで高得点を出した奴が勝つというのは作品に合っている。
だったら何が不満だったのかという話だが、私の場合不満は2つある。
一つは女の子キャラが減ったことだ。
星奏、そして直接戦った他校アンサンブルメンバーの中に女性演奏家が小日向ただ一人というのは、いくらこれが乙女ゲームだと言っても不自然だ。女子キャラを減らすなら、せめてニアをアンサンブルに加入出来るようにするか、当初サブキャラだった芹沢を女性にすれば良かったのにと思った。
だがその事以上にものすごく残念だったのは、キャラによってあまりにもイベントやスチルに差があったことだ。特に至誠館の女たちは、これやってよくブチ切れ無かったなとしか言いようがない。せめてスチル数は平等にして欲しかったし、ルートが1つだけのキャラと2つあるキャラがいるのも解せなかった。主人公のいる星奏メンバーにだけ2ルートあるならまだわかるが、他校で2ルート有るやつと無いやつがいる。攻略人数が多すぎたせいなのかは知らないが、せっかくのキャラが全然活かせていない薄いシナリオも見られた。丁寧に作られたシナリオと薄いシナリオの差が激しい印象だった。
だから「とにかく勿体ない」というのが、私のコルダ3の感想である。

ASはコルダ3や4とシステム的には同じだが、攻略キャラを3よりもずっと深く掘り下げたシナリオになっている。やはり、ヒロインと攻略キャラが他校同士のままでは深いシナリオを作るのは難しかったのかもしれない。
ASは、ヒロインが「もし攻略キャラと同じ学校に転入していたら」「もし星奏メンバーと他校生徒として出会っていたら」というifのストーリーになっている。
深く考えなくていい。
実際は星奏生徒の小日向だが、違う学校に行く未来だってあったかもしれないと思ってプレイすればいい。
ASシリーズのシナリオは、3で物足りなかった部分を、ルートの流れはそのままに丁寧に補完してある。
例えば、律。コルダ3のシナリオでもASのシナリオでも律が怪我をしてヴァイオリンを諦める流れは同じだ。だが、3では律の苦しみとか悲しみがほとんど伝わってこなかった。それは同じ学校にいる小日向には大会中に吐き出せなかったからでは?という好意的な解釈もあるだろうが、それなら優勝した後のエンディングなり告白なりで吐き出せばいいだけの話だ。
そう思っている私なので、律の悲しみが伝わってこないコルダ3律ルートはただただ「もったいない」「薄い」と感じた。しかしASではその「物足りない」部分が全部補完されている。
また、コルダ3ではとにかく励まし疲れた響也ルートや七海ルートも、ASではその関係からの脱却が丁寧に描かれている。土岐や東金についても、その病弱や金持ちぶりが本人の悩みとともにずっと深く掘り下げられていた。
コルダ3では他校のゴタゴタでしかなかった至誠館の事件も、当事者として概要を詳しく知ることができ、危機を共に乗り越えた熱い内容になっている。
新攻略キャラたちのルートも面白かったし、全部のルートが函館天音に集約していき、夢なのか平行世界への迷い込みなのか判然としないまま終えられるのも余韻があっていい。
また、コルダ3の時点ですでに作り込まれていたと私が感じた天宮や冥加、ハルあたりは、コルダ3のイメージを壊さず、更にパワーアップして帰ってきました!という感じがした。
個別の感想は別に全員分長々書いたので省くが、私はASの全部のルートを楽しんでプレイした。

コルダ3以降、コルダシリーズから諸事情あって離れてしまった、食わず嫌いの皆様。
ASもまたスチルやシナリオに差があるんじゃないの?と不安だろうし、つい斜に構えてしまいがちだろう。
わかる。私も同じだった。
無理にやる必要はない。
でもやって損はない。
きっと3で出会ったキャラをもっと好きになるはずだ。

追記。
これはおすすめ文とは関係ないが、最後に、私が唯一ASについて「勿体ないな」と思った点を述べたい。勿体ないというか、これはゲームの構造上どうにもらならいというか、仕方がないことなのだが。
ASのシナリオが素晴らしかった事は再三述べた。
しかし残念なことに、この素晴らしいストーリーは全て仮定の世界の話である。
どんなに良くても、これらが全てif設定である以上、正史に戻ったときに、全て「小日向が経験していないこと」になってしまうのだ。星奏の小日向は他校の事情を「何も知らない」ということになっているからだ。
函館天音ルートはその救済措置の一種だろうとは思う(夢だけど夢じゃなかった的な)。
だが、寂しい。全く無かったことになるのが寂しい。
この寂しさを消すための方法は、正史の世界にASでの出来事を丸ごと持ってくるしかないのだ。
星奏で小日向が全国優勝を目指している頃、神南や至誠館や天音でもこのようなドラマがあったのだと、ASでのあれこれは星奏で起きたドラマと並行して起きていた出来事なのだということにしなくてはならない。
しかしそのためには、神南にも至誠館にも天音にも小日向が同時に必要になってしまう。小日向が分裂するしかなくなるのだ。
では、どうすればいいのか。
以下は私の妄想なので、読んでから怒るくらいなら読み飛ばしてほしい。怒られる自信がある。

小日向は同時に存在できない。
だったら、ASでは小日向じゃない別のヒロインを作ればよかったのではないか。
星奏所属のヒロインが小日向なら、神南には日向(仮)、至誠館には中日向(仮)、天音には大日向(仮)みたいに各高校にビジュアルも性格も違う別ヒロインを配置するのだ。もちろん彼女たちで他校生徒も攻略できる。
私はヒロインが何人いても構わない、むしろ各校に一人、別ヒロインがいてもいいと思っているのでこのような発想になる。シナリオもアンジェリークの「内気」「強気」「元気」みたいにヒロインの性格によって少しずつ変える。
『星奏に小日向が転入してきたその頃、神南には小日向のライバルになる日向が、至誠館には中日向が、天音には大日向が転入してきた。ASのヒロインたちの前には正史ヒロイン小日向がライバルとして立ちはだかるのであった…』というような展開だ。
それならASで起きたことは正史の裏で起きていたこととして消えることがない。冥加と響也を小日向以外のヒロインが落とすのはかなり難易度が高そうだが、どういうシナリオになるのか面白そうではないか。
しかし、そうなったら新ヒロインたちとそのカップリングはおそらく叩かれるだろう。「〇〇くん(キャラ名)は小日向しか好きになりません!このカプありえない!」と。
攻略対象をそのままにしてヒロインだけ新しくすると、ファンの間でいらぬ争いが起きるのだ。
争いを生まないためにも、正史に戻った小日向が他校事情を知らなくても仕方ないということにするしかない。
ifのままは寂しい。
しかしだからこそ、ASと正史の仲立ちをするような位置に函館天音を置いたのだろう。境目をぼやけさせるために。
函館天音は正史とASの繋ぎの役目、ゲートなのだと私は思っている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?