下天の華 夢灯り 羽柴秀吉攻略感想
※個人の感想ですよ~、個人の~。
半兵衛、家康、光秀ときて、次は秀吉。
前作では真っ先に「桔梗姫」の正体を見破り、百地を除けばただ一人ほたるの素の表情を引き出してくれた秀吉だ。
今回はそのアドバンテージが無くなってしまったわけだが、ほたると秀吉の会話は相変わらず楽しい。
秀吉ルートでは、明智軍と羽柴軍の対立を和らげるために、「桔梗姫」と秀吉が恋仲の振りをする事になる。そうして接触を持つうちにほたるは、軽いだけではない秀吉の内面を知っていくという流れである。
秀ほたの醍醐味である秀吉の軽口にほたるの塩つっこみ。風呂、膝枕、添い寝などいずれのイベントも期待を裏切らない。秀吉の明るいスケベぶりと、しかしそれ以上は決して先に進まない引き際が相変わらず絶妙。
中でも、夜にお香を焚くイベント。どう考えても媚薬効果のある例の香にほたる自身がひっかかってしまった時、秀吉は自分にとって有利な展開にもかかわらず、香を消してしまうのだ。
秀吉のそういうところがとてもいい。
そんなこんなで、前作以上に軽妙なやりとりを含むイベントが続く。そこに小姓の佐吉や両兵衛が絡んで、羽柴オールスターズの楽しさまで味わえるのだ。
特に、書類を水に落とした佐吉をほたるが庇うイベント。こういう時に、秀吉のような女好きキャラから発せられる「いい女だ」は価千金である。
こと2次元においては、他の女を知らない男に言われるより、色んな女を見てきた男に言われた方が萌えるセリフというのが確かに存在する。
光秀、家康の時にも思ったが、秀吉ルートでも夢灯りは、前作よりもう一歩踏み込んだ展開になっている。
前作からこれまで、ほたるは一貫して秀吉に「本当のあんたは?」「本当のあんたを見せてくれ」と請われる立場だった。しかし、物語終盤にそれが逆転するのだ。
悩みを抱えているらしい秀吉の内面を知りたいという気持ちがほたるに芽生えるが、例の軽口でいつも優しく誤魔化されてしまう。
私はこの、追う追われるの立場が逆転する話が大好物なので、この展開には大層萌えた。
どうやっても彼の抱えたものを教えてもらえないまま、ほたるは例の罠にかかり、織田家臣からは伊賀を攻めよという声が上がる。
これまでに攻略した光秀も家康も「伊賀を攻めるべきではない」と言い、光秀は罠を張り、家康は同盟破棄をちらつかせて信長に迫った。
しかし、秀吉は「伊賀を攻めよう」と声をあげる。自分が成り上がるために無実の伊賀を攻めるという秀吉の態度に苦悩するほたる。出世欲が秀吉の本心ではないということだけはわかるけど、どうしてそんなことをしようとするのかは分からない、そんなもどかしい気持ちで一杯になる。
私はすでに半兵衛が陰謀の黒幕だと知ってしまっていたが、それが分からない状態なら「秀吉が伊賀攻めと言い出したのには、どんな裏があるんだろう」と、このルートにもっとワクワクできたと思う。
出来るなら記憶を消して、秀吉を最初に攻略して半兵衛ルートを最後にやりたかった。
ほたるは、これまでの会話や秀吉の母から預かったリストから、命を懸けて秀吉を信じる覚悟を決める。
結果として半兵衛が自首し、このルートで安土は全くの無事。秀吉は見事に内々で謀反の種を摘んだわけだ。
ラストは信長の大岡裁きがあって、ほたるは羽柴軍の四国攻めに同行したいと申し出る。粋なことに光秀がほたるを「解雇」してくれ、官兵衛にも祝われて一件落着である。
エンディングでは仲良く足湯に浸かり、後日談では二人でほたるの里に詫びと挨拶でスジを通しに行く。
意外にも、乙女ゲームにいそうであんまりいないのが「ヒロインの家族に会う男」である。その上「ヒロインの親に結婚の挨拶をしに行く男」となるとかなりレアだ。
しかし秀吉はそれをこなしている。ほたるの両親は他界しているので正確には「親がわり」になるが、それでも結婚前に挨拶に来たのは確かだ。ほたるも秀吉の母に挨拶済みなので、このルートは圧倒的に「家族含めた皆に祝福されてる感」が味わえる。
多分、今後秀吉は機会をとらえて百地にも挨拶に行くだろう。「なんで俺にも?」と師匠は思うだろうが、ほたると秀吉が帰った後には片頬にひっそりと笑みを浮かべているかもしれない。それが出来るのが秀吉だろうと思う。
そういうケジメをきちっとした後で宿に泊まる流れになるため、私は長老の顔で「わかった、やっていい」と思ったし、むしろここで事に及ばないのは不自然だろとすら思った。
ほたるの夢に、両親と、泣いている幼い秀吉とやっぱり泣いている幼いほたるが出てくるのも良かった。両親に促されて秀吉の名前を呼ぶところは、父とバージンロードを歩いて新郎の所に行く花嫁のようだと思ったし、泣いていた二人が新しく家族になるのかと思うと感慨深い。
しかしそれにしても、これほど「夕べはお楽しみでしたね」というスチルはネオロマでは初めて見た気がする。風呂でも崩れなかった秀吉の髪に乱れが見られるのが生々しいが、だからといっていやらしいわけではない。
実は乙女ゲーマーの中にはヒロインにいちいちエロい言動で迫る女好きキャラを苦手とする人が結構いる。だが、秀吉というキャラはその匙加減がちょうどいいといつも思う。エロいというより「少年誌に出てくる憎めないスケベ」という感じで、夜這いだの布団だのとかなりあからさまな事を言っているにも関わらず、好感度が落ちない。
彼ならシティハンターポジションにいける。そして、その際ほたるには100トンハンマーを持たせよう。