金色のコルダオクターヴプレイ記 東金ルート感想

東金は常に自信たっぷりで、それに見合うだけの容姿と実力があり、おまけに金持ち。
コルダ3発売当時、彼の相方たる土岐とライバル律のキャラも相まって「東金=跡部様?」と一部のユーザーがざわついたことを私は今でも覚えている。
それについてお互いのクラスタがどう思っているのかはわからない。しかし、星奏と神南のステージ対決で、会場を埋め尽くした神南生徒が「神南!神南!神南!」と叫びながら床を踏み鳴らした上、土岐の「勝つんは?」という問いかけに「俺だ!」と指バチコーン!で東金が登場しても違和感がないのは確かである。
テニプリを知らないコルダーの方々は「東金以外にもそういうキャラがいる」とだけ思って欲しい。

そして、この東金のようなタイプが、何かのきっかけで目立たない女の子に惹かれるという少女漫画や少女小説は昔から山ほどある。どうして山ほどあるのかと言えば、太古よりそういうカップリングが支持されているからに決まっている。
しかもそういう話は、最初男の方が女の子を見くびっていたり、馬鹿にしていたりすることが多い。それが最後には立場が逆転して、高慢傲慢な野郎がヒロインに膝を屈する。
これにはその男キャラが好きな人はもちろん、そいつを特別好きじゃなくてもスカッとする。世代をこえて支持されるのも納得のストーリーなのだ。
要するに東金と小日向のカップリングはまさにその典型であり、ラストに近づくにつれて小日向に落ちていく東金にニヤついてしまう。
オクターヴの東金ルートは、そういう典型的な東かな鉄板ストーリーに加えて、東金のライバル律を絡めた展開だった。

自信家でぶれることなく、後悔などしたことのなさそうな東金の心に唯一引っ掛かっているのが律である。
正解に言えば律本人というより、怪我をする前の律の演奏だ。東金はその演奏に敗れ「次こそは!」と思っていた矢先に律が怪我をして、以前の演奏が望めなくなる。律に堂々と挑んで勝つことが東金の目標だったはずだが、それはもう永遠に叶わない。
榊といい東金といい律への思い入れは半端なく、もし律が女だったら小日向のヒロインの座がかなり危ぶまれた気さえする。しかし、それだけ律の演奏は凄かったということなのだろう。
何とかして東金を律の演奏と競わせてあげたい一心で、小日向は頑張る。どんな演奏でも完コピ出来る替わりに、弾き手にヤバいことが起きる「再現ヴァイオリン(呪いのヴァイオリン)」を使用するのだ。怪我する前の律の演奏を再現するために。
そんな危ないものを弾きたいと言った小日向をリリはほとんど止めず、「こいつの所業はいつも鬼」と思わないでもなかったが、世界の王崎が止めてくれたお陰で小日向は事なきを得る。
さらに、悪気のない王崎によって「君が好きだから小日向さんはあのヴァイオリンを弾いたんだね」みたいなことを東金本人にばらされたが、そのひと押しのお陰で東金は小日向を意識するのだ。
自分のために危険なヴァイオリンを弾いた小日向のひた向きな気持ちが可愛いらしいと気づく。
そこから、ハルモニアの試練に対して東金は「律の演奏に拘らずに前に進む」と結論を出し、小日向自身の演奏が好きだ、お前はそのままでいいと話すという流れだった。
ラストからエンディングにかけてがとにかくスイートなのは、東金ルートの定番と言える。名前呼びに、手繋ぎデートに、「好きだ」「愛してる」と畳み掛けてくる。
それはいい。
何度も言うが、私は東金のようなキャラがヒロインに膝を屈する展開が好きだからだ。
ただ、このルートにはひとつ不満がある。
オクターヴは3の直後、つまり星奏の全国優勝直後なのだから、再会後の東金に「地味子」呼ばわりされる事に納得いかないのだ。
あれから数ヶ月経った後ならともかく、時間軸ならつい最近手にいれたはずの小日向の「花」が幻と言われてしまうのは少しおかしい気がした。
つい最近、君らと冥王倒して優勝したじゃないか。
どうしてもそう思ってしまう。
東金は試練の場で「小日向の演奏が好きだ」と言っていたから、彼女の演奏が夏大会を経て変わったのは確かだろう。東金が好きになったのは変わった後の演奏だ。
だったら、最初から地味だとか手にした花が幻だったとか言わずに「あの時自分で手にいれた花に自信を持て」みたいな流れが良かった。花がない展開じゃなく、手にいれた花に自信がないんじゃないのか?みたいな展開が良かった。
ちょっとの違いかもしれないが、自分だけの花、つまり人を惹き付ける個性を小日向が既に手にしているかいないかは、このルートでは結構重要なのではないだろうか。
なぜなら、東金は4でも「花がない」という切り口から恋愛ルートに入っている。ASはやってないからわからないが、もしそっちでも、ただの地味子→花を手にいれる→東金がその魅力に気付くという流れだったらどうしよう(さすがにそんなことはないと思うが)。
マンネリが悪いことではないのは、月森のヴァイオリンロマンスが証明してくれているが、それでも東金ルートはもうそろそろ「演奏に花がない」の流れを卒業して欲しかった。
4の茶室イベントのように、東金に小日向の魅力を意識させるイベントは花云々や律の演奏以外にもっと色々あるだろう。
欲を言えば、東金が小日向にしてやられた!みたいなイベントがオクターヴではもうちょっと見たかったなあと思う。
東金と小日向の組み合わせにはそれだけのポテンシャルがある。それは古今の少女漫画が証明してくれているのだから、次は「花」じゃないストーリーを期待したい。
ルビパは、俺様系男子といえばの、道明寺×つくしとか、メンフィス×キャロルとかその辺を参考にして欲しい。
小日向に東金を後ろから飛び蹴りしろとか、無人島で泥水から綺麗な飲み水を作れとは言わないが、東金が小日向に狼狽えるような展開がもっと見たかった。
そもそもこの例えの意味がわからねえという方は、とりあえず「花より男子」「王家の紋章」を読んで欲しい。
ただし、当然ながらコルダとは何の関係もない。

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