下天の華 罪の華 百地攻略感想

※個人の感想ですよ~。しかも妄想含んでますよ~。

罪の華をプレイするにあたって、私が事前に「あんまりキツくなさそうだな」と判断したルートが三つある。それが百地、信行、信長だ。
どうしてこの三人なのかといえば、ゲームのポイントが「信長暗殺」だからだ。一口に暗殺と言っても、暗殺を防ぐ側と暗殺を仕掛ける側が存在する。
ほたるが暗殺を実行する側である限り、同じ側に立つキャラよりも暗殺を防ぐ側(敵対する側)とのエンディングの方がキツいに決まっている。暗殺対象の信長は、彼自身が処分を下す側なので「信長様ならなんとかしてくれるかも」と攻略前からすでに甘ったれた事を考えているこの私だ。
そして百地と信行は暗殺をする側、ほたるの放火を咎める側ではない。

要するに、私は百地ルート攻略を相当舐めてかかったのである。
分岐前の通常ルートでは、ほたるがひたすら師匠の百地を慕っている様子がわかる。最初からほたるにこれだけ求められている男は百地だけだ。それだけほたるから百地への信頼はあついのだろう。
それを「やれやれだぜ」といなしながら、自分にとっても彼女との日々が大事だったのだと気づく百地。
そのあたりで、罪の華ルートの使者ゲジメの登場である。
ほたるがゲジメの幻術にかかって安土に火をかける流れは共通だが、百地ルートでほたるはこの事を百地に相談しようとする。しかし、すれ違ってしまい彼とは会えない。
もしここで百地に会えていたら、きっと運命は変わっただろう。しかし、会えなかったどころか、百地に会いに行ったばかりに、ほたるは家康に姿を見られてしまう。
頼むからこんな夜にまで薬草を摘むな。
家康の機転で城の火災は最低限で防がれるが、そのどさくさで信長が重傷を負う。
当たり前だが、ご家中の皆さんは大激怒。
蘭丸ルートの感想でも触れたが、信長に重傷を負わせたという時点で、普通ならほたるの死刑は確定である。王将を獲られかけた上、下手人に温情をかけ、ましてや逃がしたとなったら織田家の面子は丸潰れになるからだ。蘭丸ルートでブッスリやられたのはそのせいだし、逆に他のルートでほたるが生きているのは信長が無傷だったからだと思う。
そして他のルートと大きく違う点は、今回に限ってゲジメの一派が全て死ぬか逃げるかしていて、安土方に捕まらなかったことだ。
そうなると、安土方の誰にも「実はほたるが幻術で操られていた」という事実が伝わらない。
つまり、城への放火もそれに乗じた信長暗殺も、伊賀とは別の勢力が黒幕だと証明するものが何もない状態だ。
光秀など、他ルートの「自分の配下の忍びが操られて放火」というだけでもかなりの責任問題だが、それが「自分の配下の忍びが放火」になったのだから黒幕扱いされてもおかしくない。彼がむちゃくちゃ怒ってるのもわかる(事前に策を話してくれればこんなことには…とはやっぱり思うけど)。
プレイヤーとしても、これまでは「ほたるちゃんは操られてたんだから仕方ないじゃん!」と思い、それに応えるように攻略キャラも「操られてたのはわかってる」という前提があった。放火は操られていたせいで、わざとじゃないことは周りにちゃんと解ってもらえていたのだ。安土の皆さんだけでなく、伊賀の皆さんにも。
放火の罪は罪として、ほたるもある意味被害者なのだと周りがわかってくれていた。それはかなりの救いだったんだなということが、このルートをやるとよくわかる。
しかし百地ルートでは、ほたると百地以外の人間は全て、幻術に操られた云々を知らないままだ。だから、やらかしたのはほたると伊賀ということになってしまっているし、それを訂正する手段がない。
牢に入れられて責められるほたるは、このままだと拷問のつらさに負けて、伊賀が黒幕ですと自白をしてしまうかもしれない…というところで、百地に助け出され真相を知る。
信長を傷つけられた安土勢、ほたるを差し出して潔白を示したい伊賀、ほたるの身柄を手土産に織田に取り入りたい各地の勢力。ほたると、その逃亡を助けた百地はあらゆる勢力から狙われる生活を送ることになる。

このルートは敵の上忍ゲジメのひとり勝ちではなかろうか。狙い通りにほたるを操り、混乱に乗じて信長に重傷をおわせる。さらに、安土を囲んでいた配下の忍びたちが全員自害なり逃亡するなりして、ゲジメのいた勢力について口を割る者がいなくなる。証拠を消したことで、罪は全てほたると伊賀に被せられた。自分も討たれてはいるが、捕まって責められるよりは死ぬ方を選んだといっていい。
ゲジメファン必修のルートである。
さらに、信長重傷により信行が憑き物でも落ちたように穏やかになっていた。このルートでは、ある意味一番ラッキーな男だ。棚ぼたで謀反人になるのを免れた感じの信行だが、だからといって百地クラスタが彼を逆恨みしたくなるようなシナリオではなかった。
信行は本当に百地が好きだなぁ。よーしよしよし、撫でてやろう。
という風に、何故か信行の株が上がる仕様である。

そしてラスト。
数年後、いまだに逃亡し続けている百地とほたる。
二人は満足に食事する間もない。しかしこの包囲網を抜けられたら、二人で新天地を目指そうぜというような終わり方だった。

希望を残した優しいエンディングとみせかけて、実はそうでもない。
確かに百地ルートでは刺されて死ぬわけではないし、一服盛られたり道具にされたりするわけではない。
だが、これまでの中で物質的に一番つらいのは百地ルートだと私は思う。少なくとも他のルートでは衣食住には困らなかったからだ(蘭丸ルートなど、困る隙すら無かった)。ところが、こちらは衣食住全てに事欠き、睡眠も思うようにとれない。
スチルの二人はいかにもついさっきシャワーを浴びて着替えたかのようにこざっぱりしているが、実際は目茶苦茶に痩せているだろう。百地の白髪は倍増しているかもしれないし、二人ともいつから着替えてないのかわからないくらい薄汚れているだろう。しかも、その生活が数年ずーっと続いているのだ。
その状態で「海を越える」というのがどれだけ現実味のない夢なのか、二人ともわかっているはずだ。
希望があると思わせつつ、実は限界が近いのではないか、そう思ってしまう終わり方だった。
その上、百地はほたるに「愛してる」とかそんな感じのことは一切伝えていない。ほたるも同じだ。プレイヤーにはわかるようになっているが、ゲーム内でお互いの気持ちをちゃんと確認しあったようには見えない。むしろ、百地は殊更「師匠と弟子」を強調している。
これだけ一緒にいるのに、二人はお互いの気持ちを伝え合う状況になく、逃避行が続く限り、これからも師匠と弟子でいるしかないんだろう。それが切ない。

ただ、切なくはあるものの、百地ルートは他のルートに比べると少々パンチが弱い気がした(なみいる他ルートのキツいエンディングを見慣れたせいかもしれないけど)。
「師匠ルートはこれ以上キツくなくていい」
そう思う方もいらっしゃるだろう。だが私は、折角ならもっと分かりやすくキツくても良かったような気がしている。
例えば、逃亡生活に疲れて精神が疲弊したほたるが、師匠が共に追われている事にいたたまれなくなって百地の目の前で自害するとか。
このままの生活が続くよりはと、百地を刺した後で自分も死ぬとか(各自で例のBGMを流してくれ)。
……なんだか自分には慈悲の心がないのではないか、てめえの血は何色なんだと思えてきたので、この辺で黙ろう。
二人が新天地で穏やかに暮らせるように祈らずにはいられない百地ルートであった。

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