下天の華 罪の華 明智光秀攻略感想

※個人の感想ですよ~。個人の~。

フォロワーさんたちに光秀ルートの感想を尋ねたら「えげつない」「えぐい」との複数回答があった。端的かつ的確な表現といえる。

幻覚にかかったほたるが「里からの命令」だと思って陰謀に加担する流れは、すでにクリアした蘭丸、家康ルートと同じだ。
蘭丸ルートでは城の一部が炎上した上に信長が重傷、家康ルートでも城が一部燃えており、いずれもほたるは周りのモブたちの前で現行犯逮捕されている。
だが、光秀ルートではそうならない。鳳凰像を設置する前に光秀はほたるを確保しているので、ほたるがしようとした事に周りは誰も気づいていないのだ(モブたちがざわつく様子も光秀が人を呼ぶ描写もなかった)。
つまりこのルートでは陰謀が未遂に終わるので、ほたるは公的には罪らしい罪を犯していないことになる。城は燃えず信長も無事、安土を囲んでいた他里の忍びたちは遁走し、表向き安土は平穏なのだ。
蘭丸、家康ルートでは、操られていたにせよほたるが火をつけたことも、それに乗じた形で信長が危険な目に遭わされたのも事実だ。だから、それをしたほたるは公的に処断されるために牢に入れられている。
しかし光秀ルートは違う。公然と彼女を弾劾し罰を与えるなら、取り押さえたその場で人を呼ぶべきなのに、光秀はそうしなかった。
どこだか知らないが、全く牢役人の気配がしない場所にほたるをぶちこんでいる。グラフィックは同じだが、ここは前のルートに出てきた牢屋とは違う場所なのかもしれない。安土の警護全般を担ってきた光秀が、表には出せないくせ者を密かに処分するための秘密の空間という気がした。
捕らえた後も、光秀はほたるの裏切りを誰にも話さずにいた。このことからも、彼は公然とほたるを罰したいのではなく私刑にかけたいのだとわかる。
その牢の中で、光秀はほたるに事の顛末を話す。
このルートのほたるは、忍びとして非常にストイックであり、職業意識が高い。他里の忍びに操られたあげく架空の任務を請け、それに失敗。里を危険にさらし、さらに本来の雇用主を裏切るという大失態にけじめをつけるべく、舌を噛み切ろうとする。
しかしここで光秀は自害を許さない。唇から血を流したスチルからいって、ほたるに口付けして自殺を止めたらしい。口付けでどうやって止めるのかは知らないが、とにかく止める。
「ほたるに生きていて欲しいから」などというスイートな理由ではなく、「楽にさせてやらない」という理由からである。自害を封じ、「元々信じていなかったから、君に裏切られてもいない」とほたるを精神的に追い詰める光秀。
だが、最初に光秀は「私を裏切った」とほたるに告げているので、裏切られていないと言ったのも、信じていなかったと言ったのも嘘だろうと思う。光秀はほたるに裏切られたと強く思っているし、そうである以上彼女の事を信じてもいたのだろう。

光秀は真意を隠したまま、ほたるに信長暗殺を命じている。ほたるの性格では暗殺を躊躇うだろう事もわかっている。だが、光秀の策(共犯を装って信行を引きずり出す)は、ほたるが光秀という雇用主を信頼し判断を彼に委ねて、クナイを信長に投げられるのかどうかにかかっていた。
ほたるを信用して任せた光秀は、自分の事も信じてほしかったのではないかと思う。
しかし「私を信じて投げろーーー!!」という光秀からのパス(命令)をほたるは受け止めなかった、というかスルーしてしまったのだ。たとえそのパスがフォワード泣かせのキラーパスであったとしても、光秀はほたるに自分を信じてパスに追い付きシュートを打って欲しかったのだと思う(私は何の話をしてるんだ)。
しかし結果はご覧の通りで、光秀にしてみればほたるが「無理。どうしてあんなパス(命令)を寄越すの?」とごねたあげく、敵チームに移籍したように見えたのだと思う。しかもこの光秀という司令塔は、滅多に他人に素顔を見せず信頼もしない。それが少しずつ心を開き、「こんなことさせるの君が初めて」というところまで来ての、ほたるの他チーム移籍だったのだ。
自分が生まれて初めて信頼し、あまつさえ恋心を抱きつつあった人間に信じてもらえず裏切られたと知った時、光秀はそれを許せなかったんじゃないかと思う。彼からは裏切られた悲しみではなく、暗く執拗な怒りのようなものを感じる。
ただ、私としては「兄様が最初から信長暗殺の裏事情を話しといてくれればこんなことにはならなかったのに…!」と愚痴のひとつも言いたくなるし、何も説明してくれなかったくせに突然「おこなんだから!わかってよね!」と彼氏の前でむくれるJK彼女みたいな態度で牢屋に来られても困ると思った。
蘭丸や家康の時は火つけで現行犯逮捕された身だから、毒だか薬だかを盛られようがグッサリ刺されようが「彼にこんなことさせて申し訳ない」という気持ちになった。しかし、光秀の場合は「お前も事前にそれ言っとけよー!言っといてくれたら幻術にかからずクナイだって投げたよー!」という気持ちがどうしても湧く。

しかしほたるは(私と違って)真面目だ。敵の術にはまり、自分の里を危険にさらし、心を寄せていた安土を害そうとして失敗、さらに雇用主からは「元々信頼してない」と言われたほたるの忍びとしてのプライドはボロボロになったのだろう。自害することさえも責められ止められたほたるは、心を殺し光秀の言うままに働くことになる。

そしてラスト、ここで光秀がほたるをとことんまで利用している状況が明らかになる。ほたるは政略結婚の道具としてどこかに嫁がされ、そこで調略活動をやらされているのだ。
炎上した城から「夫」だった男性を置いて、小鳥になって脱出し、光秀の元に帰ってくるほたる。しかもこれは二度目の結婚らしい。
本能寺の変が起こらなかったif世界で、そこまでして調略しなきゃいけない敵対勢力がまだ存在するのも驚きだが、とにかく光秀がほたるの身を道具として利用していることは確実である(「次は」西方か北方と言ってたから、今回は関東あたりだったのだろうか)。そこにはほたるを駒として動かすことに一切の躊躇いも葛藤も見えない。
プレイヤーとして私が引っ掛かるのはそこだ。例えば蘭丸や家康はほたるに対して「それでも好きだった」みたいなことを言ってくれるので、あの行為の底には愛があることがはっきりわかる。だから「好きな女を苦しませるくらいならいっそ…」とか「他の奴の手にかかるくらいならいっそ…」とか、とにかくそういう葛藤が見えるのだ。
しかし、光秀ルートには「好きだった」「惹かれていた」というようなほたるへの好意を表すセリフが出てこない。
そこに来て、あのエンディング。「外に聞こえても泣き声だと思われる」という言葉と、光秀が帯締めを解こうとしていることから、彼はほたるを性的にも道具として扱っていることがわかる。
もし、ここで「…君のことが…好きだったこともあったかな…」と虚ろな目をした光秀のスチル、もしくは「可愛さ余って憎さ百倍」みたいなセリフの一つでもあればまだいい。良くはないがまだいい。この行為が歪んだ愛の果てに起きたことだと納得できるからだ。しかし、そういう描写はなく、光秀のエンディングには手心というものが一切無い。
政略結婚でスパイとして駒になるのは、ある意味忍びとしての本領が発揮出来る場だから、ほたるにとっても名誉挽回の機会と言えなくもない。しかしエンディングのあれがあることで、ほたるを公的に利用した後で、さらに私的にも利用しているように見えていただけない。光秀が自分の欲望をひたすら満たしているように見えてしまう。
駒にするなら抱くのはやめとけよと思うし、身体の方で束縛したいならずっと監禁して性奴隷にするエンドでいいじゃないか(いや、良くはないけど)と思う。
ほたるを道具にするにしても、駒かエロかどっちかにしとこうな(光秀の肩を叩きながら)。

蘭丸ルートでも家康ルートでも、目の光を失うのはヒロインではなく男の方だ。しかし光秀ルートのほたるは完全に人形的な虚ろになっている。エンディングのあれこれより、その事が私としては悲しかったのである。やはり乙女ゲーのヒロインたるもの、無意識無自覚で男を振り回し、本人も知らないうちに世界の一つ二つを救うくらいがいい。

織田による体制が安定して政略結婚の必要がなくなったとしても、ほたるが幸せになることをこのルートの光秀は絶対に許さないだろうと思った。何らかの形で彼女を縛り続けると想像できる。その、幸せになんかさせてあげないという執拗な執着心は、もしかしたら彼なりの愛なのかもしれないが、その愛を光秀は自分で認めることはないだろう。
だが、忍法帳を取り上げないままほたるを他所にやるということは、ほたるがその気になればいつでも光秀から逃げられるという事だ。
それなのにほたるは逃げずに光秀の元に戻ってくる。その度に、彼はほの暗く喜ぶのではないかと想像したら、やはり光秀はほたるを信じていたいのかなあと思った。
かえすがえすも光秀ルートは、光秀による愛を示すセリフ(「好きだったのに」みたいなやつ)が全く無かったことが残念だ。
だが、それが無いからこそのバッドエンドらしいバッドエンドなのかもしれない。

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