金色のコルダオクターヴプレイ記 火積ルート感想

火積ルートからは「音楽は楽しい!自分の気持ちは素直に伝えよう!前に進もう!」という一つの大きな流れを感じた。ちなみにこのセリフは火積ではなく火原の声色で読んで欲しい。
火積は、ぶっきらぼうで照れ屋な性格と家庭環境、また、例の「俺みてえなやつが音楽なんて(以下略)」というやたらと低い自己評価のせいで、音楽が好きだと素直に言えないでいたらしい。
ただ、そんな火積もこのハルモニアでは、わりと伸び伸び音楽に接しているように見える。初対面のフェスタメンバーが彼を怖がる描写も無く、火積の寮生活はなかなか快適のようだ。
ただし、冬海だけは「キャンプメンバーはみんないい人ばかりだった。外見で判断したらいけないと思った」みたいな事を言っているので、恐らく最初は火積(もしくは冥加)を怖いと思ったが、何らかのきっかけで「いい人」と認識を改めたのだ。火積なら、冬海の手が届かない位置の調味料をとってやったり、固いジャムの瓶を開けてやるくらいのことは余裕でしそうだ。
火積は「俺みてえなのが(以下略)」と言いつつも、困っている人を見過ごせないからだ。あの外見にこの性格が加わることで火積は、乙女ゲーで最も大事(当社比)だと言われるギャップを手にしている。
さらに今回は、可愛いファータのストラップを小日向とお揃いで楽器ケースにつけるイベントが起きる。しかしストラップには魔法がかかっていて、小日向と火積のファータがキスしてしまい、火積は大いに照れる。
とりあえず、ここで「いいね!」100回押したい。
強面のスカーフェイスが赤面して照れるイベントは、鉄板とはいえやっぱり尊いのだ。
寮生活の中で、火積がいいヤツだということは、他人とあまり触れあわない月森にさえ伝わっている。しかし、ここでその月森がいきなり火積の地雷を踏む。
至誠館にブラバン部と吹奏楽部があるのは音楽性の違いのせいか?と。
分裂の原因=音楽性の違い。
さすがは月森。浮き世のゴタゴタなど想像外らしい。
火積は二年生達の前で分裂のいきさつを話すのだが、ここでの加地がやたらと格好いい。私が3をプレイした当時に感じたモヤモヤ(伊織も火積も、もうちょい生徒たちに真相を伝えるのを頑張っても良かったんじゃないか、とか)をきっちり指摘してくれたからだ。
あの事件は、事情はともかく部外者から見たら中身は確かに「暴力沙汰」である。
しかも至誠館は地方の名門だ。
都会住みには分かりづらいと思うが、地方の伝統校というのはその地域の人々にとにかく注目されているものなのだ。教育委員会始め役所のトップ、もっというなら市会議員にも至誠館OBはたくさんいるだろう。
こういう学校は、偉い人にとってだけじゃなく一般の人々にとっても、マジで「地域の誇り」なのだ。
そんな、おらが街の名門が不祥事を起こしたとなったら、とにかく学校も生徒も反省の姿勢を見せないと地域の皆様に示しがつかないのである。「至誠館の看板に泥を塗って!」とモブたちが騒ぐのも故のないことではない。至誠館が建っているのは、そういう地域なのである。同じ東北の、似たような伝統校出身の私にはその空気が何となくわかる。だから私は、至誠館の大会出場停止処分は妥当だと思っている。その処分は「学校が学校外に示したケジメ」だと思うからだ。
加地はその処分自体についても不満がありそうな気配だったが、覆すのは難しかっただろう。それは確かに火積が言うように「その場にいないとわからないこと」だ。
だだ、一方で加地が「伝える努力をしなくちゃ」と言ったのは正しいと思うのだ。
外部に示した処分はともかく、内部で起きた(地域の皆様とは関係ない)分裂騒動、火積の退部処分、それに伴う部の孤立は、火積(と伊織)が生徒に向けて発信することで緩和された可能性があるからだ。
火積は加地からの指摘後「もし、あの時に自分が、音楽を好きだと他の部員に伝えていたら」と胸のうちを話してくれる。
きっと火積は、事件以来何百回も繰り返して考えてきたんだろうと思う。
当時は気恥ずかしかったり、素直になれなかったりして言えなかった「音楽が大好きだ。やらせて欲しい」という気持ちを、火積は今ならちゃんと言えるだろう。
火積ルートでは、音楽への愛情や事件の際の自分の非をきちんと認め、その上で前に踏み出そうとする火積の意気を感じた。

そして恋愛イベントでは、これまでで初めて、ストラップという形あるものがハルモニアの外に持ち出される。
最初に私がいいね!を100回ほど押したイベントで手にいれたファータストラップだ。それについての二人の記憶は失われているが、品物そのものは残った。
ハルモニアから持ち帰った2つのストラップが揃う時は、火積と小日向が会う時だ。ストラップは楽器ケースについているので、二人が会うときはお互いの楽器を持っているということになる。つまり火積は小日向と一緒に、これからも彼の大好きな音楽を続けていくのだろうと思えるエンディングだった。
さすがは火積。これからの遠距離恋愛に何の不安も感じないラストだ。

それはそうと、響也ルートで響也が手にした魔法グッズ「過去に遡れる時計」を手に入れたのが火積じゃなくて本当に良かった。
そんなものを手にしたら、またしても彼は死ぬほど悩むだろうから、ストラップで済んだのは幸いである。
ハルモニアにも温情というものはあるんだなと思った。

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