金色のコルダAS横浜天音 如月響也攻略感想

※個人の感想です

AS横浜天音攻略ラストは響也。
響也について、または響也と小日向の関係について最初から最後まで良いことしか耳に入れたくない方は自己責任で退避なり閲覧なりして下さいね。重ねて言いますが個人の感想ですよ。

響也は休日の度にフットサルに興じてそうな外見のわりにかなりのゲーマー。しかしゲームだけを友としているわけではなく、スポーツも楽しむ普通の今どき男子という感じ。コルダ界屈指の、いやコルダ界一のツッコミスキルを持つ(次点が土浦あたり)。
そして、音に色がついて見える「共感覚」という美味しい設定を持ちながら、相変わらず公式にほとんど活かしてもらっていない(何とかしてあげて)。
響也は律とともにヒロイン小日向の幼馴染だが、幼児期ならともかく就学年齢に達してからの一学年差は大きい。だから同学年幼馴染の響也は律よりずっと小日向に近い存在だといえる。

AS横浜天音は、小日向と響也2人に対して天音から案内状が届いたことから物語がスタートする。
小日向と如月兄弟は幼い頃からヴァイオリンを習っていて三人三様に才能があるが、この中で一番向上心があった、というかヴァイオリンに一途にのめり込んだのが律である。律は中学卒業とともに横浜に移住するが、小日向と響也にはそこまでの思い切りがなく地元に残る。
両親が不在がちで律が家を出たら一人きりになってしまう響也は、そのせいもあってか律を素直に応援できなかったようだ。兄に失敗してほしくないと心配する気持ちもあったに違いないが、まず一番先に、律が自分たちを置いていったという怒りが見て取れる。
律が家を出る際の反応、また小日向が「自分は天音に行って変わりたい」という意思を見せた時の反応を見る限り、響也というキャラは現状を変えることに臆病なタイプだ。急激な変化を望まない。良く言えば慎重で現実的、悪く言えばぬるま湯から出たくないタイプである。
また響也の場合、自分が変わりたくないだけならともかく、親しい人間が自分を置いて変わってしまうこと、自分のいるコミュニティから出ていってしまう事も好まない。これはもしかしたら律が家を出た時のショックを引きずっているのかもしれないが、とにかく響也は、困難な道に親しい人があえて進もうとする時「やめとけよ」と引き止めるストッパーである。
まあ、人間はみんながみんな「大丈夫!お前なら絶対できる!ファイト、ファイト!」と背中を押してくれる松岡修造氏みたいなタイプではない。響也は真っ当なことを言っているし、彼のような人間は必要である。しかし、私が響也にモヤモヤした物を感じるのは「チャレンジしてもどうせろくな事にならないんじゃないか」「やったら失敗するかもしれない」といちいちマイナス面を出してきては、人のやる気に水をぶっかける所である。響也は心配の仕方がネガティブで、気持ちよく応援してくれないのだ。
失敗を恐れるが、かといって自分だけ取り残されるのも好まない響也は「嫌々ながらつきあってやってる」というスタンスを崩さずに小日向についてくる。天音に転入したのも小日向のじいちゃんに頼まれたからだと言っているが、もし頼まれていなくても「あいつは危なっかしいからな、やれやれだぜ」という顔をしてついてくるだろう。響也にとって「変化」は億劫だが、とり残される事はそれよりもっと嫌なんだと思う。
小日向との関係にしても、冒頭、私にはこの二人が「特別大事な幼馴染同士」などではなく「危なっかしい共依存」にしか見えなかった。小日向は響也を頼り、響也は小日向が変化するのを無意識に引き止める。
ボロクソに書いた気がするが(本当にな)、要するに響也は普通の人間なのだ。ネオロマ全シリーズを見ても、響也ほど人間くさい普通の性格をしたキャラはそうそういない。やるべき事をわかっていながらつい面倒くさがったり、前に進むことを恐れたり、親しい人間の飛躍にモヤモヤしたりと、響也は普通の人間が共感できる感情を沢山持ったキャラだと思う。
響也ルートは毎回、彼が大きく成長し、成長した後でもやっぱり小日向が特別だと再認識する物語になっている。
冒頭に「こいつら大丈夫かな…」という要素があるからこそ試練を乗り越えた後には、響也と小日向はやっぱり特別な関係だ、何があってもこの二人は大丈夫だ!と思えるのだ。

さて、天音に転入を決めた二人だが、そこで案の定響也は苦労する。小日向のように「変わりたい。ヴァイオリンが上手くなりたい」という確固たる決意無く、保護者のようにくっついてきただけなのだから当たり前だ。
小日向がつらい時に庇ってくれるのも響也なら、小日向が高みを目指すとき「やめとけって。傷つくかもしれないぜ」と枷になるのもまた響也である。この関係は良くない。なぜならお互いが足を引っ張り合い、同じ速度でしか前に進めないからだ。しかし、当の小日向もまた響也を頼り依存している以上、二人を引き離すのは難しい。外から誰かが諭しても反発されるだけだ。
そこで登場するのがアレクセイである。
響也はアレクセイにマエストロフィールドの種、つまり才能を発揮させるのに必要なもの(自信とか)を強制的に枯らされてしまう。小日向と響也が共依存に陥っていて、二人一緒のままでは大事な才能がどちらも伸びずに枯れると踏んだアレクセイは、早めに「間引き」したのである。アレクセイは小日向を天音に残し、響也を切り捨てることを決める。
いつもながらアレクセイは音楽を良くする事と素晴らしい才能を開花させる事しか考えてないので、二人の気持ちとか追い出される響也の気持ちなどは意識の外なのだ。響也は彼を悪魔といっていたが、アレクセイは不要と見れば容赦なく切り捨てるまさに園丁である。響也が気の毒だと思う気持ちはあるものの、二人の成長のため、私はこの二人を引き離したのは正解だったと思う。
しかし引き離す役目を他の攻略キャラにやらせたら、至誠館の事件みたいに「誰が悪いのか論争」になる。みんな自分の推しを悪者にはしたくないのだ。
しかし、やったのがアレクセイならみんなで「アレクセイひどい!響也かわいそう!」と心置きなく唱和できるというものだ(アレクセイ推しの方には申し訳無い)。

響也は天音から律のいる星奏に転入し、そこでオケ部に入る。さらっと書いたが、天音を追い出された上に散々反発してきた兄貴の学校、しかも兄が部長をやっているオケ部に入るのだ。自分が庇ってやらねばと思っていた幼馴染は天音に残り、室内楽部で飛躍している。小日向の祖父に頼まれて移住までした響也の気持ちたるや、である。
死ぬほど屈辱的だと思うし、私が響也なら正気ではいられない。しかも、星奏オケ部とて名門。響也のまわりに上手いやつはゴロゴロいるのである。
星奏に少しずつ馴染んできたとはいえ、響也は次第にスランプに陥る。「どうせこれ以上は無理だ」「傷つく前にやめとこうぜ」という響也の悪い部分が顔を出すが、いつも自分をたしなめたり、一緒に怒ったりしてくれた小日向はもう隣にいない。
響也は自分の弱さと向き合うことになるが、今回はたった一人で向き合い、乗り越えたのがすごく良かった。3では小日向と響也が同じ学校だったため、悩む響也を小日向が直で慰めに慰め立ち直らせた感じが強かった。私は、小日向だって転入したばかりで同じ立場なのになんでこいつを慰め続けなきゃならんのだ、と思ってしまい、3では響也への萌えは一切なかった。
だがASではそのストレスが無い。他校ゆえ、悩む響也を小日向が視界に入れて慰めるシーンが少ない。「どうせ無理」モードに入った響也は自分で立ち直り、小日向の演奏を聴いて奮起するのだ。
苦しくても諦めずに高みを目指す小日向を見て、「やめとこうぜ」となるのではなく「俺もやってやる!」と共に登ろうとする響也。ここから、律が信じ続けた響也の才能が開花する。
これは響也が冒頭の共依存から見事に脱却した瞬間だと思う。
セミファイナルで殻を破った響也は短期間でぐんぐん伸びる。響也自身もヴァイオリンを弾くのが楽しそうである。ファイナルでは冥加に認められ、アレクセイには「天音から手放したのは惜しかった」と言わせた。途中のイベントで「響也、こいつはほんとに…」と苦虫をかみ潰していた私だが、これには心底嬉しく目頭が熱くなった。プレイヤーなのに、もはや小日向というより律の心境である。
伸びゆく響也を見て小日向が焦るのも良かった。セミファイナル前、小日向の成長に響也が焦るイベントと対になっているからだ。
焦って、響也が遠くに行ってしまうような気がして寂しくなる小日向に響也は「先に行くから追いついてこい」と言うのだ。これは、殻を破る前の響也からは絶対に出てこないセリフである。以前の響也なら「お前が来るまで待ってる」と言うだろう。だがもう響也は小日向を待たない、だが追いつくと信じて先に進む、そう言えるようになったのだ。
響也、偉いぞ!お前なら出来ると信じていた!(律の顔で)
成長した響也と同じく成長した小日向の関係が、ヤバい共依存からプラスに転じたのがこのイベントだけですごく良くわかる。

お互いに離れてみてやっぱり特別な存在だと気づいた2人なのだが、私はエンディングの告白よりむしろそこに至るまでの2人の様子がリアルな幼馴染という感じがして好きだ。
例えば、雨に濡れた小日向は響也のシャツどころかズボンまで借りるが、借りた小日向も貸した響也も「これは普通のこと」みたいな顔だ。これが他のキャラとのイベントであれば、シャツから彼の香りが…とか彼女が帰ったあとに残り香が…とかいうセリフが出てくるだろう。しかし、響也と小日向にそれは一切無い。
彼のシャツって大きいんだな、というセリフは彼シャツイベントの定番だが、響也と小日向の場合は「響也、大きくなったんだな」となる。
響也の部屋に行くのもそこでの居眠りも二人には「まあ普通」であり、互いの部屋に行くくらいでは緊張などしない。日野が部屋に来た際の、コルダ大学生編火原先輩の様子とぜひとも比較してほしい。
つまり響也と小日向にとって、こういうのはほぼ日常であり「ときめくほどのことか?」なのである。
リアルだ。
このように、付き合う前から10年以上連れ添った夫婦のような姿こそ、ずっと同じ学校に通った親しい同学年の幼馴染というものである。
逆に言うとそんな相手をどうやってときめかせるのかという話だ。幼馴染ゆえの安心感と、異性同士のときめきを両立させなくてはいけないのだが、ここでも他校同士になってそばから離れたという設定が活きてくる(ありがとう、アレクセイ!)。
離れてみて気づいた、という流れは同じ学校にいる正史では使えなかったからだ。これは恋だったのかと離れて初めて小日向は思ったんだろうし、離れたことで響也も「このままじゃいかん」と気持ちを伝える決意したんだろうなと納得できた。
観覧車でのイベントで、響也はエンディングを迎える前にキス(頬か口かは定かでないが)をかましてくる。ネオロマ男子で、キスしてから告白する奴はあまり見かけない。
これを他のキャラにやられたら「うちの小日向に何を!まだエンディング前ザマスよ!」とPTAの顔になるところだが、響也の場合、小日向はそれくらいしないと恋愛対象として意識してくれない。このイベントは、それを響也がちゃんと理解して行動しているところがいいのだ。
響也ルートは他のキャラでは代替できないイベント、新鮮な小日向のリアクションが目白押しである。響也に限らず、兄妹みたいに育った幼馴染が恋愛相手に昇格するというシナリオは、説得力をもたせるのが本当に難しいと思う。3ではそれがいまいちだったのだが、AS(と4)は幼馴染ゆえの安心感や、相手を異性として意識した時の焦りや、距離が近すぎるために起きるもどかしさのような物がちゃんと伝わってくる。
何より響也の成長が眩しい。
そして、このルートは響也の才能に対する律の信頼と、弟のために冥加に宣戦布告しにいく律の兄貴ぶりに胸アツになる。
響也はもう少し律を大事にしたほうがいい。
しかし、もし響也の律への対応が不満な律の女たちがいたら、オクターヴ響也ルートをやってみよう。ちゃんと兄弟愛が伝わってくる。

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