下天の華 織田信長攻略感想
※個人の感想です
通常ルートは信長でラスト。
つまりこのような長い感想を私は7人分も書いてるわけだが、私の場合、家につくまでが遠足だ、のノリで「感想書くまでがゲームだ」。要するに趣味だ。
下天プレイ前、フォロワーさんに「(ルート制限という意味じゃなく)おすすめ攻略順はありますか?」と尋ねたところ、皆様口を揃えて「強制ってわけじゃないけど、信長様はやっぱりラストがいいと思う」と返答された。
ならば、と彼をラストに残したわけだが、それが私にとっては大正解であった。ほたるの変化にしても「最終形態」「南天を守りし聖獣朱雀よ」という気がするし、そもそも攻略対象の中で信長だけが暗殺される側の人間であり、燃える本能寺の主役なのだ。これでつまらんシナリオなわけがない。
しかもコーエーさんといえば歴史物。どのゲームの信長ももれなく素敵だ。
破天荒、かぶき者、先進的で新し物好き、尊大だが豪放磊落、それから、いきなり何を言い出すか、何に対して怒りだすのかわからない底の知れない恐ろしさ。
下天の信長はそういった一般的信長イメージの、特に魅力的な部分をスポイトで吸い上げて作り上げられた「最強の乙女ゲー仕様信長」という感じがした。
なにしろこの信長、ゲーム起動1分ですでにかっこいいのだ。
信長はごく大雑把に分類すればいわゆる俺様系である。私は元々俺様系特有の、ヒロインに対して偉そうな所が鼻につく場合があるのだが、この信長についてはそういう腹立たしさが全くなかった。
偉そうっていうか、実際偉いしな。
そう思ったからだ。
異世界物、歴史模倣物における俺様キャラは大体その地位が高いし、権力をバッチリ持っている場合が多い。学園物の俺様キャラに対しては「なんでお前にそんな偉そうにされなきゃならんのだ」と反発する者でも、これには先述のように「いや、偉そうもなにも偉いんだった」と黙りこむしかなくなる。
実力があって偉くてかっこいい奴から特別扱いされて誉められたら、そりゃ嬉しいわという話である。
変わり者の姫として潜入しているほたるをわりとすぐに気に入った信長は、事あるごとにお呼び出し。
うわー、特別扱いされてる!と喜ぶのもやむ無しだが、よく考えたら私がやってること自体は他の攻略キャラにしたことと同じである。つまり他ルートと同じく信長の元を訪問しただけなのだが、彼に「また来い」と規定の台詞を言われただけで「すごい!」となり、得られる優越感が他のキャラよりずっと大きい。
それは、信長がこの城の主で一番偉い人だからだ。男だろうと何だろうとこの城にいる者たちは皆、信長に声をかけられたくてたまらない、彼の特別になりたくてたまらないはずだ。これは、そんな男に特別扱いされるルートなのである。信長のキャラの魅力はもちろん、その優越感でめちゃくちゃ気分がいい。
あと、ネオロマ作品の中にいそうでいないのが「ヒロインから好意を向けられている事を信じて疑わない男」だ。
例えばアンジェのオスカー、コルダの東金、遙4のアシュヴィンあたりは自信家だが、いざヒロインに告白ともなれば「そうだと思ってたぜ」的なことを言いつつも、本当に自分を選んでくれるのかちょっと心配なとこもあった、みたいなことを言う。自信家キャラがヒロインへの告白の時だけは不安になってるというのも好きなシチュエーションではあるが、ずっと自信たっぷりなままなのは遙6の虎くらいじゃなかろうか。
だから、信長の徹頭徹尾「ほたるが余に惚れているのは当たり前」という態度は、新しい!と感じ大いに萌えた。
この信長は「ほたるがまさか余を…?」とか「お前に気持ちを受け入れてもらえるか不安になるとは…、余ともあろうものが」みたいなことは、間違っても言わないのである。
女好きとは違うが、この圧倒的な「慣れている」感。なんなんだ、この人は。
なんというか、抱くと決めた時にはもう抱き終えていなければならないッ!みたいな、プロシュート兄貴クラスの行動力と破壊力だ(喩えが全然わからんという人には申し訳ない)。
そんな感じの(どんな感じだ)信長なので、ほたるとのことも隠さず、城下の民やお付きの家来衆にからかわれたり、相変わらずの特別扱いでほたるをドキドキさせてくれる。
抱き寄せられるのも手を取られるのもしょっちゅうで、終始「その気になったらすぐにでも抱ける」という余裕を感じて、それがまたいい。
定められた通りに生きる忍びのほたるが、彼のそばで「夢」を持つことに憧れていくのも良かった。
今回はほたるが暗殺する側、信長はされる側だからいったいどんな葛藤が…と思ってびくついていた私だが、意外にも信長本人がさっさとほたるの正体に気づいたおかげで、プレイヤーの精神的ダメージはほとんど無い。
ノーヒントでほたるが忍びかもしれんと気づく辺り、信長はまことに有能で、しかもそのちょっと前には身を呈してかばってくれたりもする。
この「ヒロインを身を呈してかばう」は乙女ゲームの鉄板なのだが、それをしてくれたのは「天下統一目前、絶対に命を落とすわけにはいかない男」である。ほたるも、好きな男が自分を庇って怪我するというだけでなく、自分のせいで天下を狙う大事な身体が!と思うあたり、やはり信長ルートは他と違う。
恋愛イベントの甘やかさも勿論いいが、それに加えて信長様LOVE勢のご家来衆がいい。蘭丸、秀吉あたりは当然としても、あの兄様でさえ信長の前では振り回されてて、なんだか可愛いのだ。
信行だけは悲しい結末だが、信長が弟のことを大事に思っていることがわかる。
信長ルートは、本能寺で信長が生き残るという夢のつまったifでありながら、身分違いを乗り越えて結ばれるという、いつの時代でも支持されるシナリオだったと思う。エンディングは祝言の白無垢姿で、乙女ゲーのエンディングとしては完璧である。
これだけベタ誉めな感想書いてるんだから、私は「信長最推し」なんだろうと思われたかもしれないが、そういう訳ではない。
私がこのルートをベタ誉めしたのは、いいシナリオにいいキャラだったからだ。
「あいつ(信長)はあなたの大事なものを奪っていきました。あなたの心です」
と一人でカリオストロのラストシーンを演じてしまうくらい信長ルートは良かったし、かっこよかった。
もちろん、この場合はクラリスだけでなく銭形警部もあいつ(信長)に心を奪われている。
最推しが他にいたとしても、この信長を嫌いなネオロマンサーなんているのだろうか。いたら心臓がやたら強い。
そして、そういう方こそ、この信長様に気に入られること請け合いである。そういうのを面白がりそうだから、この信長は魅力的なのだ。