下天の華 罪の華 森蘭丸攻略感想

※個人の感想ですよ~。

「罪の華」なるメリバルートをやるにあたり、私は例によってTwitterで「誰から攻略すべきでしょうか?」と尋ねた(すぐにフォロワーさんを頼る)。
しかし複数頂いた返答は全て「どれからやってもキツい」であった。つまり明確な解答はなかった。というか、皆さん攻略当時を思い出し始めたのか、一瞬にしてツリーがしんみりムードになってしまったのである。
だから、私が蘭丸から始めたことに深い意味はない。単に通常ルートでの攻略一番乗りが彼だったからだ。

通常ルートの蘭丸といえば、信長への忠義と敬愛。でかいワンコ。よーしよしよし。
そしてなんというかこう…「甘酸っぺえ!」と天をあおぎたくなるシナリオだった。もちろん蘭丸は、信長の暗殺を実行しようとしたほたるを前に悩んだり苦しんだりはしていた。しかし結局のところ通常ルートでは、ほたるが暗殺対象の信長自身(と光秀)にうまく動かされていただけだと知った蘭丸は気持ちもスッキリ、本能寺では一緒に信長を守ってハッピーエンドに至るのだ。

一方「罪の華」はどうか。
ほたるは信長でも光秀でもない第三者に、駒として動かされてしまう。知らないうちに誰かの敷いたレールに乗せられているのは通常ルートと同じなのだが、罪の華でほたるは信長方(雇われ先)ではなく、信長の敵対勢力から操られてしまうのだ。これは、依頼を請けた忍びとして致命的なミスである。
さて、敵勢力の刺客斥候としていきなり登場したゲジメなるじいちゃん。彼がほたるに幻術をかける。
「っていうか、君だれ?時雨(青い方)の身内?雰囲気ちょっと似てない?」くらい唐突に登場するゲジメじいだが、私はこういうプロフェッショナルな老人キャラがわりと好きだ。
自分の力の衰えを感じたプロが「最後にひと花咲かせたる!」と命を懸ける。つまり、そういうおっかねえじいさんが虎視眈々と安土の隙を伺っていたところに、信長暗殺への心の揺れを見透かされたほたるが掴まるのだ。
つらい。
ただし一番つらいのは、好きな男(蘭丸)を騙すこと、裏切ることではない。
もちろんそれもつらいが、それらはすでに通常ルートでも経験済みだ。
じゃあ何がつらいのか。
つらいのは、暗殺を躊躇うという、ほたるの人間らしい気持ちが、よりによって敵に操られるきっかけになってしまう事だ。
「甘ったれ」と言ってしまえばそれまでだが、ほたるのこういう忍びらしくない躊躇いや迷いがプレイヤーとして共感できる部分である。
躊躇いは隙を生むのかもしれないが、通常ルートではほたるの躊躇いが「あなたはずっと迷っていたではありませんか」と蘭丸の心を動かし、ハッピーエンドに結び付くのだ。
しかし、罪の華ではそうならない。
それが一番つらいと私は思った。
しかも蘭丸は、ほたるをずーっと信じているのだ。疑念が高まって、夜に訪問してもほたるが留守だったとき、私は「あ、蘭丸はほたるの正体を疑ってるな」と思った。しかし、違った。
蘭丸が疑っているのは終始光秀である。
蘭丸は、ほたるは光秀に無理やり謀反に荷担させられているのではないかという方向に疑念を高めていたのだ。
つまり、兄貴のことは疑っても妹姫については信じている。
実はばっちり荷担している当方として、これには申し訳ないとしか言いようがない。
信じていたにも関わらず、ゲジメとほたるの策で、蘭丸の命より大事な信長様が重傷。安土城の一部が炎上。
これで彼に怒るなという方が無理な話で、蘭丸は、私が乙女ゲーにおいて未だかつて見たことのない三白眼男子と化す。
信長様がガチで重傷。
これこそが蘭丸通常ルートと悪の華ルートとの最大の違いで、蘭丸をぶちギレさせた原因である。
こうして、ほたるは捕まり牢に入れられるのだが、ここに至っても蘭丸は、ほたるが「桔梗姫」とは別人だと信じたがっている。
その真っ直ぐなところが蘭丸らしい。そして切なく申し訳なく、こっちは益々罪悪感で一杯になる。
蘭丸は最初めちゃくちゃ怒る、主君を傷つけた曲者とそれに与したほたるに。
次に責める、ほたるの正体を見抜けず信長を守れなかった自分自身を。
それから思い出が蘇り、ほたるを「悪」と断じることに迷い苦しむ。

ただ、蘭丸がいくら迷おうと、信長を殺そうとした人間には、何がなんでも罰を与えなくてはならない。
たとえ信長自身が「余は気にしてないから別にいいよ」と言っていたとしても、「信長様を傷つけようとした者はこうなる」と見せしめなくては、権力の基盤が揺らぐ。他勢力になめられたらいかんということだ。
そこには「操られていた」とか「本意ではなかった」という過程は関係ない。つまりほたるはこの時点で助からない、というか織田方にとって助けてはいけない存在になる。
大事な主君を傷つけられたのが許せんという感情に加えて、蘭丸はそのあたりの事をよくわかっているんだと思う。
幻術にかかって操られていたほたるからは、織田の利になる話がそれほど出てこないはずで、となると、ある程度の責問の末、見せしめのため残酷に殺されるだけだ。
しかもほたるは女である。舞台がネオロマンスなので、さすがに匂わされてもいなかったが、ほたるは屈強なモブ数人に凌辱されてもおかしくないのだ。普通なら、ゲーム内に出てくるような「ご飯食べられなくて痩せて死んじゃいそう」どころの話ではない目に遭うはずだ。
蘭丸は、それまでにそういう目に遭った間諜や暗殺者を見たことや聞いたことがあるのかもしれない。
ほたるをそういう目に遭わせないために蘭丸が出来ることは、もうあれしかなかったのではないだろうか。
私は蘭丸が、殺すことで自分の好きな相手を守ったのだと思った。
色々と揺らぎながらも最後に蘭丸は、ほたるという、自分が惹かれた女の子の心根を信じてくれたのだ。
牢中、蘭丸が独断でやったあれこれは、主君の意向に背く行為だ。なのにわざわざそれをしたということは、蘭丸の気持ちが最後までほたるに向いていたということだ。
幸せな終わり方ではなかったかもしれないが、とても良い(っていうのも、なんだか妙だけど)エンディングだったと思う。
私は、乙女ゲームにおける真のバッドエンドは、相手がヒロイン以外の女に心を移すことだと思っている。だから、ヒロインが命とひきかえに蘭丸の心を永遠に縛ったように見えるこのエンディングはある意味「大勝利」な気がするのだ。
しかし、まだ恋人にもなってなかった女の子の面影を、蘭丸がこれから一生涯背負うのかと思うとそれもまたつらいのである。

最後に、蘭丸エンドとは関係ないが、もしかしたら信長は蘭丸がほたるを殺すことを黙認してくれたのかもしれないと思った。
蘭丸が牢の見張りを遠ざけて簡単にほたると二人になれたのは、ひそかに信長の意向が働いたのではないかと。

まあ、こういう私の妄想話は別にいい。いつもの事だ。
ただ、このルートに不満があるとするなら、それは光秀の扱いである。私の場合、色々ルートをクリアしてからの罪の華だったので、どうしても「明智の兄様は冷酷かもしれんが、もっとデキる男だ!」と思ってしまうのだ。
それまで常に「千里眼なの?」というような有能ぶりを見せつけてくれた兄様なのに、なんであんなでかい鳳凰が運び込まれたことに気づかないんだという話だ(まあ気づいちゃったら蘭丸罪の華ルートが展開しないんだけどさ)。
兄様に内緒にしてってほたるが周りに頼んだとしても、そこは勝手に情報を掴んで笑顔で詰問するのが本来の兄様じゃないのか?と思って、私はそこだけはちょっと残念に思ったのだった。

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