教科書の一歩先へ
娘は中学一年生。今日、中間テストが終わった。
開放感いっぱいの表情で帰宅した数分後、「解答に迷った問題が合ってるかどうか確認したら、ちゃんと合ってた!」と声を弾ませて教えてくれた。ほー、それはよかったねえ、ところで、どんな問題よ?
「バングラデシュが輸出しているものの第一位」
「へー、で、何だったん?」
「衣料品」
ふーん、よかったねえ、正解で。と、ちょおっと待ったーーー!
私が急に鼻息を荒くしたから、娘は「え?」と動きを止めた。
バングラデシュの輸出品が第1位なのは、衣料品なんだね。それにまつわる、大変な事故を知ってる? 知らないか、先生は何も教えてくれなかった? 教えてくれなかったか。そうかそうか。。。
娘には、こんな話をした。
輸出量第1位と聞くと、国にとって誇らしい産業なんだろうなとポジティブなイメージを抱くと思うが、実は11年前にこんな悲劇があった。
安い賃金で働かされて、泣き寝入りしている人たちが、実は世界に大勢いる。私たちが「安い」と喜んでいる裏で、悲しい思いをしている人がいるのだ。
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先生たちが忙しくしていて、余裕がないのは知っている。
だけど、教科書に沿った内容だけでなく、その一歩先、特に私たちの生活に直結しているような話題があれば、伝えて欲しいと思った。
同時に、それは家庭でもできることだなあと気付いた。
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実は先日、娘はネット通販で、真っ白なショルダーバッグを買った。2,000円くらいに見えたけれど、なんとワンコインの500円。キャンペーンをうまく利用したため、配送料も無料だったそうだ。聞くと、人権問題を指摘されている中国のメーカーのアイテムだった。
楽しいショピングに水を差すのは申し訳ない、と思いつつ、「500円って、ずいぶん安いね。いい買い物ができてよかったけど、これを作った人はどのくらいのお金をもらえるんだろうね」と声をかけたのだった。
娘は「う、、、」と言葉を詰まらせてしまった。
自由に好きなものを選べるのがショッピングの楽しみだから、なるべく口を出したくない。だけど、知っている限りは、伝えないといけない。
自分の暮らしの背景にある現実を知ってどう動くか。そこからは娘次第。
だが、これ以上は言うまい。彼女が言葉を詰まらせた時点で、大切なことは伝わったと確信したから。