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小2だって〝一人時間〟が欲しいよ

「ともまるくん、すごーく〝しっかり〟立っているの!」

これは、学校行事で久々に顔を合わせたママ友さんから、すれ違いざまに言われた言葉である。私はその意味をすぐに察した。そして、ものすごく安心し、同時に大笑いしてしまった。
そうか〜〝しっかり〟立っているんだなと。

小2の息子ともまる(仮名)の話だ。彼は、朝の登校時間にやたら厳しく、登校班の出発時間が8時5分なのに、7時50分に家を出ることを自らに課している。
遅刻しないのは結構なことなので、家族は特に何を言うでもなく送り出しているのだが、はて。出発までの15分間、彼は一人で何をしているのだろうかと、夫とときどき話していたのだった。

その答えが、冒頭の「ともまるくん、すごーく〝しっかり〟立っている」だった。ママ友は出勤時に息子を見かけるそうで、「毎朝、同じ場所にしっかり立っているよ。でもなんで?」と不思議そうにしていた。
私は安心したのと同時に、その〝しっかり〟という表現が、頑固一徹で生真面目な息子の性格を見事に言い表しているので、「ああ、もう、立ち姿が目に浮かぶわー」と大笑い。ともまる、本当に一人で突っ立っているんだなと。

今日も同じように、息子はきっかり出発時間の15分前に家を出て集合場所に向かった。
そして10分くらいが経った頃、私は息子の忘れ物に気がついた。「あ、水筒忘れてるわ。もう出発しちゃったかな」と時計を見たら、まだ8時を少し過ぎたところ。
「まだ出発時間じゃないから、集合場所にいるかも」
「いるかもね。むしろ、まだ誰も来てないかもよ、一人かも 笑」
と夫とクスクス笑っていたのだが、実際に集合場所に行ってみたら、本当に一人だった。

息子はいつもの場所に〝しっかり〟と立っていて、地面に視線を落として考え事をしているように見えた。
「ともまるー。水筒ー」と私が少し離れたところから声をかけると、ふっと気づいて、こちらに向かってくる。「あー、今日運動会の練習があるから、忘れたら大変なことになるところだった」と言って水筒を受け取ると、定位置に戻った。

息子はなんというか、満足そうな顔をしているなと母は感じた。「一人で寂しくないの?」と口を開きそうになったが、それは愚問だとすぐに察した。
息子は朝の静寂の中で、一人だけの時間を楽しんでいるのだろう。本人にはそんな意図も目的もないと思うが、自然とそこに落ち着いている感じ。「息子にとって、この一人時間はとても大切なものなのだ」と直感した。

小2なんてまだまだ幼いと思っていた。だけど、大人が決めつけるほど、〝幼く〟も〝子ども〟でもないのかもしれない。九九ができるようになったとか、漢字が書けるようになったとか、そういうわかりやすい成長とは違う、もう少し別次元の成長を感じた出来事だった。

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