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遠回りは人生のスパイスだ?② 内モンゴル〜北京タクシー旅 前編
飛行機に乗り遅れたのだった。
いや、搭乗時間には間に合った。ただ、チェックインするときに、カウンター嬢がこう言い放ったのだ。「これは昨日のチケットです」と。
中国・内モンゴル自治区の省都、フフホトにあるフフホト白塔国際空港でのハプニング。私たちはフフホトから北京に帰るつもりだったのに、その飛行機は前日のちょうど今頃、離陸してしまったのだ。
4人ともが唖然とした。4人というのは、北京に暮らす日本人Aちゃんとそのボーイフレンドでオーストラリア人のJ氏。そしてベトナムから北京にやって来た日本人Mちゃん、そして日本から参加したわたし。
4人が4人とも、チケットの日付を確認していなかったことに驚いた。
「ああ、あの便に乗るはずだったのに……まさか昨日とは」と電光掲示板に記された「boarding」の文字を見つめた。
「……どないしよ」
私は翌日に北京発の帰国便を予約していたので、できれば北京に戻りたかったが、日本に帰ったところでその時はプー太郎の身の上だったから喫緊の用事はない。他の3人も、絶対に帰らないと!という感じではなく、はあ、さてどうしようね、と、とりあえず頭をひねった。
すると、ワラワラと「どうしたどうした」と人々が寄ってくるではないか。中国語が堪能なAちゃんが説明すると、その人たちが口々に話し出す。なんだか色々なアイデアが飛び出していた様子だった。
「みんな親切だなあ」と私がこぼしたら、「中国の人は、みんなこうだよ」とAちゃん。Mちゃんも「ベトナムの人も、バスでお年寄りが乗ってきたら、みんなが席を譲ろうとするよ」と言っていた。
電車かタクシーか、はたまた翌日の飛行機かと迷う中、誰かが屈強そうな男性を連れてきた。聞けば、タクシーの運転手で、北京まで行けるという。
今でも覚えている。モンゴル相撲の土俵に立っていそうな、ガタイの良い兄ちゃんであった。運賃を交渉したところ、すんなりと話がまとまった。フフホトから北京まで、およそ500キロをタクシーで移動することが決まった。
続く。