冷凍ラーメンが〝ほぼ現地の味〟で驚いた話 〜20年前にあったなら〜
海外旅行に出かけると、「日本食が恋しくなる」とよく言う。
しかし、私がワーキングホリデーで1年間暮らしたカナダ・モントリオールには、日本食を出す料理店、「IZAKAYA」と地元の子も呼んでいた居酒屋などがあったし、チャイナタウンで日本の食材を買うことができたので、特に恋しくなることも、困ることもなかった。
だが、だがしかし。ラーメンだけはなかったのだ。
居酒屋に行けばメニューに「ラーメン」の文字はあるものの、注文して食べたとて味に満足することはなかった。日本人みんなで噂していたが、あれはインスタントラーメンだろう。私たちが欲するラーメンとは雲泥の差があった。
ビザの期限切れが迫り、帰国するときはとても寂しかったが、日本でラーメンが食べられると思うと胸が弾んだ。
日本食は恋しくならなかったけど、ラーメンだけは恋しかったのだ。
*
あれから20年以上が過ぎた2024年のある日。イ○ンモールへ行ったときのこと。
小2の息子ともまるがラーメンを食べたいと言うので、家族でそのつもりでいたのだが、なんやかんやうまくコトが運ばずにとうとう帰る時間になってしまった。それでも諦めきれぬのか、「夕食はラーメンがいい」とめちゃくちゃ不機嫌なので、どうしようかと困惑していたら、目の前に「冷凍品コーナー」が現れた。
コーナーという表現は間違いかもしれない、広い面積に冷凍庫がびっしり並んでいる。名パティシエの人気デザート、ご当地の特産品、人気のお取り寄せ商品など、「冷凍品の百貨店」とでも表現したくなるほどの品揃えで、その中にラーメンのコーナーもあったのだった。
のぞいてみると、あるわあるわ、全国に名を馳せる人気店のラーメンたち。北海道、福島、京都、福岡などを拠点とする有名店ばかりだ。
しかも1袋=1人前で300円もしないから驚いた。家族4人分を買っても1,200円。ラーメン屋で食べるよりうんと安い。
「今日はもう疲れたから、夕食はこのラーメンと何か副菜にする」と伝えて、一人一人に好きなラーメンを選んでもらった。
帰宅後、すぐに作り始めたのだが、調理の簡単さに感激した。
袋から出したら、そのまま鍋に入れて温めればいいだけ。お水もいらない。
これは想像だが、出来上がった熱々のラーメンを、最新の冷凍技術で持って瞬間的に凍らせたのに違いない。スープも具材もまとめて、出来上がったままに。
だから食べるときは、それを鍋で解凍すればOKなのだ。
食べてみてこれまたビックリ。「店の味と変わらない気がする」。
もちろん、現地まで足を運んで食べるラーメンの方が絶対に美味しいのだが、家の鍋でここまで再現できるとは。
*
20年前、このラーメンがモントリオールにあったなら。
もしかしたら、あと1年くらいビザを延長したかもしれない。
もしかしたら、何か特別なご縁があったかもしれない。
もしかしたら、今は日本にいなかったかもしれない。
なーんて。私は日本が好きだから、ラーメンがあろうとなかろうと必ず帰国はしたと思うけど。
このラーメンがもしあったら、何かが変わったかもしれないなあ、とふんわり考えたのでした。