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藤井風が教えてくれる、執着を手放す愛の形

昨年からウクレレを始め、今年の3月には発表会を控えている。
その課題曲のひとつが、昭和を代表する名曲、太田裕美さんの「木綿のハンカチーフ」。地方から都会へ出て行く男性と、それを見送る女性の遠距離恋愛を描いた切ないストーリーが胸を打つ。

これを、なんと大好きな風くん(藤井風)が、ピアノでカバーしていた。嬉しい!

恋人よ僕は旅立つ 東へと向かう列車で
華やいだ街で 君への贈り物 探す、探すつもりだ

いいえ
あなた、私は欲しいものは無いのよ
ただ、都会の絵の具に染まらないで帰って

この課題曲が決まったとき、ウクレレ仲間のひとりがこう言った。

「この女性、わがままだよね」

…ん?! 思いもよらぬ言葉に、改めて歌詞をじっくりと読み返してみた。

恋人よ半年が過ぎ 会えないが泣かないでくれ
都会で流行りの指輪を送るよ 君に 君に似合うはずだ

いいえ 星のダイヤも 海に眠る真珠も
きっとあなたのキスほど きらめくはずないもの きらめくはずないもの

男性は遠く離れても彼女を想い、贈り物という彼なりの方法で彼女を喜ばせようとしている。にも関わらず、彼女は「欲しくない」とあっさり拒否。
この時点で、既に雲行きが怪しい…。

その後も、頑張って自分磨きをしたであろう男性がスーツ姿を見て欲しいと切り出すも、これまたNO。(草に寝転ぶあなたが好きだったの、らしい)。

途中「からだに気をつけてね」と気遣いを見せる部分申し訳るが「木枯らしのビル街」と前置きがあって、これもイヤミかも…と勘ぐってしまう。
そして迎えた、終盤。

恋人よ 君を忘れて 変わってく ぼくを許して
毎日愉快に 過ごす街角 ぼくは ぼくは帰れない

あなた 最後のわがまま 贈り物をねだるわ
ねぇ 涙拭く木綿のハンカチーフください ハンカチーフください

…ほらね、そりゃ、こうなるよ。
彼は都会へ行ったからといって、ほかの女性に心変わりをしたわけではない。新しい生活に馴染もうと努力するなかで、最後まで「変わらないでいて欲しい」と求め続けた、彼女自身のエゴに嫌気がさしたのではなかろうか。

大晦日の紅白歌合戦で、風くんはこう歌っていた。

『満ちてゆく』

愛されるために愛すのは悲劇
(中略)
何もないけれど全て差し出すよ
手を離す、軽くなる、満ちてゆく

自分のなかにある執着を手放し、何も求めず、ただ愛する。そう、愛の形がまるで違うのだ。

もし彼女が何も求めず、彼の変化を受け入れてさえいれば、2人の結末はまた違ったものになっていたかもしれない。
…なんて大きなお世話だし、そんなことを言いながらも聴けばウルウルしてしまうのだが。

音楽はいろいろな事を教えてくれる。
とりあえず、紅白でNYの朝日をバックに歌う風くんは、すべてのエゴを手放したかのように見えて神々しかったことだけは確か。

今年もたくさんの良い音楽に触れていきたい。
ついでに、ウクレレもうまくなりますように。

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