見出し画像

公共土木事業の見積もりが減ることってあるの?

2017年にカリフォルニア州上院法案である、Senate Bill 1(SB1)が可決され、道路一般(フリーウェイ、幹線道路、地域の道路、自転車や歩行者のための設備)の補修、安全性の改善、バスや電車などの公共交通機関をさらに改善するため、資金を恒久的に地方自治体とカリフォルニア州の交通省に与える、という制度ができました。資金は、ガソリンにそのため新たにかけられる消費税を収益とし、SB1 の中にもいろいろプログラムがあり、自治体の人口数をもとに割り当てられるものから、プロジェクトの効果、利益率などをもとに与えられる授与形式のものまで。

SB1が可決された、というのは道路一般の補修や安全対策に力を入れたい、でも資金不足でままならない という州政府や自治体にとっては手放しで喜べるようなお話でした。仕事場でも、外部の人と話をしても、みんながなんかウキウキしている感じ。それに、プロジェクトって、規模が大きく数年かかるものほど、資金が、プロジェクト全体の予算の3分の1ぐらいしか実現していないことがほとんど。その資金の穴埋めをしてくれるのがSB1からくるお金(他にも連邦政府にもお金くださいってリクエストするけど)。

2017-2018決算年度に、私の所属する部門から合計5つのプロジェクトに対して出願書(アプリケーション)を提出しました。そのうちの4つはすべてフリーウェイのプロジェクト。後の一つはロングビーチ港、ロサンゼルス港などとの共同アプリケーションで、主に貨物列車の路線に関するプロジェクトでした。

アプリケーションの制作をしている最中で何が一番ビビったかって、プロジェクトの見積もりが瞬きする間に跳ね上がっていく、という状況を目の当たりにしたこと。もともと資金不足でどこの自治体も困り果てていたところに、まさに恵みの雨のような法案の可決だったんだけど、おかげで州全体、どこもかしこも今まで行き詰っていたプロジェクトを進めることができるとなって、土木工事用の人手、材料(鉄筋、コンクリート)、機材などが間に合わなくなり、それが見積もり(特に一番金のかかる建設の部分で)がどんどん跳ね上がっていく、というい状況を作り出しました。その理由として、いつまでにこの与えられた授与金を使ってしまわなければいけない、という規定があり、授与の対象になったプロジェクトがある一定の期間内に、授与の対象になっているプロジェクト・フェイズ(デザインだったり工事だったり)を始めなければならない、という規定の元、建設ラッシュが起こってしまった、という点。

はじめはロサンゼルス郡だけの話?と思ってほかの人にも訪ねてみたら、みんな口をそろえて、25-30%の増加、だと言います。正直、集団詐欺にあってんじゃないの?と思った。フリーウェイの土木工事なんて、小さいものでも$100ミリオン(今の相場で108億円だと思うけど、日本式の数字の数え方忘れてて自信無し)だから、平気で$25ミリオンぐらいの見積もり増加を言ってるのです。

そんな調子であれもこれも見積もり増加してたら、いくら法案が可決されて新たに州の予算が増えたって、金欠になるの目に見えてない? 

あれから3年がたち、今まさに、次のアプリケーション制作のサイクルが始まりました。3年ごとに更新のプログラムなので。 そこへ来て外出禁止令が出てるため、外を走っている車は少なく、もちろんそのためにSB1資金の元となるガソリンの消費が減っています。ということは今回のサイクル(3年間カバーされるんだけど)、1年目、2年目の収益が減ることが予想されます。 多分今は土木工事も中断されていると思います。 予算の総額が減ることが予想され、建設もいつ再開できるかわからない、というこの状態の今、プロジェクトの見積もりが下がる、ということはあるんでしょうか?

多分ないだろうな。少なく見積もったものが増えることがあっても、多く見積もったものが下がることっていまだに遭遇したことないよ。ついでにいうとスケジュール通りっていうのも聞かない。税金を使って行われる公的事業がこんなんだから、信用ってあんまりないんだろうね。 となんだか最後は非常に常套句な〆になりました。

いいなと思ったら応援しよう!