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やっと言える、あの言葉を
前回の投稿から1か月以上が過ぎてしまった。先月上旬「今よりもう少しだけ、自分の日常を表現したくなった」と書いた通り、詩的な自分語りの世界を広げていくはずが、仕事で急に試験を受けることになり、表現している場合ではなくなってしまったのだ。
11月下旬、私の机に試験のお知らせが届いていた。試験日は3週間後以降だと書かれていた。学習期間の短さから「これは時々社会で遭遇する、簡単な講習を受けて、ちゃんと聞いていれば全員受かる試験」だと思い込んでいた。そして、試験日程の決定通知と同時に本が2冊届いた。2冊、である。事前資料があると聞いて、プリントが数枚届くのを想像していた私は心の中で絶叫した。(本なのかーーい!!)しかもこの時、試験までは2週間しかなかった。(嘘でしょーー!?)
幸いにも本の内容をまとめた動画が用意されていて、最初の1週間で1冊分の内容を視聴出来た。このまま順調に進めば試験前日には2冊目の最後まで辿り着ける。試験が急に決まっただけで、知らない分野ではないだけに、冷静に考えれば解ける問題もたくさんあった。眠気や疲労感と闘いながら勉強をするのはキツかったけれど、合格できる予感が日に日に高まっていった。
そして、テストの前々日、上司から思いがけないミッションが追加された。
「人が足りないから、テストの後、高速で帰って来てくれるか?」
(な、なんですと!!!!!)
言えない、言えない。
「私、高速道路は1度しか運転した事がないんです。しかも20年前で」
なんて、ダメダメダメ!!
私のnoteを初めて読む人の為に説明しよう。私は今年の秋に自動車販売店に入社したばかりの40代である。車は見るのも乗るのも好きなのだけれど、家の事情であまり遠出が出来ず、たまたま高速を運転する機会がなかったのだ。とはいえ、高速に乗れないなんて言いたくない。経験がゼロに近いだけで、怖くて乗れないわけじゃないし。乗れないわけじゃないし!!
「わかりましたぁ!」
接客をする時と同じ笑顔で明るく答え、どうにか平静を装った。
それからしばらくソワソワして、事務作業をしていても落ち着かなかった。それでも、この数年の間に
「高速の方が速いかなぁ?一人で行ってみようかなぁ」
と思う瞬間は何度もあった。これはチャンスなんだと気持ちを切り替えた。
その晩、寝る間に試験勉強をしようとテキストを広げたものの、高速道路の合流を想像したら緊張して手に汗をかいてしまった。このままではまずい。イメージを掴む為にYouTubeで高速運転の解説動画をいくつか見た。この日は合流の仕方で頭がいっぱいになり、試験勉強に集中出来なくなった。重症である。しかも、合流は1度ではない。自分が無事に入れても、その後には合流される側になるのだ。あぁ、恐ろしや、恐ろしや。30分程度の短い区間しか乗らないというのに、私にとっては試験よりも大変な挑戦である
試験当日、会場に向かう間もまだ高速に乗らずに済む方法を考えていた。
「うっかりナビの設定を間違えちゃいましてー!」
私ならやらかしそうだが、嘘をついてまで逃げたくない。それに、勤務歴の浅い私は仕事中、常に誰かに何かを聞いて、助けてもらってばかりいる。こんな私でも早く戻って来て欲しいと思ってもらえるのは本当にありがたい。(手のかかる新人がいないと仕事が進むなんて言われたら心折れちゃう…)やっぱり頑張ろう。高速へ行くしかない!!
覚悟を決め、加速をし、本線に視線を向けると空いていた。普段通る一般道の合流と似たような混み具合で、スッと合流出来た。(おぉ〜!)こんなところで感動出来ると思わなかった。ギリギリまで不安で仕方なかったのに、楽しくなって来た。極端に速い車や危険な場面にも遭遇せず、広々とした景色を楽しみながら運転出来た。同時に緊張もしていて「降りるところまだ?まだー?」と独り言を言い続けていた。楽しくても、この緊張感は短時間で十分だ。肝心の試験には華麗に見事に高得点で合格したので、これで当分、高速道路には行かないであろう。
こうして、試験も高速の運転も無事終了。やっと言える、あの言葉を。
「私、失敗しないので」
早く映画見に行かなきゃ!試験勉強の為に行くのを延期していたんだもん!