紫陽花と、世界の秘密
紫陽花を見ると、保育園の頃にした遊びを思い出す。
外が雨雲で昼間なのに暗くて、
普段より子供の数が少なかったから「特別ね」と
園庭の紫陽花の葉を取らせてもらった日だった。
取ってきた葉っぱの上に紙を置き、
クレヨンで葉の形や葉脈が浮き出るように、シャカシャカなぞる。
自分では到底描けない緻密な線が、
私がクレヨンを軽く左右に動かすだけで浮かび上がる。
少しずつ緻密な模様が浮かび上がる様は、
この世界の秘密を解き明かしたような気分にさせてくれた。
秘密はとても緻密で美しいものだった。
冬はあんな棒切れみたいなのに。
内側に緻密な秘密を抱えて、六月を待っているのね。