蓮華温泉ロッジで過ごす理想の3日間
今回の計画は栂池ロープウェイから小蓮華山まで登ってピークから北東に向いたルンゼ、条件悪ければバックボウルを滑って蓮華温泉ロッジにチェックイン、2日目は初めてこのエリアに足を踏み入れる北海道からの2人のために王道の雪倉岳、3日目は二股から木地屋のどこに下山してもメンバーの旦那さまがお迎えに来てくれるというワイルドカードを手に箙岳北東面から土沢か、一難場から大所かと妄想を膨らませていた。
そして迎えた1日目、プチトラブルでのんびり足湯スタート。ロープウェイ山頂駅を出発したのは9時50分!いつもの通りの無風の自然園を汗だくになりながら稜線に向かう。高曇りの完璧なフラットライト。稜線に近づくにつれ風も出てきたため雪は緩まず船越の頭へはブーツパッキングで。13時に小蓮華山に到着するも想定通りのかなりハードなアイスバーンのため斜度を落としたバックボウルを目指して三国境手前まで移動する。
バックボウルにはそこそこの吹き溜まりもありパウダーでターンすることもできるものの第一級のフラットライトにより目測がつけられずスピードは出せず。とは言えアルパインらしい地形を楽しむことができた。いつもは後ろばかり気にするガイドもそれぞれ好き勝手な方向に滑りたいだけ滑れるメンバーのありがたさを満喫しながら。瀬戸川源頭は今シーズンの雪の多さを改めて認識させてくれる大きな沢地形でしかなく雪も緩みデブリも簡単に回避できるもののみと思わず声が出るコンディション。すっかりお腹が減って蓮華温泉ロッジまでのトラバースを嬉々として急ぎチェックイン。いつもニコニコと人柄が溢れ出てるオーナー田原さんに迎え入れていただいた。
時間がないので慌てて内湯で汗を流して食堂へと駆け込む。平日ですが今日は3組のお客様。そこには白馬のジョニーとかの有名なおじーさん。すっかり可愛がっていただきお言葉に甘えまくる。噂通り人間の器の大きさの違いを大いに感じる。ジョニーも人生絶好調のようで良い夜を過ごさせていただいた。
翌2日目はこれ以上ない良いお天気。今晩も蓮華温泉ロッジ泊なのでかなりのんびり出発。ここで忘れていけないのはタオル。帰ってきた時にブーツを脱がずに野天風呂に直行するために各自ザックに忍ばせる。ブーツを脱いで部屋に入ると一気に面倒になるのでお忘れなく。
強い日差しに本日の目標は”休憩ごとに日焼け止め”わかっていても面倒でついつい塗り直しをサボってしまうのはメンバー共通の懸念事項であった。まあ、顔の下半分の色を見れば一目瞭然であるが。
出発直後こそ硬かった雪もあっという間に緩んで、これじゃ滑る頃にはぐずぐずかもと心配しながら大雪城と呼ぶにふさわしい斜面を登っていく。ちなみにこれは杞憂で終わる。
目標物となる樹木が少ないため遠近感を掴むのがなかなか難しい。今回は雪倉の滝から向かって左側の尾根地形を登ることとした。傾斜の強い1ピッチはブーツクランポンでこなし穏やかな尾根地形へと出る。もうピークはすぐそこに見えるがそうでないので自分にまだまだと言い聞かせる。
2,300mを超えるあたりからだろうか徐々に風も出て雪が固くなり始める。色々ルートを考えながら行くとちょうど幅5mくらいの吹き溜まりがピークに向かっているのを見つける。そこを外せばクランポンに履き替えることも不可能なくらいの硬さのため各自ピッケルを取り出す。
奇跡的に吹き溜まりはピークまで繋がっておりもうちょっとで飛べそうな風の吹く雪倉岳に登頂。
後立山から毛勝、朝日、五輪に日本海、定番の頸城のパノラマを堪能した後は大撮影会。全員のプロフィール紹介の写真をここで撮った。
そしてお待ちかねの滑走タイム。当然ながらピーク直下は硬いアイスバーンだが徐々にエッジの噛む楽しい斜面に変わってくる。メンバーのテンションが上がってくるのを肌で感じる。
溢れんばかりの笑顔で蓮華温泉ロッジに到着する頃には私の頭の中は温泉ビール以外考えられなくなっていた。ロッジの外にザックを放り出したら両のポッケに1つずつ缶ビールを入れてそそくさと野天風呂へと向かう。
温泉ビールは日本が誇るアプレシーでありなんなら本場ヨーロッパのそれより価値があると思うのは私だけであろうか。
そしてその夜はなんと前払いしてもらったおじーさんの差し入れをいただきつつなんとかつけたグループ名で色紙を書いて更けていった。
屋根に打ち付ける雨の音と木々を揺らす風の音に何度か目覚めるが気のせいと布団の中でぐずぐずする朝。予報よりかなり早く崩れ出したようでワイルドカード虚しく木地屋へ直行することとなる。完全なテムレス日和だ。
お迎えの車にありがたく乗せていただき、少し落ち着いたところで人は濡れればこの気温でも簡単に低体温症になることを再確認し温泉に直行する。
最後はikoiで遅めのランチをいただいているとそこにいた渡部善斗選手にオリンピック銅メダルと記念撮影してもらえるというおまけ付き。
来年も必ず集まろうと硬い約束をしてそれぞれ家路に着いた。