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メディアローンチ20カ月後に、月間100万PV超。創刊編集長がやったこと全記録

夏が終わるまでに記録しておきたかったこと。2024年8月10日、ウェブメディアOTEMOTOは創刊2周年を迎えました。それに先立ち、2024年4月に月間115万PVとなり、目標の100万PVを達成しました!

ローンチ前の目標設定で「月間20万PV」を申告したところ、社長「100万PVくらいいけるでしょ」、私「無理っす」。

このやりとりが、今から2年前のこと。

その後、体制変更などにより、編集部員は私1人だけという"冬の時代"を8カ月以上も耐えました。

1人体制で最も困るのは、公開前に原稿をチェックしてくれる編集者がいないこと。新聞記者出身の夫に皿洗いと引き換えに原稿確認を外注したことも何度か。

自転車操業で月間十数本の記事を出し、月間数十万PVをぼちぼちと積み重ね、同時並行で採用活動を進め、なんとか2周年を迎えることができました。その間、大好きだった複数のウェブメディアの閉鎖を知り、泣きました。客観視する暇すらなかったけれど、ウェブメディア激動の時代に私、まずまずやってきたのでは?

そもそもこの時代にメディアの立ち上げと運営を一任してくれた会社も珍しいわけで、これは記録すべきことなのでは。そう思い立ち、100万PVまでの道のりを振り返ってみたいと思います。メディア関係の方にしか読み解けないニッチな内容となっております!


立ち上げ期(2022年8月-12月)

2022年4月に株式会社ハリズリーに入社し、8月10日にOTEMOTOをローンチした思いについてはこちら。

方針決めやサイト制作などローンチ前の苦労は割愛し(すごい苦労だったけど!!)、このnoteには「伸ばすためにやったこと」を記します。

OTEMOTOは、規模的にも成り立ちとしてもPV連動の収益を得るメディアではないものの、PVは重要なベンチマーク。ただ、100万PVをサイト単体で獲得するのは到底無理な話です。ドメインパワーゼロの無名メディアの認知度を上げるためにも、外部プラットフォームに記事を配信する必要がありました。

前職のつてを頼ったり正面からあたったりして、各ニュースプラットフォームに配信の申請をしました。たいてい審査に数カ月かかるうえ、OTEMOTOは事業会社が運営していることから、広告宣伝媒体だとみなされて審査落ちすることも。

実は、初年度の目標としてはPVのほかに定性目標として「Internet Media AWARDSの受賞」も掲げていて、幸いにもテキスト・コンテンツ部門を受賞することができました。

そこで、審査落ちしたプラットフォームには、この受賞実績をもとに社会性や公共性をアピールして再審査を依頼し、ようやく配信が決まったところもありました。

いち早く配信できたグノシーさんの国際女性デー特集に参加させていただいたり、ハフポスト日本版さんに一部の記事を転載していただいたりと、立ち上げ期はとにかく、コンテンツの質を武器に認知を広げる取り組みをしていました。ローンチ前後に相談に乗ってくださった方たちには感謝してもしきれません。

変革期(2023年1月-12月)

そうやって多くの人にお世話になったけれど、イーロン・マスクだけは許せません。

そう、Xのアルゴリズム変更です。2023年秋のXからの流入数は、1年前のTwitterからの流入数の約10分の1になりました。

当初からSNSにはそれほど力を入れていませんでしたが(というか、注力する余裕がない)、さすがに大打撃。そこでこの時点で、内部回遊を強化する仕様変更をサイト制作会社に依頼しました。

また、もともと私が得意としていたTwitterで瞬発的にバズるテーマの記事から少し距離をおき、検索などで見つけてもらって長く読まれるような記事を増やしました。

このときの方針転換は、結果的にはよかったです。

目の前にバズりニンジンがあるとニュースを追いがちな性分なので、急きょ取材依頼して夜中に記事を書いて翌朝公開するような生活を続けていました。ものづくり系のルポやインタビューなど腰を据えた企画は「大事だけどPVが取れないから」と後回しにしがちだったのです。

メディアの認知が高まって企業に取材依頼しやすくなったタイミングとも重なり、ものづくり系の記事に向き合う覚悟が固まりました。

それでも最初はやはり、ものづくり系の記事は伸び悩みました。丁寧につくり込んだのにPVが少ないとさすがに凹みます。そんなとき、取材で出会う職人さんたちの言葉に励まされたと同時に、ハッとさせられました。

「土屋鞄さんって、いいものづくりをしていますよね」
「温故創新というミッションに共感します」

長年、誠実なものづくりによって先輩たちが築いてきた信頼があるからこそ、無名メディアの取材を受けていただけている。私がフリーライドするだけではいけない。OTEMOTOだからこそ、できること、すべきことがあるのではーー。

これまでの自分の中の常識をいったん引っ剥がし、記事の切り口をより工夫するように努めました。詳しくは後ほどお伝えできればと思います。

また、つくり手の思いをより多くの人に届けるために、記事のタイトルにも工夫を重ねました。複数のタイトルを設定できるようにし、記事の個性や読者との相性を見極めながら、表示を切り替えたり変更したりして、1本の記事を大切に育てるようにしました。その繰り返しで全体最適解がなんとなく見えるようになり、ものづくり系の記事もちょっとびっくりするくらいのPVが得られるようになってきました。

メディア運営の根幹であるマネタイズについてはまだまだ課題が多いですが、主に企業タイアップによります。OTEMOTOサイト上の広告記事のほか、土屋鞄のランドセルと姉妹ブランドのgriroseのランドセルのお届け時に同梱する紙媒体「入学応援マガジン」を制作し、2年連続で企業協賛をいただいています。

こうした取り組みはリテールメディア的でもあり、事業会社ならでは。読んでくださったお客様の反応が届くことでもやりがいを感じます。

成長期(2024年1月-9月)

現在、編集部は2名体制で、月12本前後の記事を内製し、インターンの学生さんがInstagramの動画制作などを担当してくれています。私が月8本前後の記事を書いていると言うと「どんな働き方をしているの?」と聞かれることがとても多いので、一部をご紹介します。

@otemoto_media

1本の記事を企画してから公開するまでにどれほど労力や時間がかかるかは、メディア関係者なら想像できますが、ここはメディア企業ではないため、基本的には「何をやっているかわからない謎の人」と見られていることが大前提。つまり、公開した記事がすべてです。

主に在宅勤務のため、逆に言うと記事を出せなければサボっているとみなされて当然です。安定的に記事を公開できるよう、事前準備と時間管理を徹底しています。

事前準備については、「取材依頼書ができたら記事ができたも同然」と教わったことがあり、完全に同意しないまでも、時間をかけてリサーチして取材依頼書に書く3つの質問案を厳選しています。ラブレターのような感覚でしょうか。取材前に信頼関係を築けるよう、具体的な問いにしつつ、柔軟性も残す書き方にします。失敗した経験や過去の不祥事など尖った質問をすることも多いので、取材を受けるかどうかを決めていただくためにもフェアでありたいと思っています。

取材する際は、この3つの質問と、事前リサーチで気になった要素をドキュメントに時系列でまとめておき、その上から取材メモをとっていきます。見出しになりそうな言葉を聞けたらこの時点で太字にしておきます。リサーチしても見当たらなかった新しい話を聞けた瞬間や、取材の帰り道にタイトル案が浮かんだ瞬間は、最高に心が踊ります。

文字起こしは自分でやります。倍速で聴いて取材メモを補足する程度にし、同時に構成を考えます。こうするとメモ自体が構成案になるので、データや社会的背景を付け加え、1日(4〜8時間)あれば、だいたい記事が仕上がる感じになります。

時間管理については、子育てをしていると職場より家族に左右されがちです。在宅勤務でミーティングも少ない環境なのに、小学生と高校生が交互に自宅を出入りするので作業を中断せざるを得ないことも。

学校の長期休み中は、事前に子ども2人の在宅時間をカレンダーに落としておきました。自宅に誰もいない時間帯は集中して原稿を書く時間。1人になれない時間はメール返信や資料づくり、写真のレタッチ、文字起こしなど細切れの作業にあてるかたちで、毎朝スケジュールを立てました。

とはいえ、作家ではないので過度なクリエイティビティを意識しないことも必要です。なかなか原稿を書き進められないときは、先に写真を選んでキャプションを入れてみるなど、記事から逃げない範囲で自分なりの集中トリガーをつくっています。

もともと私は文章が下手だという自覚とコンプレックスがあり、完成度を追求すると時間がかかってしまうため、記事を書くうえでは3つの要素を満たせたら合格点にしようと決めています。

その3つは「私が感動したこと」「読者が興味をもつこと」「取材先が取材を受けてよかったと思えること」。三方よしと少し似ています。これに加えて「新しさ」や「社会の役に立つ」などもありますが、3つの要素を満たせたら結果的にそうなるはずです。誰もが自ら発信できる時代に、メディアや編集者の存在意義である「客観性」も、この3つの要素で網羅されると思っています。

そしてこの考え方は、先ほど少し書いた、OTEMOTOだからできる切り口の工夫につながっています。

例えば、ミツカングループの食品ブランド「ZENB」さんの記事。

食品ロスや健康志向など話題にこと欠かないブランドですが、「米と麦に続く新たな主食をつくる」という挑戦に関心をもち、開発者のインタビューをリクエストしたところ、「ものづくり観点での取材は意外と例がなかった」として、国内外のグループ全体で記事を共有してくださいました。

余った糸を使って多様性の象徴である「レインボー組紐」をつくった福井県勝山市の「多田製紐」さんからは、「アップサイクルの話ではなく、職人の誇りにフォーカスされたのがうれしかった」と言っていただけました。

福井県鯖江市のめがねブランド「金子眼鏡」さんには、最先端ロボットを導入した工場を取材させていただきました。記事公開後、「ハンドメイド→マシンメイドの流れで取り上げられる機会が多いが、今回は逆の発想で、新たな気づきがあった」との連絡をいただきました。

私自身はものづくりはできませんが、つくり手が気づいていなかった魅力を取材で発掘できたら光栄ですし、より多くの人に魅力を伝えるお手伝いができれば、ものづくりの未来につながるかもしれない。そんな希望をもって、3つの要素の交差点から新たな切り口を探しています。

進化期(2024年10月-)

2024年10月以降、OTEMOTOはより進化するために、新しい施策を検討中です。

OTEMOTOを運営するハリズリーの使命(Mission)は、「温故創新で、つかい手も、つくり手も、豊かにする。

グローバル化やAIの進歩など大きな時代の変化の中で、1人だけ、1社だけで孤独に攻防するのではなく、つくり手とつくり手、つくり手とつかい手が手を取り合って新たな価値をつくっていく、そのつなぎ手のような存在にもなっていきたい。

3年目、大きな感謝とともに、私自身も挑戦を続けていきます。

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