2-6 検査結果③ 治療への希望
まな板の上の鯉状態の検査
脳槽シンチにより、重度の髄液漏れが確定したので、本命のブラットパッチ(自分の血液で髄液漏れの箇所を塞ぐ)を受けるために、損傷個所を特定しなければならない。そこで、さらなる検査が必要で「CTミエログラフィー」を行った。
今までの検査はパジャマのような姿のまま行うことができたが、今回は専用の手術着に着替える必要があった。というのも、この検査は腰椎から造影剤を投入し、その流れをCTで撮影するというものなのだが「透視室」という部屋で、髄腔への造影剤投与がちゃんと出来ているかを”リアルタイムで”モニターで確認するためだ。脳槽シンチ同様、局所麻酔→腰椎穿刺→薬剤投与と進んでいくが悲しいことに、透視室の診察台は硬くて冷たいため、緊張のせいもあるが足が攣るアクシデントが発生した。
「あ!左脚がおかしいです!痛いかも!ピリピリしてる?痺れ?麻痺じゃなさそうですが、痛いです。攣ったかも!?」
と軽いパニックに陥った。(局所麻酔や造影剤で麻痺が起きるリスクもゼロではないので)しかし、ちょっと冷静になって右足で左足を触ってみると「触覚」はあったので、大丈夫なはず、と少し落ち着く。横向きで背中を丸めた体勢だったため、仰向けになり早く脚を伸ばしたいところだが、止血と消毒などの処置が終わるまでは動けない。
「ぎゃあー」
と情けない声を出しつつも、やっと仰向けになって脚を伸ばして安心かと思いきや、腰に激痛が走る。髄液が少ない状態なので、造影剤投与に過敏に反応してしまうらしい。数分前の局部麻酔の効果はこの時点でほぼなし。しかも、痛みがジワジワ上がってくる。あー、これが髄液の流れね!と感じてしまうレベルに痛みが移動して行く。肩甲骨の真ん中辺りで痛みの移動がストップしたので、どうやら腰からこの辺りまでの間に漏出箇所がありそうである。
その後のCT撮影はRIに比べたら楽勝で、すぐに終わった。この入院期間で、放射線科にある多くの機器のお世話になっている。ある意味貴重な経験だ。
損傷箇所特定
翌日、検査結果のレポートが上がってきた。髄液漏出は2箇所。
①胸椎11、12の間、硬膜の内側らしい
②腰椎4、5の間
ブラッドパッチにより漏れを塞ぐ場合、処置は麻酔科の医師がするようだが、①の箇所で処置が難しいかもしれないとのこと。その場合は背中を開く外科手術になるらしいが、入院期間が長くなるのでそれは出来れば避けたいところ。
いずれにせよ、土日を挟んで翌週月曜の麻酔科受診時に結論が出るようなのでそれを待つしかない状況だ。モヤモヤするが、一応ゆっくり前進はしている。病名の特定、髄液漏出箇所の特定までは出来たので、あとは治療方針だ!と気持ちはかなり前向きになった。
それから、検査が怖いとか痛いとか騒いでいるが、実は私なんぞ序の口で、腰椎穿刺を2日に1回ペースで行った患者さんもいるらしい。上には上がいるものである。
点滴の効果を少なからず感じる
私の場合、死に直結する疾病でないことは安心材料だった。発症から今まで正直痛い箇所が多いので辛いのは確かだが、鎮痛剤なしでも痛みに耐えているうちに疲れてくるから何とか寝られるし、今寝たら明日死んでるかもしれないという恐怖はない。同じ病室には脳腫瘍摘出前の30代女性が入院しており、彼女は術前強烈にナーバスだった。無理もないことだが・・・。
また、この頃は生理食塩水の点滴開始から11日が経過していたのだが、少しずつ痛みは緩和しており、机の上に置いたご飯を食べられるほど、身体を起こすことができるようになっていた。入院当初はベッドの上にお盆を置いてもらい、犬食いのような状態で食事していたのだから大きな変化だ。
発症から1か月、希望の光が見えてきた。桜を見る、娘の進級式に参加するというささやかな目標を立てて週末を過ごした。
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【バックナンバー】
0)疾患についての概略
0-1 その頭痛、低髄液圧症候群ではないですか???
0-2 患者偏差値を上げる行動をする
1)発症から入院まで
1-1 発症 1回目の緊急搬送と誤診
1-2 迷走 原因不明の状態に苦しむ日々
1-3 脱出 迷走終了!入院決定!
2)入院中の出来事
2-1 入院開始 低随圧三大面倒な行動
2-2 検査結果① 低髄圧の勝利をつかむ
2-3 点滴と血管に纏わるお話
2-4 回診で緊張、リハビリでほっこり
2-5 検査結果② 髄液駄々洩れ