歳を取るほど1年は短くなる、その仕組みを教えてもらった日。
つい先日、誕生日を迎えました。
毎年なんとかの一つ覚えのように「1年ホント速いわあ」と話している気がしますが、実は20代の頃に「この先ますます、歳を重ねるごとに1年は短く・速くなる」仕組みを聞いて以来、運命を受入れています。
それを聞いたのは、まだジーンズの会社で働いている頃でした。
広報をしていた私はその日、パソコンの前に座ってもくもくと事務作業をこなしていました。アパレルの多くは小さな会社です。うちの会社も特に広報部とかがあるわけではなく、担当は私ひとり。営業部に交じってデスクを並べていました。
だいたいいつも営業さんは、昼頃になると外回りに出かけます。その日も午後の事務所はがらんとしていました。
「木内、精が出るね。時々ひと息つかないとダメだぞ」
そう声をかけてくれたのは、私と共にフロアに残っていたもうひとり、当時の支社長・スーさん。マイク眞木似の50代で(若い頃の写真を見せてもらったら、福山雅治みたいでした!)、得意先の人からもよく「スーさんってカッコいいですよね!」と言われるイケメン。若い頃から履き込んでいるだけあってジーンズがよく似合い、雑誌の誌面などに登場することもしばしば。
「わー!もうこんな時間!……ていうか、もう秋冬の準備に入らないといけない時期なんですよね。1年が速すぎてビックリ」
何の気なしにそう答えると、スーさんは「あはは」と笑って「1年速いよねえ。でも、木内はまだ26歳だろ。僕の歳になると1年はもっともっと短いんだよ」と言うのです。
「え? 年齢と1年の速さって関係あるんですか?」
「それが、あるんだよね」
スーさんの話はこうでした。
若い頃は、人生全体における1年の割合が大きいから、体感速度もゆっくりしている。でも年を重ねるほど、人生全体における1年の割合がどんどん短くなるので、そのぶん体感速度も速くなる。
文章で書くと分かりづらいので、グラフにしてみました。
たとえば3才の子どもの場合、人生全体における1年の割合は1/3。3年分の1年です。
でも、これが仮に30歳になったとしたら、人生における1年は1/30。30年分の1年になると、感覚はこう変わります。
30歳の1年、少なっ!
このように、歳月を重ねて人生経験が増えるほど、1年という時間の感覚はどんどん短くなる。これがスーさんの教えでした。
「確かに、小学校の頃は1日が長く、学校の帰りに夢中で遊んで、ようやく夕方になる……という感じだったような」
「そうでしょう? これからどんどん1年は短くなるから、覚悟しとけよ!」
スーさんはそう言ってにっこり笑い、デスクの引出しに隠していたお菓子をくれました。
その時は「なるほどな」と思ったものの、言葉の重みがよくつかみ切れていなかったのですが、20代、30代、そして40代になってみると「ホントに毎年1年が速くなる~!」とゾッとするやら、ため息が出るやら。
でも「そういうもんなんだ!」と早いうちに割り切れたのも「限りある時間を大切に使おう」と心に刻むことができたのも、若いときにアドバイスをいただいていたおかげ。
ついウダウダとムダな時間を過ごしてしまったとき、今もよく「覚悟しとけよ!」というスーさんのひと言が、頭をよぎるのです。
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