NVIDIA最高益でも株価急落、原因はOpenAIのTSMCチップ発注か!?
下記の記事でOpenAIが独自チップを台湾のTSMCに発注した事がわかりました。このNoteは記事の内容と、この度OpenAIが発注した独自開発のAIアクセラレーター用のチップについて詳しく解説していきます。
記事要約:OpenAI、TSMCの1.6nm A16プロセスノードで独自のAIチップを開発予定
OpenAIは、以前から自社のAIチップを開発することを検討していましたが、このプロジェクトは確実に進んでいるようです。台湾のUnited Daily Newsの報道によると、OpenAIはTSMCに新しいチップの製造を依頼しており、現在のN4やN3プロセスノードではなく、1.6nm、いわゆるA16プロセスノードで製造するためのスロット(注01)を予約しているとのことです。
設計は、Broadcom(注02)やMarvell(注03)が担当する可能性があり、Appleもパートナーになるかもしれないと台湾メディアは報道しています。
UDNの報道(Wccftech経由)では、これを裏付ける具体的な証拠は示されていませんが、台湾のニュース機関はこのような技術予測に関しては通常かなり正確です。現在、OpenAIはChatGPTを運営するために膨大なコストを支出しており、その一因はNvidiaのAIサーバーの非常に高いコストです。
Nvidiaのハードウェアは業界を席巻しており、Alphabet、Amazon、Meta、Microsoft、TeslaがそのHopper H100やBlackwellスーパーシップに数億ドルを投じています。競争力のあるAIチップの設計と開発も同様に高額ですが、一度製品が完成すれば、その後の運用コストははるかに低くなります。
記事解説:OpenAIの発注した独自のAIチップとは?
注01:1.6nmプロセスノード(A16プロセスノード)
1.6nmプロセスノード(A16プロセスノード)というのは、TSMCの現在最高レベルのHopper H100が採用している5nmプロセス(N5)よりもさらに進んだ製造技術を指しています。具体的には、プロセスノードが小さくなるほど、以下の点で優れた性能が期待されます:
エネルギー効率: トランジスタが小さくなることで、より少ない電力で動作でき、これにより、消費電力が減少し、同じ性能であればよりエネルギー効率の良いチップを作ることが可能。
パフォーマンス向上: より多くのトランジスタを同じチップ上に配置できるため、計算能力が向上する。特にAIアクセラレーターのような用途では、計算性能の向上が大きなメリットになります。
チップサイズの縮小: より小さなプロセスノードを使用することで、同じ機能を持つチップをさらにコンパクトに設計でき、これにより、デバイス全体の設計の自由度が上がります。
TSMCの1.6nmプロセスノード(A16)は、現在主流のN5やこれから普及が進むN3よりもさらに進んだ技術だから、理論上、より高性能で効率的なチップを作ることができます。つまり、OpenAIがこの最先端プロセスを使うということは、NVIDIAのH100よりもさらに強力なAIアクセラレーターを作ろうとしているという事です。
注02:Broadcom(ブロードコム)とは
半導体とインフラ技術を提供する大手企業で、データセンター、ネットワーキング、通信機器、ストレージ、そして無線通信など、幅広い分野に製品を提供しています。
強み: 特に通信やネットワーキング、データセンター向けのチップ設計に強みがあり、Wi-FiチップやBluetoothモジュール、光通信デバイス、そしてネットワークインフラに欠かせないスイッチングチップなどの分野で世界的に知られています。
関連性: Broadcomは、AIインフラやデータセンター向けの技術に特化しており、OpenAIが必要とする高性能なデータ処理チップの設計において重要な役割を果たす可能性があります。
注03:Marvell(マーベル)とは
Marvellは主にデータインフラ用の半導体ソリューションを提供している会社で、特にストレージ、ネットワーキング、通信、AI、クラウドデータセンター向けの技術に強みを持っています。
強み: Marvellは特にデータストレージ、エンタープライズ向けネットワークチップ、5G通信、AI向けの半導体ソリューションに注力している。彼らの技術は、データの伝送速度や処理能力を高めるために非常に重要です。
関連性: OpenAIのような会社がAI専用チップを開発する場合、Marvellのネットワーキングやデータ処理技術が大きな役割を果たすことが期待されます。
TSMCの熊本工場はOpenAIの開発チップを生産できるのか?
OpenAIが発注している1.6nmプロセスノード用の工場が日本に建設される可能性について考えると、いくつかの要素が関係してきます。
1. 技術的なハードル
1.6nmプロセスノードは、非常に先端的な技術で、今のところ世界でもごく限られた工場でしか製造できないレベルのものです。現在TSMCの熊本工場では、N28(28nm)やN16(16nm)といった比較的古いプロセス技術が使われているので、熊本工場はもっと基礎的なプロセスに特化しているのが現状です。
先進的なプロセス技術(1.6nmなど)は、台湾やアメリカの最先端の工場で製造される可能性が高く、日本の工場がすぐにその役割を担うとは考えにくいです。
2. 日本の役割
日本の半導体工場(熊本工場を含む)は、比較的成熟した技術である28nmや16nmのプロセスは自動車や家電などの産業で広く使われるプロセスだから、日本の製造業との相性が良いです。
ただし、日本政府は、半導体分野で先端技術を導入し、国際競争力を高めたいと考えているので、今後、1.6nmのような先端プロセスを取り入れる動きが出る可能性も十分あります。
3. 将来的な展望
日本の政府が積極的に半導体産業の育成を進めているため、将来的にはOpenAIが1.6nmプロセスノードを発注しているような高度な技術を扱う工場を新たに建てる可能性があります。
4. 地政学的な要因
半導体製造の最先端技術は、台湾が中心であり続けているが、地政学的なリスク(特に台湾海峡の問題)を考慮すると、TSMCが生産能力を他の地域に分散させたいという意図が強まる可能性もあり、日本がこのような先端的な工場を受け入れる候補地になるかもしれません。
アリゾナ州のTSMC工場について
TSMCはアメリカにも工場を建設しています。最近の重要な動きとして、アリゾナ州に新しい半導体製造工場を建設しているんだ。このプロジェクトは、アメリカ国内で先端の半導体製造能力を確保するために進められていて、地政学的リスクに備える目的もあります。
アリゾナ州の工場は、TSMCが建設を進めている最先端の製造施設で、5nmプロセスノードでの生産が行われる予定です。
さらに、TSMCはアリゾナ州に3nmプロセスノードの生産能力も追加する計画を発表しているため、今後さらに高度なプロセスノードでの製造が可能になるかもしれません。
このように、TSMCは台湾以外にも、特にアメリカのような戦略的な場所に工場を展開することで、地政学的なリスクに対して備えようとしているのです。アメリカは自国内での半導体生産を強化するために、政府レベルでも支援を行っており、TSMCのアリゾナ工場はその一環となっています。
これにより、もし台湾での生産に何らかの問題が発生した場合でも、アメリカや他の地域で供給を続けることができるような体制を整えているのです。