東大×生成AIシンポジウムにOpenAI日本語担当シェイン・グウ氏登壇
シェイン・グウ氏は「第1部:生成AI が切り拓く未来」に登壇されました。
第1部:生成AI が切り拓く未来
司会/モデレータ:宮川 美津子(TMI総合法律事務所 パートナー弁護士)【パネリスト】
西村 康稔 経済産業大臣
孫 正義 ソフトバンクグループ株式会社 代表取締役 会長兼社長執行役員シェイン・グウ(Shane Gu)OpenAI ChatGPT開発チーム幹部
松尾 豊 東京大学大学院工学系研究科 教授(AI戦略会議座長)
当日の入場は招待者のみでしたが、シンポジウムの動画は東大工学部ウェブサイトにて公開されました。
限定公開とありますので、見えなくなるまでここに掲載しておきます。
シェン・グウ氏の語った内容を要約しておきます。
AIの内在的知能と外部的知能、そしてChatGPTの進歩
OpenAIのシェイン・グウ氏は、AIには「自動的な内在的知能」、「能動的な外部的知能」の二つの要素があると指摘しました。内在的知能は、AIが世界を観測し予測を立てる能力です。一方、外部的知能とは、AIが自分の行動により自らが描いた未来を実現する能力を指します。現在のモデル(例えばGPT)は、大部分が内在的知能を強調し、自動的にデータから学習しています。
しかし、ChatGPTのような最新のAIモデルは、人間と共に働く新しい道を切り開いています。これは人類史上初めての試みで、AIが人と共に生活し、働き、研究し、新たな発明をするという新時代の幕開けを意味します。そして、この共創によって生成される新たなデータを通じて、AIがどのように進化し続け、人間がどのようにその進化をナビゲートし続けるかが、今後の大きな課題であり興奮点であるとグウ氏は語ります。
日本と生成AIの展望
OpenAIのシェイン・グウ氏は、日本生まれの中国系カナダ人であり幼少期はドラえもんを見て育ったと言います。文化的にAIに親近感を覚える土壌が出来上がっているため、日本はAIの開発にとって重要な役割を果たせると考えています。その理由は、日本が持つ積極性と慎重さのバランスと、それに対する世界の信頼です。OpenAIは日本にカントリーマネージャーを任命し、これは日本が社会実装のバランスにおいて既に世界の信頼を獲得している証となっています。
人材インフラと未来への影響
最後に、グウ氏は人材インフラの重要性について触れました。OpenAIの有名な研究者でありサム・アルトマン氏との共同経営者でもあるイリアス・サスケバー氏は、7年前からGPT-4のモデルについて重要なのは人材インフラにあると語っていたそうです。また、我々はみんな能動的な知性体であり、自分の行動によってどのように世界の未来に影響を与えるかが根源的な動力であると述べ、現在が大きな転換点であり、どのような行動をとるかが未来の形を変えると強調しました。
サム・アルトマン氏来日時のシェイン・グウ氏インタヴュー
一回目のサム・アルトマンCEOの来日の時にインタヴューを受けていたのが記憶にあたらしく、ドラえもんを例に挙げ「日本人とAIは親和性がある」と語っていました。
シェイン・グウ氏は東大松尾研所属
「生成AI が切り拓く未来」に登壇する東大におけるAI研究の第一人者、松尾 豊教授の東大松尾研究室客員准教授でもあります。
2018年ケンブリッジ大学で博士号を取得後、2019年から2020年までスタンフォード大学客員研究員を経て、東大准教授へ。2015年から2022年まではGoog,e Brainの研究員でもありました。OpenAIのChatGPT強化学習リーダー兼日本語担当となったのは2023年1月からです。
AIの父と呼ばれるジェフリー・ヒントン博士から教えを受けています。
本郷バレーを牽引するAIスタートアップ
松尾研とシェイン・グウ氏が中心となり日本でのAIの開発を進めているもよう。
シェイン・グウ氏をはじめとする移民の力
こちらの記事ではアメリカにイノベーションを起こす移民たちについて書きましたが、日本のスタートアップにおいても外国人が大いに技術革新に関与しています。
サイバーエージェントや楽天、ヤフーなどの採用には国籍を問わない採用が行われています。また、スタートアップ企業も採用に国籍は問われません。むしろ英語が話せない事がハンディキャップとなり、優れたデベロッパーで有っても採用されない事が多いです。
ウィークリー落合でのシェインさん
こちらはニュースで報道される前の落合先生との対談動画です。NewsPickes有料会員の方は95分のフル動画が見れます。
彼は2022年、東大の松尾研などの論文で、「一歩一歩考えてと言うプロンプトとを与えるだけで理解の精度がぐんと上がる」という事がわかった時に一番ワクワクしたと言っています。
シェイン・グウ氏が分析するそれぞれの時代のリーダー
シェイン氏は、我々が新しい視点で見れば、現在の日本は興味深いと述べています。
2006年から2014年は、パイオニアの時代でした。これは、人々が彼らをばかにしている中で信念を持って開発を進める本物のパイオニアたちが登場した時期で、OpenAIのイリアさんなどがその一例です。真剣な信念と高度なプログラムスキルが必要とされました。
2014年から2018年は、アルゴリズムと深層学習研究の時代でした。特にトランスフォーマーの開発後、スケールアップの取り組みが主流となりました。この時期、OpenAIは主役となったといえるでしょう。
2018年から2022年は、アーキテクチャーとスケーリングの研究の時代でした。Pythonの便利なフレームワークが誕生し、アルゴリズムの革新が爆発的に進みました。この時期には、数学とプログラミングのバランスを理解し、新しいことを試すオープンマインドな人々が注目を集めました。シェイン氏自身もこの時期に名を馳せました。
2022年からは、アプリケーション・ビジネスデベロッパー、UXデザイナー、クリエイターが主役の時代となりました。これは特に日本が得意とする分野です。これまでは数学、プログラミング、経験が重要でしたが、AIが自然言語を話せるようになり、誰でも何かを生み出すことが可能になりました。シェイン氏は、日本が優れたクリエイティブのセンスを持ち、他とは異なる視点で面白いものを生み出す能力を持つ国であると考えています。例えば、Twitterで人気のある日本人はGPTと上手に会話するスキルを持ち、GPTに対するプロンプトエンジニアリングに長けています。このような人々は、シェイン氏が雇いたいと考えるほどの才能を持っています。
そして、シェイン氏は今後日本語のパラメーターを増やすために出版社と提携し、ジョジョの奇妙な冒険"などの漫画の擬音語をAIに学ばせたいと考えています。AIが人のアシスタントとなり、人々が実現したいことを支える存在になることを望んでいます。シェイン氏自身も毎日ChatGPTにプログラミングを教そわっているとのことです。
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