GoogleとFacebook、広告市場の秘密契約で米国政府から訴訟へ
下記の裁判の経過によると、「Jedi Blue」という闇の契約で複数の州の検事総長とアメリカ連邦政府が共同でGoogleとFacebookを相手取り、独禁法の疑いで起訴を起こしました。
GoogleとFacebookの闇の契約「Jedi Blue」
「Jedi Blue」という闇の契約とは
「Jedi Blue」という闇の契約に関しては、これはGoogleとFacebook(現在のMeta)が広告業界において結んだとされる秘密の取り決めです。この契約は、両社がデジタル広告市場での競争を避けるために協力したとされています。
具体的には、Googleが自社の広告オークションシステムで有利な立場を保つために、Facebookに対して特別な取引条件を提供するという内容です。広告市場における透明性と公平性が欠如しているという批判があり、この取引が市場競争を阻害したとして、反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いで訴訟が起こされています。
「Jedi Blue」契約は独禁法にあたる
「Jedi Blue」の契約が問題視されているのは、両社が協力して広告競争を操作し、他の広告事業者やプラットフォームに不利な状況を作り出した可能性があるためです。このような契約は、自由市場における競争を歪め、広告料金の上昇や選択肢の減少を引き起こす可能性があります。
広告ビジネスにおける巨頭企業の支配
この契約に関する詳細が裁判の場で初めて明らかにされ、Googleに対する反トラスト法に基づく裁判で証拠として提出されました。また、Facebook(Meta)がこれに関連する保護命令を求めましたが、裁判所はそれを却下しました。このため、今後さらに詳細が公開される可能性が高く、両社がどのように市場を操作しようとしたのかが注目されています。
この契約は、広告ビジネスにおける巨頭企業の支配力とそれによる市場の歪みがいかに問題視されているかを示しています。
それでは以下、Trial Update, September 13: Case moves at warp-speed, as we hear about FB and Google's secret Network Bidding Agreementの内容を要約して解説していきます。
FacebookとGoogleの秘密のネットワーク入札契約事件超高速での裁判の最新情報
はじめに
長い一週間が終わり、ブリンケマ判事は裁判を迅速に進めています。彼女はヘッダービディングに関する多くの証言を聞いた後、両陣営に対して論点を簡潔にまとめるよう求めました。米国司法省(DOJ)は当初、自分たちの主張に3週間を予定していましたが、現在ではその半分程度で済むと予想しています。来週の月曜から木曜の午前9時には、Googleの現職または元社員の証言が予定されています。
本日は6人の証人から証言を聞きました。
トム・カーショー氏(元Magnite CTO、Prebid.org共同創設者)の証言
カーショー氏の証言は続きから始まりました。Google側は、PrebidやヘッダービディングがAdXやDFPへの依存を回避できる有力な代替手段であると位置づけようとしました。しかし、カーショー氏は、パブリッシャーがAdXからの需要を無視することは「飢え死にする選択」と同じだと述べました。つまり、パブリッシャーがPrebidの需要だけを選ぶことも可能ですが、それではビジネスが成り立たないと説明しました。また、小規模な事業者が自力でJavaScriptをインストールすることは現実的ではなく、直接販売の取引を管理するためにもアドサーバーが必要であると指摘しました。
クリス・ラサラ氏(元Googleグローバルコマーシャライゼーションマネージャー)の証言
次に元Google社員のラサラ氏が証言に立ち、多くの不利なメールが提示されました。
ディスカウントレビューグループの分析:約4,000のパブリッシャーのうち、13社のみが割引を受けており、20%の手数料ではなく平均19.8%を支払っていました。
価格競争からの保護:Googleは「AdWordsからの独自の需要があるため、価格競争から保護されている」との内部認識がありました。
32%のAwBid手数料:この点については混乱があり、専門家の解説が必要です。
アドエクスチェンジビジネスの価値:ラサラ氏は、AdXに20%の価値はなく、市場が独自の需要のために高い手数料を許容していると述べ、アドエクスチェンジビジネスを「コモディティ化」すべきだと提唱していました。
他のエクスチェンジとの手数料差:Googleは他のエクスチェンジの2倍の手数料を取っていることを内部で認識していました。
透明性への要求:広告主の1ドルあたりの費用の内訳を示し、中間業者が過剰なシェアを取っているとの懸念が示されました。
アドサーバーの重要性とヘッダービディングの脅威:ヘッダービディングがアドサーバーの必要性を無効化し、Googleが実際に競争しなければならない状況を生み出すと内部で議論されていました。
クロスエグザミネーションでは、市場の定義に焦点が当てられ、FacebookやAmazonとの競争が主張されました。ブリンケマ判事は一度、証拠に対する異議についてラサラ氏が「異議あり」と答えたことに場内が笑いに包まれました。
ルーク・ランバート氏(OMDチーフイノベーションオフィサー)の証言
ランバート氏の証言は短く、資料も提示されず、市場の定義に焦点が当てられました。
アトリビューションとメディアミックスモデリング:最適化はチャンネル内で行われると説明しました。
デジタルディスプレイの定義:Google側は米国陸軍のキャンペーン資料を用いて、デジタルディスプレイがオープンウェブディスプレイ以上のものを含むと主張しました。
アルノー・クレプ氏(Equative CEO)の証言
クレプ氏の証言は書面によるもので、多くの点で以前の証人の見解を再確認するものでした。
Equativeの事業:同社は小規模なアドサーバー、SSP、DSPを運営しています。
DFPとの競争の困難さ:需要の問題や高い切り替えコストのため、DFPと実質的に競争することは不可能だと述べました。
AdXの優遇措置:Google Adsの需要へのアクセスやDV360によるAdXの優遇など、Googleが自社のサービスを優先していると指摘しました。
大手代理店との取引:大手代理店はGoogleとのボリュームディールを持っており、DV360やAdXを使用するインセンティブがあると述べました。
ブライアン・ボーランド氏(元Metaパートナーシップ製品マーケティングVP)の証言
ボーランド氏はFacebook Audience Network(FAN)について証言しました。
オープンウェブディスプレイからの撤退:FANは2019年にオープンウェブディスプレイから撤退しました。
アドサーバーやアドエクスチェンジの計画:FANはアドサーバーやアドエクスチェンジの開発を検討しましたが、進めませんでした。
Googleとのパートナーシップへの懸念:GoogleがパブリッシャーとFacebookの間に介在することで、FANが不利になる可能性を懸念していました。
ヘッダービディングの効果:ヘッダービディングにより、AdXのインプレッションシェアが半減し、Googleの独占が脅かされると内部で認識していました。
ネットワークビディング協定(通称:ジェダイ・ブルー):Googleが「ラストルック」を削除するために、FANに15%のメディア費用を要求したという内部文書が提示されました。Google側はこの証言に異議を唱えましたが、ブリンケマ判事はボーランド氏の関与を確認し、証言を認めました。
クロスエグザミネーションでは、Googleが直接的にFANのオープンウェブディスプレイからの撤退を引き起こしたわけではないことが確認され、市場の定義に関する議論が続きました。
ブライアン・オケリー氏(Scope3 CEO、元AppNexus CEO)の証言
最後にオケリー氏のビデオ証言が始まりました。彼は広告技術の歴史について説明し、特にDoubleClick買収前の状況から話を始めました。
ユーザーデータの重要性:Googleの優位性におけるユーザーデータの役割を詳細に説明しました。
ヘッダービディングの普及:2014年頃からパブリッシャーが収益増加の可能性に気づき、ヘッダービディングが普及し始めたと述べました。
オケリー氏の証言は途中で終了し、続きは後日となりました。
来週の予定
来週は数名の専門家と業界関係者、そしてGoogleの現職および元社員からの証言が予定されています。
月曜日:ニール・モーハン氏(現YouTube CEO、元DoubleClick出身で広告事業に従事)
火曜日:ニルマル・ジャヤラム氏(シニアエンジニアリングディレクター)
水曜日:スコット・スペンサー氏(元Google社員、元DoubleClick、元製品管理VP)
木曜日:ジョナサン・ベラック氏(元Google社員、プロジェクト管理ディレクター)
オケリー氏のビデオ証言の続きは未定ですが、来週中に再開される予定です。この訴訟を受けて、Alphabetの分割案がますます進みそうです。
独占禁止法によるAlphabet分割検討
米司法省による分割検討
米司法省がAlphabet傘下のGoogleの分割を含む選択肢を検討していると報じられています。これは、先週の連邦地裁の判断を受けたものです。地裁は、Googleがオンライン検索市場を違法に独占し、反トラスト法(独占禁止法)に違反していると判断しました。
検討されている選択肢
分割以外にも、以下のような選択肢が検討されているとされています:
Googleに競合他社とのデータ共有を義務付ける
人工知能(AI)製品での不当な優位性を防ぐ措置の導入
基本ソフト(OS)「Android」の売却
検索広告プログラム「AdWords」の売却
ウェブブラウザー「Chrome」の売却
市場への影響
この報道を受けて、Alphabetの株価は2.3%下落しました。
今後の展開
米司法省の報道官は、まだ何も決定されていないと述べています。現在、裁判所の判断を検証しており、法的枠組みに沿った適切な措置が検討されるとしています。この分割案は、Googleの独占状態を解消し、オンライン検索市場の競争を促進することを目的としています。しかし、具体的な実施方法や時期については、まだ明確になっていません。今後の司法省の動向や、Googleの対応が注目されます。