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サム・アルトマンが親友ブライアン・チェスキーとAspen Ideasに登壇

サムとブライアンの出会いは、サムがYC(注01)のCEOであった頃、ブライアンたちがAirbnbをスタートアップとして立ち上げた時にシードアクセラレーターとして関わったことから始まります。それ以来、旧友としての関係が続いていますが、ブライアンはサムが突然OpenAIを解雇された際に、サムを奮い立たせ、冷静に何をすべきか計画を立てて彼を支えました。そんな二人がAspen Ideas Festival(注02)において同時にNBCニュースのレスター・ホルト氏のインタビューに呼ばれているこの対談は、Airbnbホストにとってこの上なく興味深い内容です。ここでは彼らの生の会話を引用しながら、重要な部分を解説していきます。

※注01:YC(Y Combinator)とはシリコンバレーに本拠を置く有名なスタートアップアクセラレーターで、2005年に設立されました。YCは、初期段階のスタートアップに対して資金提供、指導、ネットワーキングの機会を提供し、成功へと導くことを目的としています。AirbnbやDropboxなど、数多くの成功企業がYCのプログラムを経て成長しました。
※注02:Aspen Ideas Festival(アスペン・アイデア・フェスティバル)は、アメリカのコロラド州アスペンで毎年開催されるカンファレンスです。このフェスティバルは、Aspen Institute(アスペン研究所)とThe Atlantic誌が共同で主催しており、世界中から著名な思想家、リーダー、専門家が集まり、多岐にわたるテーマについて講演やディスカッションを行います。


AGI(汎用人工知能)の到達点はイメージしていたものとは違った

冒頭で特異点(シンギュラリティ)について質問されたサムはこう答えています。

以前は、我々はAGI(汎用人工知能)の到達点について話していましたが、それはあまり明確でない概念でした。今では、それは連続した閾値の一つであり、システムは新しい能力を次々と獲得していくと考えています。

サム・アルトマン

以前はシンギュラリティ(技術的特異点)が突然起こり、全てが一瞬で劇的に変わると考えられていました。しかし、現在の理解では、技術の進化は一連の段階を経て徐々に進むものであり、さまざまなレイヤーでグラデーションのように変わっていくと捉えられています。

この考え方では、以下のような点が強調されます:

  1. 段階的な進化:AIの能力は段階的に向上し、徐々に新しい能力を獲得していきます。それぞれのステップで新しい技術や知識が追加され、全体としての能力が向上します。

  2. 連続的なフィードバック:社会やユーザーからのフィードバックを受け取り、それを元に技術を改良し続けることが重要です。このフィードバックループにより、技術の進化が現実のニーズや問題に対応しやすくなります。

  3. 多層的な変化:技術の進化は一つの分野やレベルだけでなく、さまざまなレイヤーで起こります。例えば、自然言語処理、画像認識、ロボティクスなど、異なる分野での進化が相互に影響し合いながら進みます。

  4. 社会との協調:技術の進化に伴い、社会全体での議論や調整が必要です。倫理的な問題や規制の枠組みを考慮しながら、技術を導入していくことが重要です。

AIが多様なデータを学習することでスケールアップする現象

サムは医療現場におけるAIの学習をあげています。

現在、Calor HealthというパートナーがGP4を使って癌のスクリーニングと治療プランを行っていますが、将来的には癌の治療法の発見にも役立つかもしれません。このように、一連の閾値を超えることで、コンピュータと自然言語で対話し、理解し、助けてもらえるという大きな進歩がありました。

単一モデルが異なる種類のデータを学習すると、異なる情報ソース間での関連性を理解し、より複雑な推論が可能になります。例えば、画像データとテキストデータを組み合わせて学習することで、画像キャプション生成や画像からの情報抽出がより精度高く行えるようになります。サムがあげたように医療分野においては、画像データ(レントゲン、CTスキャン)とテキストデータ(電子カルテ)を組み合わせて、患者の診断と治療プランを統合的に提案する事ができるようになります。

Airbnbは単なるOTAを脱却するためAIスタートアップを買収

OTAとはインターネット上だけで取引を行う旅行会社のことですが、Airbnbは創立当初からBooking.comなどの単なるホテルの検索・予約サービスを考えていた訳ではありません。

今日のAirbnbは、都市名を入力して家を見つけ、予約するというものです。これは過去20年間、インターネットが動いてきた方法です。しかし、将来のシステムはあなたをより良く理解するようになるでしょう。それが本当の約束です。コンピュータがあなたを理解し、『レスターさん、あなたは誰で、何を望んでいるのですか?あなたの夢は何ですか?どこに旅行したいですか?』といったことを尋ね、実際に理解して、あなたに合った人やコミュニティ、サービス、体験などをマッチングすることができるのです。そうすれば、世界中どこでも旅行し、生活することができるでしょう。これはAirbnbの利用法ですが、ほとんどすべての業界がAIによって再構築されると思います。

ブライアン・チェスキー

Airbnbは、近年AI技術の活用を強化するためにAIスタートアップを買収しています。その一例は下記の様な会社です。

  • Dynamic Yield:パーソナライズドマーケティングプラットフォームを提供する企業で、ユーザーの行動に基づいて最適なコンテンツやオファーをリアルタイムで提供します。

  • Trooly:信頼性スコアリングを行う企業で、ゲストやホストの背景チェックや信用度評価を行います。

AIは善なのか災なのか?

2008年頃には無垢に善だと信じられていたテクノロジーの変様についてブライアンとサムが語っています。

私がサムに会ったのは2008年で、シリコンバレーに来たとき、テクノロジーという言葉はほぼ辞書的に『善』を意味していました。Facebookは友達の写真をシェアするためのもので、YouTubeは猫の動画、Twitterは今日の予定を話すものでした。そして、一般的な無垢さがあったと思います。
しかし時間が経つにつれ、私たちはあることに気付きました。テクノロジーは道具であり、スティーブ・ジョブズが言ったように、彼はすべてのコンピュータに取っ手を付けました。なぜなら、窓から投げ出せないコンピュータは信用するなと言ったからです。これらは道具であり、私たちがそれを支配するのであって、道具が私たちを支配するのではありません。しかし、何百万もの人々の手に道具を渡すと、予想しなかった方法で使われることがあります。この新しい世代では、私たちは前の世代の多くの教訓を学んだため、より冷静で現実的になっていると思います。テクノロジーは主に良い方向に使われることが多いですが、常に予期せぬ結果があります。
今回は、サムが非常に慎重であり、この技術がどこに向かうのかについて全く楽観的ではなく、政府に対しても実際に規制が必要だと訴えているのを見てきました。

ブライアン・チェスキー

レスター・ホルト氏の「最近の悪い報道についてお聞きします。スカイの声についての問題がありますが、これらのことは避けられなかったのでしょうか。この技術が成熟するにつれて、リスクは明らかでしたよね?」との問いに対しては、サムは下記の様に非を認め、社会・政府との連携の必要性を語っています。

ディープフェイクや顔の入れ替えなどの技術が可能になることは避けられませんでした。そのため、当然そのようなシステムが存在することになります。しかし、ここで社会と政府が役割を果たすべきだと思います。
これは米国だけでなく、今年の他の多くの選挙でもAIが重要な技術要素になると思います。正確な情報の提供と、過去の技術プラットフォームや選挙サイクルで見られた問題を避けることが重要です。また、ディープフェイクを防ぐことも重要です。これらは今選挙サイクルで私たちが最も重視している課題です。また、人々がどのようにこの技術を悪用しようとするかについては、まだ完全には把握できていない部分もあるかもしれません。そのため、選挙に近づくにつれて、技術の悪用を防ぐために非常に緊密なフィードバックループが必要になるでしょう。

サム・アルトマン

サムがOpenAIを更迭された時、ブライアンが彼を助けた理由

レスター・ホルト氏から、OpenAI解雇について話しを振られ、サムは下記の様に答えています。

理事会が私を解雇し、復職するまでの一連の出来事について言えば、ブライアンはその間に大変な助けとなりました。それは明らかに非常に痛ましい経験でしたが、なぜ不安レベルが非常に高かったのかは理解できます。以前の理事会のメンバーはAIの継続的な開発について不安を感じており、私や私たちがやっていることについて何らかの感情を持っていました。私は彼らが行ったことや発言には強く反対しますが、彼らが未来について不安を抱き、良い結果を得る方法を模索していたことは理解しています。

新しい理事会には非常に満足しています。彼らは建設的で協力的、経験豊富で強力なメンバーであり、以来非常に生産的な期間となっています。しかし、その一連の出来事を通過するのは恐ろしい経験でした。特にその瞬間は狂気の沙汰のようで、それをどうにかして元に戻そうと必死でした。ブライアンは信じられないほどの助けとなりました。しかし、その後、感情的なショック状態の中で何とか立ち直らなければならなかった期間は本当に辛かったです。

サム・アルトマン

また、「サムが破片を拾い集めている間、ブライアンは電話をかけていましたね。どういうことか説明してください。」との問いにブライアンが下記の様に答えています。

ある人からサムがオープンAIから解雇されたというメッセージを受け取りました。『解雇された』と聞いてすぐにサムにメッセージを送りました。彼の返信は5分後で、『非常に残酷だ』と言っていました。『何があったのか』と尋ねたところ、彼自身も完全には理解しておらず、説明もされていませんでした。彼の共同創設者も理事会から除名されており、それは非常に疑わしいと感じました。サムとグレッグと電話で話し、その状況が公平なプロセスではないことを確信しました。特に創業者に対しては、常に公平なプロセスであるべきです。
創業者は非常に代わりが効きにくい存在です。最初の24時間で気づいたことは、サムを擁護する人があまりいなかったことです。私が最も困難な時期に、人々が私を支えてくれたので、私はサムのためにそれをしたかったのです。私たちはいろいろと話し合い、私は『あなたにとって最も重要なことは、知っていることと起こっていることについて完全に透明であることだ』と言いました。しかし、最も驚くべきこと、そして私が彼を本当に擁護したくなった理由は、危機に陥ったときに人の本性が分かるからです。5日間の間にサムが一度も自己保身に走らなかったことに驚きました。彼は常にチームのことを考え、チームにとって何が最善かを考えていました。それが私が彼を助けることに集中した理由です。

ブライアン・チェスキー

サムは突然の解雇を言い渡された時にこんなポストをしています。

それから、ブライアンはすぐにサムに会いにいき彼を奮い立たせのです。その件については下記のNoteに詳しく解説していますので合わせてご覧ください。

サムにとってブライアンは貴重な相談役

サムはブライアンについての評価をこのように述べています。

ブライアンについて非常に評価していることの一つは、彼が最初の1年間に私を助けるためにしてくれたことです。ChatGPTが急速に成長し始めたとき、多くの人が手助けしたいと言ってくれましたが、みんな忙しいのです。でも、ブライアンは毎週3時間私と一緒に座り、リストを作って『今すぐやるべき5つのこと』を教えてくれました。

『ここが遅れている部分だ』『ここが問題だ』『これを積極的にやるべきだ』『これを考慮に入れるべきだ』といったアドバイスをしてくれました。そして、それはほとんどいつも正しかったので、私はただ黙ってそのアドバイスに従うようにしました。

サム・アルトマン

シードアクセラレーター時代にサムが、Airbnbに投資しスタートアップとしては先輩であるブライアンが今度はサムに助言した形です。

元NSA長官の退役米陸軍大将が取締役会にが就任したのはブライアンの入れ知恵?

最近OpenAIは米国サイバーコマンドの司令官およびNSAの長官を務めた退役米陸軍大将ポール・ナカソネ氏を取締役会に迎え入れました。サイバーセキュリティや情報戦略の専門家として知られている彼はの豊富な知識と経験は、OpenAIが直面する高度なセキュリティ課題に対処するための取り組みをしていくと想像できます。この件は、下記のNoteで解説していますので合わせてご覧ください。

サムはこの人選などを示唆するような発言をしています。

最近、ブライアンが言い始めたことの一つは、『おそらく政治や政策について十分に考えていない』ということです。世界がAIについてどう考えるかにとってそれが何を意味するのかを考えるべきだと。『これが雇うべき人々だ』『これが戦略を考えるための手順だ』『これをすべきで、これをしてはいけない』といった具体的なアドバイスをくれました。それは非常に役立ち、ビジネスにとっても非常に重要だと思います。

サム・アルトマン

単に学習データをスケールさせればモデルは成長するのか?

これまで、大規模言語モデルはいかに多くの学習データを学だかによってベンチマークのスペックを押し上げていました。ここにきてマイクロソフトなどが開発する小規模のモデルも良い成果をあげています。この件に関しては下記のNoteの中に説明していますので合わせてご覧ください。

サムは、今大規模言語モデルが分岐点に差し掛かっている事を示唆しています。

これらのモデルがどのように賢くなるかについての未来がどのようなものになるか、まだ分かっていないと思います。永遠にもっと多くのデータが必要になるのか、それが正しいとは思えません。人間が一冊の教科書から学べることと、今のAIモデルが必要とするものは非常に異なります。新しい科学を発明するには、ただ座って考え、いくつかの実験を行う必要があります。それはどの教科書にも載っていない新しいことだからです。ですから、データのトレーニングやモデルの能力向上についての未来の考え方が変わると予想しています。

サム・アルトマン

汎用人工知能(AGI)はゲームチェンジャーになり得るのか?

レスター・ホルト氏の「AGIはゲームを大幅に進化させるもので、コンピュータが私たちができることすべてをできるようになる時点のことを指すのでしょうか?」との問いに対して、サムは以下の返答をしています。

今ではAGIという言葉が多くのことを意味するようになっています。能力が大幅に向上する時期を示すためのロードマップを描くことが業界にとって有益だと思います。人間ができること、新しい科学を創造すること、会社全体ができること、そういったことが含まれると思います。そして、それについて業界全体で共通の認識を持つことが重要だと思います。
我々が話していることの一つは、透明性を持って運営し、人々に知ってもらうことです。AIからAGIへの移行が一つのプロメテウス的な瞬間ではなく、技術の進化の物語と同じように多くのステップがあることを理解してもらうことです。そして、社会を巻き込み、ブラックボックス内での運営を避けることが重要です。未来を制御しているのは一部の人々だけではなく、他の開発者やコンピュータサイエンティスト、研究者、政策立案者に対しても、私たちの進むべきステップを共有し、次に何が起こるかを示すことが重要です。

モデルのベンチマークレースについて

「自分たちがレースに参加していると考えていますか?そして、汎用人工知能に到達するためにそのレースに勝つと思いますか?」との問いに対してサムは下記のように返答しています。

私はこれをレースとは考えていません。確かに、これは非常に魅力的で劇的な表現方法だと思いますが、国家間の競争が発生するかもしれないとは思います。しかし、現在これを開発している企業は、皆、これを正しく行う必要性を感じています。また、ブライアンの指摘の通り、私たちが目指しているのは一つのマイルストーンではなく、技術の継続的な進化です。

私たちは砂を溶かし、トランジスタに変える方法を見つけ出し、オペレーティングシステムを構築し、特定のプログラミング方法を学び、次第に大きくしていきました。そして、これらのシステムをトレーニングする方法を見つけ出しましたが、それらは自律的に動作するものではなく、私たちが以前より多くのことをするために使用するツールです。AIがない状態でコンピュータを使っていたのと同じように、産業革命で機械を使っていたのと同じように、農業を使って時間と空間を得て、以前より多くのことをするために使用するツールです。

これはマイルストーンへのレースではなく、次のステップ、そしてその次のステップと続くものです。ツールはどんどん良くなっていきますが、技術は確実に中立(注03)ではなく、ツールも本質的に中立なものではありません。しかし、ツールを作ることで私たちが持つ影響力は重要であり、それを正しくしたいと思います。

人々はこれらのツールを使って、私たち全員が共に生きる未来を発明するでしょう。ChatGPTが存在する前に一人の人ができたことはすでに印象的な進歩でしたが、GPT-6やGPT-7が出る頃には、一人の人ができることは驚異的に増えるでしょう。それがとても楽しみです。技術を作り、人々がそれを使って新しいものを作り出し、創造的なアイデアを表現し、社会が改善されるというのが、世界が良くなる物語だと思います。

サム・アルトマン

※注03:技術やツールはその使用方法次第でポジティブな影響もネガティブな影響も及ぼし得るため、それを開発・提供する側には大きな責任が伴います。開発者はその影響力を正しく行使し、社会に対して責任ある行動を取ることが求められます。

有害にならないAIを育てるには?

「コンピュータにそれを有害でない方法で教えるにはどうすればいいのでしょうか?ポジティブな価値観を教えるにはどうすればいいのでしょうか?」という問いに対してサムは以下のように答えています。

現在のシステムレベルでは、モデルに特定の価値観を教え、特定の方法で行動させる能力は、私が予想していたよりもはるかに優れています。ただし、誰がその価値観を決定するのか、誰がデフォルトを決定するのか、個々のユーザーがその広範な範囲内でどの程度カスタマイズできるのかという、より難しい質問があります。そのための初期のステップとして、1、2か月前に『Spec』(注04)というものを発表しました。これは、モデルの望ましい行動と、モデルが従うべき価値観を示すものです。これにより、人々はモデルが何か気に入らないことをしたとき、それがバグなのか意図的なものなのかを少なくとも判断できるようになります。そして、時間が経つにつれて、社会がこれらの価値観について議論し、私たちはそれに適応していくことができます。

サム・アルトマン

※注04:Model Specには、AIモデルがどのように行動するべきかを示す具体的なガイドラインが含まれています。例えば、「指示に従ってユーザーに役立つ回答を提供すること」、「人類に利益をもたらすことを目指しつつ、潜在的な利益と害を考慮すること」、「社会規範や法律を尊重すること」などです。

  • 具体的なルール

    • 法令遵守:違法行為を助長したり、促進したりしないこと。

    • 創作者の権利尊重:コンテンツの創作者を尊重し、プライバシーを保護すること。

    • NSFWコンテンツの提供禁止:職場にふさわしくないコンテンツを提供しないこと。

  • デフォルトの行動

    • 善意の推定:ユーザーや開発者の意図を善意に解釈すること。

    • 明確化のための質問:不明確な場合は質問して明確にすること。

    • 助けになるが、過干渉しない:役立つ情報を提供するが、過度に介入しないこと。

    • 公平性と親切の促進:公平性と親切を促進し、憎悪を助長しないこと。

重要なのは社会を置き去りにしないように進むこと

ブライアンがサムに助言している事を語りました。

もし車に乗っているとしたら、車が速く進むほど前方をよく見て、コーナーを予測しなければなりません。この技術は非常に強力であるため、私たちは非常に慎重に取り扱っているのです。2007年や2008年にはこのような慎重さは見られなかったと思います。だから、今は非常に異なる時代です。サムと私が話したことの一つは、他の利害関係者を早い段階で巻き込むことでした。昨年、彼は世界中を回り、人々と会ってフィードバックを得るために教育し、フィードバックを集めるためのツアーを行いました。

重要なのは、社会を置き去りにしないように進むことです。私たちは皆を一緒に連れて行く速度で進むことが重要です。ここにいる全員が参加し、自分の意見を述べることができると感じられれば、恐れることはないと思います。恐れるべきは、理解できないことや、取り残されること、制御できないことです。それが私たちが望まない未来です。また、AIという言葉は恐ろしいかもしれませんが、ChatGPTと言うとそれほど恐ろしく感じません。それは非常に具体的なツールだからです。だから、目の前にあることに焦点を当て、人々を助ける方法を考えるべきです。

今、多くの問題があり、OpenAIは多くの科学研究や発見をリードすることができます。ChatGPTはアーティストにとって素晴らしいツールになるでしょう。Airbnbでは、人々をつなげることができると考えています。孤独という大きな問題を抱えている今、人々をつなげるためにこれを活用できると考えています。結局のところ、技術そのものではなく、その技術を持つ人々が重要です。それは常に人々の価値観と良い人々かどうかにかかっています。

私はこの問題について考えるとき、安全な技術を作る方法を学び、安全な製品を構築する方法を見つける必要があると思います。それには、社会との継続的な対話が含まれます。例えば、『これは予想外の影響を与えた』とか『この重要なことをさせてくれない理由が理解できない』などです。私たちが製品を使う人々や、製品に影響を受ける人々とどのように話し合うかが重要です。

ブライアン・チェスキー

あなたは立ち止まる勇気があるか?

「将来を見据えて、もしそれが一部の人々が言うように恐ろしいものであれば、一歩下がることを検討することはありますか?競合他社が前進しようとする中で、あなたはその瞬間に立ち止まることを準備していますか?」という問いに対してサムは以下の様に返答しています。

もちろんです。私たちは作ったものをリリースしないことや、長期間保留することを選択することがあります。他の企業がリリースするものを私たちはリリースしないこともあります。すべての決定が正しいとは限りませんし、何かを展開してから取り消す必要があるかもしれませんが、展開しないものもあります。

サム・アルトマン

「これらの恐ろしいイメージについて話すとき、マンハッタン計画とAIの進展を比較したことは役立ちましたか?原子爆弾を作るレースのようなものでしょうか?」という問いに対しては、サムは下記のように返答しています。

産業革命にも似た部分があります。しかし、重要なのは、歴史的アナロジーを参考にできる部分とできない部分を明確にすることです。この技術の形態や意思決定、影響は基本的にこれまでのものとは少し異なります。マンハッタン計画とは異なり、これはレースではなく、秘密裏に行われるものでもありません。国同士が協力し、超国家的なグループや機関が同じページに立つことができれば、それが社会にとって最善であり、起業家にとっても200の異なる法律に準拠する必要がなくなるため、非常に重要です。グローバルなフレームワークと協力を確立することが重要です。

サム・アルトマン

国家がAIを危険な方法で使用するリスク

レスター・ホルト氏は「国家について言及されたかと思いますが、国家がこの技術を危険な方法で使用するリスクはありますか?」という踏み込んだ質問をしました。サブライアンは下記の様に返答しています。

もちろんあります。この技術を誰の手に渡すかについては非常に注意が必要です。例えば、サムが早期に開発したがリリースしないことを選んだ技術の一つに声のクローン技術があります。これは他人の声をキャプチャできる技術ですが、選挙の妨害や重大なセキュリティリスクを引き起こす可能性があるため非常に危険です。こうした技術が誰の手に渡るのかを考えることが重要です。魔法のランプから出た精霊のように、この技術が制御不能になる可能性があるため、非常に慎重である必要があります。

ブライアン・チェスキー

AIは世界のGDPを倍増させる?

「サム、ある報告によると、汎用人工知能(AGI)が100兆ドルの富を生み出す可能性があると述べたそうですが、その富を再分配するつもりだと言いましたか?それは正確な引用ですか?そして、その考えを詳しく説明してもらえますか?」との問いにサムが答えています。

私が言おうとしたポイントは、世界のGDPを倍増させる可能性があるということでした。これは他の技術革命と一致するものであり、非常に合理的だと思います。私たちはこれが生産性を大幅に向上させる大きな推進力になると考えています。すでに初期段階で人々がこの技術を使用して製品やサービスを大幅に改善しているのを見ています。

サム・アルトマン

「しかし、それが多くの人にどう聞こえるか理解していますか?」との問いに対しては下記のように答えています。

もちろん理解しています。しかし、ここで歴史的なアナロジーが役立ちます。世界のGDPの成長を時間とともに見ると、この技術的なシフトにより年率7%の成長が可能かもしれません。これは非常に速く感じるかもしれませんが、技術の進歩によってそれほど遠くない未来です。10年で倍増することも可能だと思います。

この技術の潜在的な巨大な利益を真剣に受け止める価値があります。人々がこのツールを採用することで、どのように見えるかがより明確になっています。

サム・アルトマン

ChatGPT-5について

続いてレスター・ホルト氏は「ChatGPT-5についてのプレビューを教えてください。この技術の飛躍的進歩と、それが目標達成への道筋をより明確にするのかについてどう思いますか?」という質問をしました。

OpenAI CTOミラ・ムラティが「GPT-5は政府に提出され今、検証がされている」と語ったGPT-5の開発状況については下記のNoteを合わせてご覧ください。

サムの返答がこちらです。

まだわかりませんが、楽観的です。ただし、まだ多くの作業が必要です。大幅な飛躍を期待しています。GPT-4が間違えることや、推論ができないこと、時々完全に的外れなミスをすることがありますが、これが大幅に改善され、より多様なタスクに役立つようになると期待しています。

データの不足について話していましたが、これは多くの要因が絡み合っています。非常に複雑なシステムを開発するのはまだ初期段階です。データの問題もありますし、アルゴリズムの問題もあります。モデルは将来的に比べてまだかなり小さいですが、確実に良くなっていくことはわかっています。改善すべき点は多く、技術的にはまだ初期段階です。初代iPhoneもバグが多かったですが、それでも人々にとって役立つものでした。同じように、今後数年間で世界が劇的に変わることはないと思います。変化は直線的ではなく、ゆっくり進んでから突然大きく変わるでしょう。皆がまだこの技術の使い方を模索している段階です。チャットGPTが登場してから1年半後、あなたのホーム画面のアプリがどれだけAIによって根本的に変わったかを考えてみてください。ほとんどのアプリはまだ根本的には変わっていません。だから、私たちはまだ開発の初期段階にいるのです。Nvidiaと協力して計算能力を高め、サムとそのチームがモデルを開発し、そのモデルの上に構築されるアプリケーションで多くの変化が起こるでしょう。

私たちが話している大きな使用例の一つは科学的発見です。これは薬の研究や社会の大きな問題に対する解決策を提供する可能性があります。教育にも多くのことができるでしょう。世界中の人々にチューターへのアクセスを提供できると考えています。クリエイティブな人々にとっても、この技術はアーティストが参加すれば利用できるものです。私はデザインスクールに通っていましたが、これはアーティストが利用できる技術だと思います。次の3〜5年で多くのエキサイティングな機会が訪れると思います。

サム・アルトマン

サム・アルトマンの5年後

「サム、5年後にどこにいたいですか?」との問いに対しては下記の返答をしています。

同じ道をさらに進んでいきたいです。仕事の最も楽しい部分の一つは、毎日ツールを使っている人々からのたくさんのメールを受け取ることです。『長年抱えていた健康問題を診断できた』とか、『チャットGPTに症状を入力してアイデアを得て医者に行ったら完全に治った』とか、『ずっと学びたかったことをチャットGPTをチューターにして学べた』とか、『開発者として3倍の生産性を発揮できるようになった』とか、『科学者としてこれを使って素晴らしいことをしている』など、そういった話を聞くのが大好きです。チャットGPTを愛している人々の話を聞くのが本当に好きです。5年後には、もっと多くの人々にこのツールを提供し、彼らが自分のベストを尽くせるようにしたいと思います。

サム・アルトマン

これを読むと、さまざまな抱えている訴訟問題やモデルリリースの遅れに対するブーイングがあるにもかかわらず、ChatGTPに感謝している人が大勢いるとの事、サム・アルトマンがそれを糧に開発を続けている事がわかります。

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