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サム・アルトマンがAIに望む人間愛:ハーバードビジネススクールでの対談

OpenAI CEOのサム・アルトマン氏が、ハーバード・ビジネス・スクールのデボラ・スパー氏との対談で、AIの倫理的ガバナンスから科学的なブレイクスルーに至るまでの重要なトピックについて語りました。

アルトマン氏は、特に物理学における科学的発見の加速にAIが果たす役割に期待を寄せる一方、規制、公平性、人間とAIの関係についての懸念にも応じています。「AIが人類を愛すること」という願いを持つ彼の言葉が示すように、AIと人類の関係性に対して深い関心を抱いていることがうかがえます。

以下、この動画で語られた各トピックを解説していきます。


OpenAIが非営利から営利に移行した理由

OpenAIはなぜ非営利から営利の構造に移行したのでしょうか?サム・アルトマン氏がその背景について詳細に語っています。大きな理由は、必要な資金の規模が想像以上に膨大であったためです。コンピュータのスケーリングが重要であることは分かっていましたが、その必要な規模を大幅に見積もり誤っていたとアルトマン氏は述べています。非営利として資金を集める限界を感じた結果、営利に転換する決断をしたのです。

では、営利でなければAI開発はできないのでしょうか?アルトマン氏は、最先端の研究を進めるためには非営利では難しいとしながらも、他にも非営利でできることは確かに存在すると述べています。例えば、政府が同様のプロジェクトを行うことは可能でしょうか?アルトマン氏は「アポロ計画は非常に印象的だった」と述べつつ、理想的な社会であればこうしたAI開発も政府主導で行われるべきだと考えています。しかし現状、そのような体制がない中では、営利企業としてアメリカのプロジェクトとして進めることが最善だと感じています。

また、政府や社会が果たすべき役割についても議論がありました。アルトマン氏は、AIの開発において公平性を確保するためには、社会がその役割を果たすべきであると考えています。しかし、社会というものは単純な存在ではなく、複雑な利害関係者の交渉の結果として成り立っているとも言います。それでも、例えば航空機の安全性の確保に関しては、時間をかけてうまくやってきたと例を挙げています。航空機が安全であるのは、規制と製造業者の責任感、そして政府の関与が合わさった結果です。このように、AIにおいても複数のプレイヤーが協力しながら適切なガイドラインを作り上げる必要があると述べています。

政府はOpenAIのようなAIを開発できるのか?

政府がOpenAIのようなAIを開発することは可能でしょうか?この点についてサム・アルトマン氏は、理想的には政府との真のパートナーシップを望んでいると語っています。これまでのところ、政府との関係は比較的建設的であるとしつつ、規制が多すぎるとイノベーションを遅らせ、規制が少なすぎると別の問題が生じることを指摘しています。このバランスをどこに取るべきかが重要な課題であると述べています。

また、政府のどの部門と協力することが望ましいかについても議論がありました。アルトマン氏は、社会全体に影響を与えるAI技術であるため、エネルギー省(DOE)や国防総省(DOD)など、あらゆる部門と協力することが重要であると考えています。AI技術は社会のあらゆる部分に関わるものであり、それに応じて政府のあらゆる部分にも影響を与えると述べています。しかし、このようなパートナーシップを構築することは簡単ではなく、多くの課題が伴うと認識しています。

規制と政府とのパートナーシップの役割

インターネットが社会全体にどれだけ影響を与えたかを考えると、AIも同様に広範囲に影響を与えることが予想されます。過去にインターネットがもたらした良い面もあれば、間違った部分もあったとアルトマン氏は認めています。しかし、全体として見るとインターネットは大きな利益をもたらしており、ほとんどの人がそれを否定することはないでしょう。

アルトマン氏は、AIにも同じように好きではない部分が生まれる可能性があると考えていますが、総合的には社会にとって大きなプラスとなると信じています。さらに、AIが社会的にも商業的にもどのような影響を与えるかについて、最も期待しているのは科学的発見のスピードを大幅に向上させることだと述べています。これは世界を持続可能により良くしていくための重要な要素であり、それをさらに進めることに非常に意義があると感じているそうです。

AIの安全性と航空産業の類似点

サム・アルトマン氏は、AIの可能性について、特に科学分野での利用に非常に期待していると述べています。科学全般にわたる応用に興奮を覚えている中でも、物理学の全ての問題を解決することに特に関心を持っているとのことです。それは彼自身の強い好奇心からであり、物理学についての理解を深めることで宇宙を操作する可能性が広がると考えているからです。しかし、物理学者の役割がどうなるのかについては、「現存する問題を解決した後には、さらに新しくて難しい問題が見つかるだろう」と述べています。

この議論の中で、ジョン・メイナード・ケインズの「Economic Prospects for Our Grandchildren」という1930年に書かれたエッセイが引き合いに出されました。ケインズは将来、人々は物質的に豊かになり、芸術を作ることに専念するようになるだろうと予測しています。アルトマン氏は、この考えについて「彼はある意味で正しかったが、同時に間違っていた」と述べています。確かに多くの人が今、芸術を創り出し、お金にとらわれずに生活しているように見えるかもしれませんが、それでも人間の本質的な欲求は続いており、未来においても人々は新しい形で競い合うことになるだろうと語っています。例えば、今は家の大きさを比較しているかもしれませんが、将来は「より素晴らしい銀河を所有しているかどうか」を競うかもしれないと冗談交じりに述べています。

科学分野におけるAIの最もエキサイティングな応用

アルトマン氏は、AIがエンターテインメントや感情的なつながりにどのように影響を与えるかについても興味を持っています。特に、AIを感情的なコンパニオンとして受け入れるようになる可能性について語られました。未来におけるエンターテインメントは現在のテレビやビデオゲームとは異なり、AIとのインタラクティブな体験に置き換えられるかもしれません。これにより、ある種の「仲間意識」を得ることができると考えられています。

しかし、アルトマン氏は、本物の人間とのつながりは今後も重要であり、その価値はむしろ高まると述べています。AIとの交流が増える一方で、人間同士のつながりが持つ「本物の」価値は引き続き尊重されるだろうと考えています。AIがもたらす世界は非常にエンターテインメント性に富んだものになるとしながらも、やはり「相手が実在の人間であるかどうか」という点が重要であると感じているそうです。

人間の仕事と自動化の未来

AIと自動化が進む中で、人間の仕事がどのように変わっていくかについても議論がありました。アルトマン氏は、テクノロジーが社会に公平性をもたらす可能性があるが、そのためには適切な「調整」が必要であると述べています。さらに、「もしAIに一つ願いをかけるとしたら、『人類を愛すること』だ」と語り、実際に「Love humanity」と発言しています。この願いを実現するため、AIの行動を特定の方向に調整することが予想以上にうまく進んでいるとも述べています。


今回のサム・アルトマン氏の対談を通じて、AI技術の進化が私たちの日常生活や科学的発見にどのような影響を与えるかが非常に明確になりました。アルトマン氏が強調していた「AIが人類を愛すること」という願いは、技術と人間の関係の核心を突いており、私自身も非常に共感を覚えました。AIはただのツールではなく、人間の社会的価値観やニーズに寄り添う存在であるべきであり、それを可能にするガバナンスと調整が重要です。AIと共存する未来はまだ多くの課題があるものの、アルトマン氏のようなリーダーがこの議論をリードすることで、より安全で公平な社会が実現することを期待しています。

余談ですが、AI第一人者の茶園さんがSUNOで作ったChatGPTソングが可愛かったので、下記に掲載しておきます。是非お聞きください。


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Zun-Beho
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