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自分に対する裏切り



たった一度の念仏で 
八十億劫という重い罪が消えると信じてください

すなわち
一度だけ「宇宙のしくみとはこういうことなのか…」
と信じ理解するだけで
今まで本当の自分を分からないまま
本来の自分を生きてこなかった
自分に対する裏切りという罪
から解放されるのです

この世でいわれるような
法を犯した極悪非道の罪人で
日常では宇宙の流れなど信じないという人であっても
もうすぐ命が終わるかという時期になって
徳の高い人物に出会い
ただ一度そのしくみを理解すれば
数知れない苦しみや
自分に対する罪がなぜ起きていたのか

一瞬にして分かるようになります

まして十回「なむあみだぶつ」と唱え
宇宙の法則に対する理解を深めれば
なぜ自分が苦しんでいたのかが分かり
八十億劫の十倍もの罪から解放され
心が安らかな状態になります

これは十悪・五逆といわれる罪の
軽重を理解しやすくするために
一度の念仏で十悪を消滅させ
十度の念仏で五逆を滅す効力があるという
例え話でもあります


この宇宙の流れというもののすべてを
我々は把握することできません

なぜなら
私たちは阿弥陀仏と呼ばれる宇宙全体の
ほんの一部の存在
だからです

よし何となく分かってきた!
宇宙のしくみを信じてみよう!
という気持ちになった時には
すでに鋼のように強い真理を
手にしていることになります

すべてを理解することはできなくても
自分には存在する価値があるという真理に
すでに気づいている状態になっているのです


我々の寿命が尽きる時には
思い通りにならずに自分を苦しめていた
煩悩や都合の悪いことが
どのようなしくみで起きていたのかが理解でき
実際には生まれることも死ぬこともない
存在という不変の真理
を悟ることができるでしょう

この宇宙の真理が存在しなければ
我々のように罪深い
自分の本来の姿を忘れて生きている人間
どうやって生死の苦しみから
抜け出すことができるでしょうか

今の人生を通して
宇宙の法則を信じていくという姿勢を続ければ
如来の慈悲にも喩えられるこのしくみが
ありがたいものに感じられてくるのです

「なんだ、こういうことだったのか…」
「宇宙の流れとして起きているだけなんだな」
と気づき 信じるだけで
本来の自分という存在のチカラが思い出され
自然に心が楽になっていくのです

もし我々が人生の中で思い煩い
思い通りにならない生死に悩み
苦しむことがあったとしても
この宇宙のしくみを
命が尽きるまで信じていれば
往生という名の気楽な心境に居続けることができます


ただし この世界で起きることは
流れとしてすでに決まっていることなので
念仏をしていれば
すべてが思い通りに運ぶというわけではなく

思いがけないことも起こりますし
病気に苦しめられることもあります

そのような状態の渦中にあっては
心を落ち着かせてこのしくみを思い出し
安らかな心でい続けることは難しいでしょう

このように困難の中にいる間は
このしくみや自分自身のチカラを
どうやって思い出せばいいのでしょうか

苦しみの中に長く巻き込まれ
気楽な境地になることがなければ
その人の存在に価値はないのでしょうか

摂取不捨という阿弥陀仏の願
すなわち 宇宙のすべての存在は
この大いなるしくみの中にスクわれている

という真理からすれば

どんなに人生が思い通りにいかなくても
自分自身の存在に価値を見いだすことができず
宇宙のしくみを信じることがなかったとしても
我々の一生は価値あるものなのです

また この宇宙の流れというものは
自分の人生の終盤を感じ始めた人にとっては
さらにその気づきを深めよう
今の自分のままでいいのだ
という安らかな心境に連れて行ってくれる
有り難いしくみでもあります

今までの自分の悪行や煩悩を
念仏によってすべてなかったことにしようとするのは
宇宙のしくみを信じていない
自分や自我が世界を決めている
と思い込んでいる人の行為です

そのような人は
自分の命が尽きる直前までに
なんとか心を落ち着かせればいいのだろう
自分で何とかできる
などと誤解しているのです
本当の意味では
宇宙の真理を理解しているとはいえません

『歎異抄』第 十四 条


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