掌小説 美魔女
ある晴れた日の夕方、私はいつもと同じ時間に玄関から外へ出てたくさんある花々に水をやるのが日課だ。時間は自分の都合の良い時に……。
「こんにちは」
「こんにちは」
見覚えのある白い小さな顔の男の子は少し奇妙な行動をとる小学生だった。お向かいに入り、レンガの下に何かを隠してみたりとどこかがほかの男児とは違っていた。投稿は地域別に並んで集団登校なのだが、静かでどこにいるのかも知らない。
けれど、下校時はいつも一人なのだ。一年生の時も、そしてその次も。
私ははっとした。そう彼は中学生の制服を着ているではないか。
「おばあさんですか、それともお母さんですか?」
私は意味が分からなかった、こいつは何を言っているのだろうか。いつも意味の分からないことを丁寧語で話すのだが、どの言葉も大人びているが、その場面にはふさわしくなかった。
私には孫はいないのでおばあさんではない、しかし口の悪いそこらへんの一年生には婆呼ばわりされたこともある。
そう、いつの間にか彼らからすれば、私はもうおばあさんなのだ。別に髪が真っ白ということもないのだが、腰が曲がっているわけでもないし。
「さあ、おばあさんではないと思いますが」
そう返事をしながら水を撒いていた。
「そうですね。まだまだいけますよ」
中学の制服を着た小学生のような幼い顔をした小さい男の子はにっこりと笑っていた。これがイケメンなのだが残念だが大学生ならお付き合いしたいところだが、年齢的にはアウトなのでできればもうあまり会いたくはない。不毛な会話はもうたくさんだ。こんな小さい子に(中学生のようだが)まだいけてるのか、いけていないのかを決められるような自分に腹が立つ。
しかし、彼の本当の気持ちがどこにあるのかは誰にもわからない。
了