
70年代の欧州車
ぼくは1970年代の欧州のスポーツカーが好きです。
免許を取って車にのめり込んだ80年代、機会があればオーナーに頼んでむさぼるように乗らせてもらいました(当時手が届く価格ではなかったので)。



この車たちはぼくが免許を取った80年代にはまだ現役で走り回っていました。今ではただの旧車ですが、当時は日本車をはるかに上回るスポーツカーだったんです。
現在から想像するのは難しいと思いますが、その頃の日本のスポーツカーは、シャシ性能という概念が希薄で、吊るしの大衆車に多少性能のいいエンジンをポンと載せただけ、もしくはそれに近い状態でした。
欧州車もエンジンスワップはやります。でもベースになるシャシの出来が違ったと思います。
当時の日本車は峠で乗ると盛大にボディが捻れました。だから飛ばすとよく分からない動きをしました。端的に言うと「飛ばすと怖い」のです。
速く走るのは「勇気の証」みたいな側面があってスリルはあったけど、必ずしも楽しくはなかった。
欧州車は飛ばすと楽しかったですよ。
ごく一部にすごいエンジンを載せてる車もあったけど、ほとんどは大衆車のエンジンだった。それで面白かったのはシャシ性能が良かったんだと思ってます。
もちろん当時のぼくにそんな認識はないです。何の疑いもなく自分の愛車にゴキゲンで乗っていました。ある日、友人のアルファ1750GTVに乗せてもらって衝撃を受けます。
山道を飛ばすという前提で設計されていたのが欧州車、そんなことは想定外なんだと言う日本車、すごくざっくりしたぼくの感想はそんな感じですね。
シャシの強度をコンピュータで解析するようになって、後の日本車はむしろ非常に優れてます。
70年代は設計者が経験値を元にシャシを作っていたのかもしれないですね。そのノウハウが違ったんじゃないかと想像しています。
しつこいようですが70年代の日本車は本当に酷かった。
だからこの時代の欧州車、特にスポーツカーには圧倒的な優位性があったんです。今でも憧れのような感情があります。ノスタルジーですね。
その後、金銭的にも余裕ができて、その時々で買える欧州車に色々乗りました。どれもそれなりに良かったけどかつてのような優位性は感じなかった。日本車は90年代に入って驚異的に進化しましたから。
ある時を境に、現行の車がみんな同じに見えてしまい、それ以降は車熱はすっかり影を潜めました。ちょうど車が必要な環境ではなかったのも手伝い、もう長い間車は買っていません。
それでも若い頃に受けた衝撃は時々表面に出てきます。
これだったら欲しいなと思う車はどれもかつて憧れた70年代のスポーツカーです。
先日、ふと思い立ってアルファロメオ 2000GTVの中古価格を見てみました。
あまり売りに出ていません。あっても「ASK」となっていて価格が分からない。
ふと見たオークションサイトで1975年式を発見。400万円でした。
50年近く前のイタリア車、程度も全くの不明。
長く乗るなら買った値段ぐらいメンテナンス費を覚悟しないといけないかもしれない。補修パーツなんてあればラッキーで値段は言い値でしょうね。ミッションなんて壊そうものなら詰みなんじゃないだろうか…
これはアルファに限らず旧車全般にこんな状態だと思います。
同年式のBMW 2002 tii は500万円程前後、ポルシェ911だと8~900万円ぐらい。
希少モデル(2002ターボとかカレラRSとか)ならともかくベースモデルでこの価格はちょっと高いですよね。
この時代の欧州スポーツカーを買うのは相当な覚悟ができる人か、1千万や2千万の資金が苦にならない人ですね。
ぼくはそのどちらも当てはまらないので、ただ指を咥えて見守るだけです。
ちょっと前まではこんな値段じゃなかった気がするんだけどなあ…
あまり値崩れしない911にしても75年式が900万は高いと思う。新車と違って買えばゴールじゃなく、買った所から散財がスタートするわけですから。
今はバイクに凝っているので大して気になりませんが、10年後バイクに飽きた頃にどうなってるかは興味あります。その頃に値段が落ち着いていたら欲しくなるかも。
ぼくは磨いて楽しむ趣味はないので、もし手に入ったら箱根でがんがん走らせるでしょう。ハイペースで走らせながら当時のエンジニアがどんな意図で設計したのか想いを馳せたいですね。
でもその頃に175/70-13なんてタイヤ売ってるんだろうか……