Vitpilenの乗車姿勢
Vitpilenはハスクバーナが打ち出しているネオレトロ路線のバイクです。テーマはカフェレーサー。
画像を見てもらうと分かりやすいのですが、Vitpilenはシートが極端に高く、逆にハンドル位置は低いです。一般的なネーキッドバイクとはかなり違っていて、スーパースポーツ(SS)のポジションに近い。いくつかのSSと比較しましたがむしろシート位置が高い分ハンドルの低さは抜きん出ています。Vitpilen乗りこなしはこのポジションとの戦いになります。
ハンドルが低いといろいろ不便がありますが、バイクの操作ってハンドルに力を入れちゃダメなので前傾した姿勢を保持しなきゃならない。フィジカルに腹筋背筋が要ります。ずっと力を入れてるのは無理なので随所で力を入れたり抜いたり。筋力だけではなく慣れの問題でもありますね。まずこれに数ヶ月かかりました。
加速してる時は力を抜いてます。減速時に姿勢を保つのは結構しんどい。力を入れたり抜いたりは頭で考えず身体に覚え込ませるのがいいですね。経験的には小さなコーナーが続く峠道をリズミカルに走るのが効果的。飛ばす必要はなくてリズム重視で何度も同じルートを往復すると理屈より先に身体(筋肉)がその感覚を覚えます。
一旦感覚を覚えたら街乗りでも律儀にそれを実践するのが大事。めんどくさくなっちゃっていい加減に走ってるとせっかく会得した感覚もどっか行っちゃいます。これ別にセパハンじゃなくてもバイク乗りならみんなやってる事です。ハンドルが低いとよりハッキリ意識せざるを得ないという話。
何も気にせず楽しく乗るだけならハンドル位置は高い方がいいと思います。では余分に意識してまでセパハンに乗る意味ってあるんでしょうか。
あくまでぼくの場合ですが、いくつかあります。
● 前輪荷重
身体が前傾している分、前のタイヤに荷重がかかりやすい。バイクはほんのちょっと座る位置を変えるだけで動きが変わる乗り物です。前荷重でよりシャープに動かすことが出来るのはとても楽しいです。前ブレーキを残したままコーナーに入っていく時なんかに荷重がしっかりかかっているとタイヤの音まで違う気がします。
● チャレンジ
バーハンドルのバイクでもぐっと前傾すれば同じように前荷重の状態は作れます。むしろ荷重したり抜重したりのコントロールはバーハンの方がずっとやりやすい。それでもやり難い分、セパハンできちんとコントロール出来た時の喜びは大きいです。同じアクションの練習で成功率が上がっていく感覚はやり甲斐さえ感じます。
● 見た目
ぼくは他人と違うバイクに乗っていたい人です。ツーリング先で何台も自分と同じバイクを見るのはちょっと(たまに見るなら親近感も湧きますが)。あとふんわりした話ですが、スポーツバイクは尖っていて(レーシー)ちょうどいいと思います。バイクは「不良っぽい乗り物」でいい気がします。街角に停めた自分のバイクがどう見えるか、乗っている自分がどう見えているか、そういうのは気にする方です。
ぼくは長距離を走らないので「楽に乗れること」がメリットにならないというのがベースになっているのは間違いなさそうです。ロングツアラーな人だと正反対の意見もあるんじゃないでしょうか。
あとSSでロングツーリングをしている人達、これは尊敬に値します。絶対に楽ではないのに「このバイクで走りたい」という熱を感じます。バイク愛は色んな形があると思うけど「どうしてもこのバイクで」は究極の姿じゃないかなと。
Vitpilenには姉妹車としてSvartpilenという車種があってこちらの方が台数はずっと売れてます。同様にネオレトロ路線でこちらはスクランブラーがテーマ。バーハンドルでかなり高い位置にマウントされています。先日、純正スポークホイールをチューブレス加工して貰っている間に代車として貸出してもらいました。
比較画像
Vitpilenとの違いはハンドルとタイヤ(ピレリ・スコーピオン)。
感想を先に言うともう完全に別のバイクです。乗った時の頭の位置が違うので動き方が全く違います。ぼくのバイクよりも軽くひらひらと動きます。そもそも軽いバイクなので相乗効果で軽快感がすごい。ただし前輪の接地感が薄い軽快さです(個人的にはちょっと怖い)。
頭の位置で視界も違います。ずっと遠くを見渡せるし左右後方も見やすい。安全性ってまず視野の広さだと思うのでSvartpilenの方が街乗りやツーリングは向いてると感じます。バイク特有の「後輪に乗っている感覚」はこちらの方が感じやすいですね。断然楽なのは間違いない。
本領発揮の峠道はどうか。これはタイヤが違うので何とも言えません。タイヤを同じ条件に揃えたとしたら、Svartpilenではハンドルが胸に着くぐらい前傾しないとあのピザカッターでピザを切るみたいな前輪の感覚は得られないかも。でも上手な人が乗ったらどちらでも同じ走りが出来ると思いますよ。Svartpilenはハイグリップタイヤを着けてモタードのような乗り方だって出来るのではないかと想像してます。
自分にはできないのであくまで「上手な人が乗ったら」という他力本願な条件付きですが、どちらのバイクも狭い峠道では相当速く走れると思います。ありあまるパワーでアクセルを開け切れないSSに全開でなんとかついて行く、そういうハンドリングだしそういうエンジンだと思います。
いつもの峠道で「まだ行ける」という余裕のパワーで走るのも楽しいでしょうし、ちょうど絞りきった!というジャストな感覚を味わうのもまた楽しい。Vitpilenはどちらかと言えば後者が似合うバイクだと思います。ただそれをやるには腕が要るんですよね・・・泣