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【舞台裏】輝夜姫、5日間25時間の制作秘話

11月1日に野方区民ホールで一夜限りの公演として行われた舞台「輝夜姫」。おかげさまで満員御礼で幕を下ろしました。私としては、2006年以来のストレート舞台の演出でした。本日は公演に絞って少しだけ振り返ってみたいと思います。


■主演はこれがデビュー作となる空手界の若きスター大内美里沙

今回、主演に抜擢したのは、世界空手道大会ジュニアで2回の優勝経験をもつ大内美里沙さん。今回、翁役の植村好宏くんからの紹介で今年の5月にはじめて会いました。偶然にも大学の後輩であった縁もあり、女優の道を進みたいという彼女のサポートを引き受けました。
とはいえ、この世界は意気込みだけではなんともなりません。ほとんど演技という点においては、素人の彼女がどれくらいできるのか、今年の夏にアクションシーンを通してテストしました。
そこで、手応えを感じ、今回、思い切って主役に抜擢することにしました。もともと世界と戦ってきた彼女にとって、中途半端なことをするより、思い切ってプレッシャーのかかるポジションの方が良いと思ったのです。
透明感のあるルックスと、抜群の身体能力は私がイメージする輝夜姫にぴったりでした。今回、そのプレッシャーをものともせず、素晴らしい結果を残してくれました。演技はこれからまだまだ勉強することがありますがアクションに関しては、すでに日本の女優の中でもトップクラスの能力があると思います。これから楽しみな女優さんになるでしょう。

大内美里沙
大内美里沙

■5日間25時間の制作時間は効率とプロフェッショナルを徹底

私は、現在、京都が活動拠点ということもあり、今回は限られた時間での稽古期間となりました。演者の中にもアメリカ在住の志田光や、主演の大内さんも岡山在住なので、いわゆる舞台の常識的になっている一ヶ月のような稽古期間は現実的でないことと、私自身、舞台の稽古はもっと効率的である必要があると思っているからです。
まず原則として、演者は稽古日までにセリフは完全に覚えてもらい、初日から通しで立ち稽古です。アクションもその通しの中で作って覚えてもらいます。通すことで、物語の全体像を全員で理解し、高める効果があります。これは、誰かひとりでも、おぼえていない人がいると、成立しません。そもそもセリフをおぼえることはひとりでできることなので、それを稽古でやる必要はない。
もちろん、台本はおぼえる期間を考慮して書き上げます。
ひとりひとりがプロとして仕事ができるからこそ成立したことだと思います。皆に感謝です。

稽古風景
稽古風景

■アクションから代役、BGM出しまで

私のスタイルは、「すべてに関わる」です。10年にわたる、プロレス、ロック、演劇もハイブリッドショー「魔界」で培ったものです。
以前は、殺陣師にアクションはお任せしていましたが、今はすべてを自分でやるスタイルです。アクションもすべて自分でつくります。私は、アクションも殺陣も習ったことはありません。すべて我流です。もし、他の人の作品を、仕事として演出するのであれば、アクションは殺陣師の方にお任せすると思いますが、自分の作品は隅々まで、自分の創造性を行き渡らせたいと決めています。また、アクションも物語の一部ですから、演出家が自らつくった方が物語としては完成度は上がるという考えもあります。その意味では。劇中にかかるBGMは、私の中では最重要ポイントなので、タイミングや音量にはものすごくこだわりがあるので、これも自分で出します。
よく舞台は演者のものといいますが、そこに私もライブで関わることによって、自分の創造性を作品に最後まで浸透させたい。
また、演者の目線を失わないために基本的に代役も極力、自分でやるようにしています。
今回もいつものスタンスでのぞみました。

輝夜姫の1シーン

■舞台という表現と課題について

いつも考えるのですが、舞台は、我々のような小規模なものになればなるほど、ビジネス的には厳しく、どうしても、そのリスクがチケットに還元されてしまいます。
昨年は赤字を前提に3000円という価格で提供したのですが、やはりビジネスとして赤字ありきという考えは不健全なので、価格については引き上げざるを得ませんでした。
本当の理想は、なるだけお求めやすい価格を実現したい。そうしないと、舞台というビジネスはなくなってしまうようにも思います。
グッズやいろんなサービスを付加して売上単価をあげるのも、やりすぎるのはよくない。そのあたりはもう少し考えないといけないと思います。ここについては10年間つきまとった問題ですが、今回、少し方向性は見えた気がします。

ということで長々と綴らせていただきましが、しばらく舞台演出の機会はないので、今回は少し舞台裏を含めて綴らせていただきました。

あらためてご来場いただいた皆様には御礼申し上げます。

輝夜姫の1シーン

■眞邊明人の公式ホームページ

公式ホームページを開設しました


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