ないものねだり。
Bubbleというノーコードツールが、僕の仕事を支えている。
4年ほど前にプログラミングの独学を始め、3年前、ウェブサイト制作をメインに、フリーランス独立。
2年前に、Bubbleの学習を始めた。
Bubbleを始めてからは、だんだんと仕事の中心がウェブサイト制作から、Bubbleでのアプリ制作に変わってきた。
今では、Bubble以外のお仕事は基本的に受けていない。
だから、Bubbleが僕の仕事を支えているというより、Bubbleが僕の仕事、すべてだ。
フリーランスになってからしばらくはずっと、仕事の浮き沈みがあった。いい時もあれば、悪い時もある。月の売り上げは数万円、貯金を食いつぶして生活をしていたときもある。
そんな状況が、今年に入ってから一変した。
依頼される仕事は徐々に大きくなり、開発・運用しているアプリのユーザー数は、数ヵ月で7千人以上に。
開発規模が大きくなっているので、ひとつのプロジェクトの契約期間は長い。様々なプロジェクトにおいて、僕の時間単価は大きく上がり、これまでよりも少ない稼働時間で多くの売り上げをあげられるようになってきた。
先ほど述べた、一番悪い時と比べると、月の売り上げは20~25倍以上に及ぶ。
しかも、特に誰を雇うこともなく、基本的にはすべて僕が一人でクライアントとのやり取りをし、開発・構築をして納品している。
僕は自宅からパソコンを使って働くエンジニアなので、経費はそこまでかからない。在庫を抱える心配もない。そのほとんどが、収入になる。
最近は忙しくなってきたこともあり、少しお金にも余裕が出てきたので、これまでのオーストラリア生活ではできなかった国内旅行に時々出かけている。旅先で仕事をすることもしばしば。
プログラミング独学を始めたとき、フリーランス独立したとき、Bubbleの勉強を始めたとき。それぞれに思い描いていたような働き方、暮らしを、今はできるようになってきている。
しかし、憧れていたような生活を実際に手にし始めると、今度は毎日、想像もしていなかったようなプレッシャーに押されている。
僕がする一文字の記入ミスが、数千人の顧客データを飛ばすかもしれない。僕が気付かないひとつの小さなバグが、数千万円の損失を生むかもしれない。
僕がするひとつのミスで、クライアントがエンドユーザーに謝罪行脚をしなければならなくなるかもしれない。
そして、一度過去の売り上げを大きく更新すると、売り上げが一番高い月と、その後の月をどうしても比べてしまう。生活には困らないほど十分な収入を得られているのに、数字に追われてしまう。
昨日も確認したはずの会計ソフトを、今日も眺めてしまう。過去の売り上げの遷移、今後の予想を、何度も何度も計算してしまう。
売り上げの浮き沈みはあって当然、それを何度も経験してきたのに、今は以前よりも、良くない意味で、数字に追われている感覚に陥ることがある。
最近、また新たなプロジェクトが始まった。毎回、受けるプロジェクトは、前回よりも規模が大きくなっている。近々もしかすると、行政とも絡むようなプロジェクトが始まるかもしれない。
先日、LinkedIn経由で、シドニーのIT企業のCEOから連絡があり、ぜひとも会いたいと言っていただいたので、一緒にディナーを取りながら色々なことを話してきた。もしかすると、この会社での社員に対する研修を担当させてもらえるかもしれない。
仕事がなくて眠れない日々を長く過ごしていたけど、今は同時並行の仕事がいくつもある。現状はもう、新しい仕事を受けるキャパシティはほとんどない。
それに加えて、各プロジェクトの責任が以前とは比べ物にならないくらい大きくなってきているので、そのプレッシャーで眠れないことが多々ある。
どれだけ忙しくても、この仕事のあと、もし誰からも仕事をもらえなかったら、僕が忘れ去られてしまったらどうしよう、という不安が常に付きまとう。
もし僕のミスが原因で、大きな損失を生んでしまったとしたら。
個人で働く僕に、次はない。
プロフェッショナルの世界は、そんなに甘くない。
しかも、僕は留学生なので、週4日学校に通ってマーケティングを学びながら課題をこなし、学位を取っている最中でもある。
数年前に憧れていた暮らしを実際に手にすると、その時には想像もよらなかったような不安や悩みに、押しつぶされそうになる。
とはいえ、毎日は楽しい。以前より明らかに充実している。
程よい緊張感とともに、成長できている実感がある。
戻りたくはない。
今の自分が誇らしいけど、あの頃の自分を少し懐かしむ日々。