行動概念としてのアート
東北芸術工科大学工芸デザイン学科教授であり、彫刻家、アートキュレーターでもある、深井聡一郎先生のお話を伺った。
アーティスト 深井聡一郎
深井氏は、武蔵野美術大学の彫刻科を卒業後、文化庁の研修員として渡英。帰国後は「AGAIN-ST」という同人会を立ち上げ、作家活動を展開。
同人会では、共同制作や展示、トークショー、メディアのリリースなど幅広く活動を行っている。モノを創るアーティスト、社会に対して表現できるデザイナー、理論と言葉にできる学芸員、というメンバーで運営されており、「創る」だけでなく「伝える」ということも確実に実現できる体制になっている。
講演で紹介されていた、おでんでつくった食べられる小さな彫刻が、かわいくて面白かった。
深井氏は、大学で教鞭をとると同時に、「山形ビエンナーレ」のキュレーターもされている。
「お茶」というテーマで、複数のアーティストがそれぞれ、山形の地元や身の周りにあるものを使ってお茶を入れるという体験を紹介してもらった。
松脂のスモークで香りづけをしたお茶や、地元の雑草で淹れたお茶など。
地域の素材で遊ぶ、ということが1つのアート活動になっていた。
それが地元の人たちにも面白がってもらえた、とのこと。
アートという活動
自分が2022年晩夏に大学のプログラムで和歌山県すさみ町という、太平洋に面した人口約3千人の町に滞在した際にも、地元の雑草で生け花をしたことがある。
すさみ町に行く前に、地元に住んでいる人が「この町には何もない」と言っていたが、
「本当に何もないのか?」
という問いから発した取り組みであった。
日常の当たり前の中にも、切り取り方で面白くなるものがあるのでは、と思いたっての行動であった。
生いけたら面白そうな草花を探す、という観点で町を散策してみると、普段見ているような草花でも、こんな形しているんだ、とか、雑草とひとくくりにしても、それぞれ生えている場所に違いがある、、など面白い発見があった。
そうやって素材を求めて土手を歩いたり、裏路地に行ってみたり、町自体を探索して回った。
雑草を探す、生け花をかんがえる、ことでデッサンをするときのように、すさみ町の風景をありのままに捉えて「観察」することができた。
そして「生け花」というテーマですさみ町を切り取り、自分なりの表現で作品を創ることで、すさみ町の日常から面白さを創り出すことを体験できたような気がする。
「テーマを決めて、切り取って、創ってみる」
人が当たり前だよ、って言いそうなことに問いを立てて
シンプルで分かりやすいなテーマのもと
自分なりに表現をする
アートとは作品だけでなく、こういった行為自体もアートと捉えられるのではないだろうか。