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「一番好きな言葉」から高額療養費見直しまで。初めての予算委員会質疑の舞台裏。

第217回通常国会における初めての衆議院・予算委員会。初日の1月31日に、自民党の質問者として立たせて頂く機会をいただきました。大舞台での初めての機会。40分間の質問を通じて何を訴え、何を引き出すことができたのか。その舞台裏をご紹介します。

衆議院予算委員会(25.1.31)

 
突然の電話から始まった挑戦
 
1月25日(土)、地元愛媛での活動中に携帯が鳴りました。「塩崎くん、予算委員会で質問に立ってみないか」—— 自民党ベテラン議員の斎藤健さんからの突然の電話でした。予算委員会の質問者は基本的に3回生以上が相場と聞いていたので、まさかの指名にびっくり。若手にもチャンスを与え、自民党にも様々な人材がいることを示したいという思いを込めての指名と理解しました。「思い切ってやってくれよ」という言葉に、プレッシャーと同時に大きなチャンスをいただいたことを実感しました。
 

国会審議を支える舞台裏のプロセス
 
予算委員会は国会の表舞台と言っても過言ではありません。中でも基本的質疑は総理大臣をはじめすべての閣僚が出席し、国政全般について問うことができる特別な場。朝9時から午後5時まで、7時間にわたって全閣僚が拘束される重要な委員会です。NHK中継を通じ多くの方が視聴することもあり、国会論戦の中心となる委員会です。
 
土曜日に電話を受けてから準備は猛スピードで始まりました。月曜日夕方までに質問項目を提出し、火曜日には「モントリレク」と呼ばれる各省庁との質問取りが行われます。この「モントリレク」が予算委員会質問の準備の核心部分です。関係する役所の職員が入れ替わり立ち替わり訪れ、時には廊下に行列ができるほどの密度の濃い打ち合わせが続きました。
 
政府側の大臣答弁の準備は本当に大変な作業です。例えば「総理はAIがもたらす便益とリスクのバランスについてどう考えますか」という一つの質問に対しても、

・どこの役所のどこの部署が中心となって答弁を準備するかの分担決め
・過去の国会答弁や公式発言の洗い出し
・関係する省庁間の緻密な協議と交渉
・総理本人の考えの確認

と複雑なプロセスを乗り越えながら短期間で答弁案を詰め切らなければなりません。(最初の担当部署決めが難航する「ワリモメ」という言葉の存在も官僚の友人に教えていただいたことがあります。)

一言一句が政府の公式見解として議事録に残るため、慎重な準備が必要です。国会の「委員部」の皆さんが議員と役所間の円滑な調整を段取りしてくださり、若手官僚が質問者の真意をできるだけ正確に把握しようと熱心にメモを取って準備してくださる姿に、国会質問を支える見えない努力の大きさを実感しました。
 

委員会質問の作り方
 
全閣僚に対してなんでも聞くことのできる特別な40分間。悩みに悩んだ結果、質問項目を考える際に特に重視したのは、以下の3点です。

①    細かい技術的な質問よりも、なるべく国政の重要方針に関係する大局的なテーマを取り上げること
②    正解が一つでなく、政治家の考え方や価値観が滲むテーマを取り上げること
③    これまでの経験や地元の声など、自分ならではの視点を付加できるテーマを取り上げること

厚労大臣政務官として関わってきた社会保障分野の課題、自分が現在も取り組んでいるAIや暗号資産、科学技術イノベーションに関する取り組み、そして地元愛媛で耳にした自然災害への心配や患者団体の皆さまの声。

優秀な事務所スタッフや信頼する仲間の力も借りながら一つ一つ、関係する過去の答弁やデータを調べ、表現を練り、パネルを印刷し、なんとか当日の朝を迎えることができました。

委員会で使用したパネルの例

 
40分の質問で問うた日本の針路
 
本館3階の第一委員室。直前の木原誠二代議士が、得意の経済分野で骨太で深みのある質問をしている後ろ姿を見ながら、緊張が高まります。

「塩崎あきひさ君」

安住委員長に名前を呼ばれ、いよいよ私の出番です。

冒頭、まず石破総理に「トランプ大統領は辞書で一番好きな言葉は「関税」と述べているが、石破総理はどうか」と質問したところ、「ふるさと」という答えが返ってきました。

「まぶたを閉じるとふるさとってのがあって、 人情があって、風光明媚で、やっぱり皆さんそれぞれ心の中にそういうのがあんだろうと思いますけど、私にとってはふるさとっていうのは 1 番美しい言葉でございます。」

石破茂・内閣総理大臣(25.1.31 衆議院予算委員会)

トランプ大統領が「関税」と述べているのとは対照的な回答に、地方創生を重視する石破カラーが表れていました。作曲者が鳥取市の出身だと補足される場面もあり、会場に温かい空気が流れました。

質問では、トランプ政権の急激な政策転換を題材に、日本の国益について大きく7つのテーマについて、石破政権の基本的なスタンスを確認しました。

①    AIに対する法規制の必要性
②    暗号資産に関する税制改正
③    WHOに対する日本のスタンス
④    抗インフルエンザ薬の安定供給
⑤    高額療養費の見直し
⑥    気候変動と排出権取引制度の導入
⑦    第7期科学技術イノベーション基本計画
 
AI規制法案についてはその中身と共に今国会への提出が明言され、暗号資産の税制見直しは金融庁の勉強会で6月までに結論を出すことが約束されました。また、季節性インフレエンザが流行した際に緊急時用の備蓄薬を柔軟に活用する考えや、気候変動対策としての排出権取引制度については2026年導入の方針が確認されるなど、複数の政策課題で具体的な方針を示していただきました。

また、高額療養費制度の見直しについては、福岡厚労大臣から患者団体に寄り添った前向きな答弁を頂くことができました。

「がん患者さんなど当事者の方々の声も真摯に受け止めながら、可能な限り幅広い合意形成が図られるように努めてまいりたい」

福岡資麿・厚生労働大臣(25.1.31 衆議院予算委員会)


質問の一週間前、愛媛がんサポートおれんじの会の松本陽子代表から、高額療養費制度の見直しに関する切実な要望書を受け取り、懸念していた問題です。がん患者やその家族にとって、毎月の医療費の負担は死活問題です。政府が検討している高額医療費の自己負担上限の引き上げについて、分厚いアンケート結果からは当事者の皆さまの不安の声がずしりと伝わってきました。医学の進歩は患者にとっては希望の光。しかしそれに伴って一回の治療の費用が劇的に高騰しているのも事実です。制度の持続可能性と患者負担のバランスという難しい課題にどう答えを出していくか、引き続き私も取り組んでまいりたいと思います。

3623人の患者アンケートに記された切実な当事者の方々の思いを受け取りました

反省と気づき
 
振り返れば反省点も多くあります。パネルの文字が小さすぎて視認性に課題があった点、質問の順番を直前で変更してしまい各省庁に余計な負担をかけてしまった点、そして何より、準備した質問を2問も聞けなかった点です。特に、若手官僚の方々が苦労してご準備してくださった質問を時間切れで聞けなかったことは大きな反省材料となりました。

一方で、与党議員の質問として、政府の政策の意図を引き出しつつ、多くの新しい答弁を導き出すこともできました。ロイター通信はAI規制に関する石破総理の発言を、CoinDesk Japanは暗号資産の税制見直しの期限を、それぞれ大きく報じてくださいました。予算委員会終了後、傍聴に来てくださっていたがん患者団体の皆様から廊下で、口々に「ありがとうございました」と声をかけていただいた時、質問者として大きな手応えを感じることができました。

国会での与党質問は、単に政府の考えを確認し、追認する場ではないことを改めて感じました。具体的な検討を加速させたり、場合によっては政策変更を迫ったりできる強力な権限でもあります。与野党問わず、我々議員一人一人がその役割を国民の皆さまから託されている責任の重みを改めて感じる機会となりました。
 

変化の時代にジャパン・ファーストで挑む
 
米国の政策転換にいちいち右往左往する必要はありません。しかし、世界の政治力学が大きく変化する中で、日本の国益を常に再定義し、常に問い直す営みが今まで以上に大事です。近視眼的な損得だけでなく、中長期的な国の平和と繁栄のために何が必要か。石破総理が「ふるさと」という言葉に込めた思いのように、私たちはそれぞれの地域に根ざしながら、日本の未来を考えていくことが大事だと感じます。

「トランプ大統領は、よく「アメリカファースト」という言葉を使います。そして、これに対して一部批判的な論調もあります。ただ、私はアメリカ大統領だったらアメリカファースト、当たり前だと思うのです。言い方の露骨さは様々あるとは思いますが、どこの国のリーダーであっても自分の国の国益を考える、これは当然なわけでございます。石破総理にもぜひ「ジャパンファースト」でしっかりとこの日本の国益を追求をしていただきたい。」

衆議院議員・塩崎あきひさ(25.1.31 衆議院予算委員会)

2回生議員として有難いチャンスを頂いた予算委員会の質疑。この貴重な機会を与えてくださった先輩議員、事前に活発な議論を重ねながら答弁準備をしてくださった役所の皆様、そして地元から応援してくださった市民の皆様への感謝を胸に、これからも難しい課題に答えを出す努力を続けてまいります。

引き続きの応援、ご指導よろしくお願いします。

ご声援ありがとうございました!


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