見出し画像

「不可能」への挑戦。後押しする自治体を後押しする政府の役割。

脊椎損傷の重度障害を抱えた方が、1年間の米国研修に挑戦する。障がい者の支援にあたっている友人から驚きの連絡を頂き、9月13日に関係者の皆さまと政務官室でお会いしました。

渡米されるのは脊椎損傷者の八木郷太さん。15歳の時、柔道の練習中に首の骨を折り、首から下が動かなくなり現在も24時間の重度訪問介護サービスを利用されています。四肢が動かなくも、口に棒をくわえてパソコンやスマホを操作できるように。3年かけて英語を勉強され、今年、ダスキン愛の輪基金による障がい者の海外研修プログラムに応募。見事選ばれ、クラウドファンディングによるサポートも得ながら、これから1年間のアメリカでの研修に旅立つことになりました。

右から井谷重人さん(CIL星空)、八木郷太さん(CILいろは)、佐藤聡さん(DPI日本会議事務局長)、白井誠一朗さん(同事務局次長)。

しかし、脊椎損傷者の長期海外研修はおそらく国内でも初めてに近い事例。応募の際に一番不安だったのが、海外に行っても24時間の重度訪問介護サービスが継続できるかだったそうです。実際、一度は前例がないため行政側から「支給決定できない」といわれ壁にぶつかり渡米を諦めかけたとのこと。しかし本人の粘り強い努力と団体のサポートの結果、地元の水戸市役所の障害福祉課と、制度を所管する厚生労働省から介護サービスの継続につき前向きな回答を得ることができ、この度晴れてヘルパーの小宮さんと一緒に渡米できる運びとなりました。「厚労省の助言が水戸市の決定を後押してしれた」と、八木さんから丁寧なお礼の言葉を頂きました。

「前例がない」という理由だけで、断られることが多いのが行政の世界。しかし、若い八木さんの挑戦を柔軟な法令解釈でサポートする判断をした水戸市役所の姿勢は本当に天晴れだと感じます。そして、介護サービスが継続できる保証がない中で、車椅子でコツコツ英語の勉強を重ね、研修に応募した八木さんの揺るぎない挑戦心に深い感銘を受けました。厚労省としても、今回の八木さんの前向きなチャレンジを少しでも側面支援することができたことは光栄です。

アメリカに行って何をしたいか、八木さんに尋ねました。

「色々なアメリカの障害者団体がどういう活動をしているかをこの目で見て勉強したい。あと、日本から来た研修生が国の制度を使ってヘルパーを連れてきてるというのは、アメリカの障がい者にとっても衝撃だと思う。日本すげえだろ、とその点もアピールしたい。」

とのこと。そして、

「いろんな人に助けてもらったので、帰ってきたら市のバリアフリー協議会をはじめあらゆる場面で、アメリカでの学びを余すところなく共有して恩返ししていきたい」

と眩しい笑顔で決意を話してくれました。

八木さんの挑戦を特別なケースで終わらせたくない。今回の事例だけでなく、多くの障がい者の方々が、新しい分野、新しい活動に挑戦しようとするときに重度訪問介護サービスの規制が足枷とならないよう、制度を常に見直していく必要があります。八木さんのような事例に対する厚労省としての考えを整理し、近く正式に事務連絡として発出することをお約束しました。

八木さんの渡米は、多くの国内の脊椎損傷者の希望となることでしょう。それだけでなく、海外における同様の障がいを抱えた方々、さらには、不可能に思える何かに挑戦しようかどうか迷っている全ての方にとり、ちょっと背中を押してくれるロールモデルケースとなればと願っています。

「不可能」に挑戦しようとする方々に勇気を与える厚労省であり続けてほしい。そのために私も自分の役割を果たしてまいります。

紹介者の井谷重人さんは弟の中学時代の同級生。松山でCIL星空という団体を立ち上げ、障がい者の自立生活支援に取り組んでいます。cilhoshizora.com

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?