日本の to B SaaS 業界でNo.1のプロダクトマネジメントチームになる
マネーフォワードビジネスカンパニーでMid Market 領域のCPO(Chief Product Officer)を担当しているヒロハラです。
2021年12月にマネーフォワードビジネスカンパニー(以下、MFBC)のカンパニーCPOとなり、早いもので丸3年が経ちました。
CPOの仕事には、大きく以下の2つがあります。
1つ目の、最高のプロダクト作りについては、先日以下のnoteを書きました。
2つ目の、最高のプロダクトマネジメントチーム作りについては、CPO就任と同時に「CPO室」という組織を新設しこれに取り組んできたのですが、今回は、そのプロダクトマネジメントチーム作りについて、CPO室の3年を振り返りながら書いていきたいと思います。
CPO室設立前夜
私自身は、2020年5月に、マネーフォワードに入社し、プロダクトマネージャーとして、新プロダクトの立ち上げに携わっていました。
当時のマネーフォワードは、新しいプロダクトの企画が生まれるたびに、まるでスタートアップが創業するように、メンバーを採用しながら小さなチームを作り、そのチームでさまざまな方針などを決めながら、プロダクト作り、事業作りが行われていくというカルチャーでした。
私自身も周囲のプロダクトチームの様子を参考にしながら、過去の経験も活かしつつ、新しいチームを作り、新しいプロダクトを作り、新しい事業にしていくということを経験しました。
1年くらいこれを続けていくと、なんらかの形で社内で私のことを知った他チームのプロダクトマネージャーから相談を受けることが多くなりました。
その内容は、ざっくり言うと以下のような内容でした。
簡単にまとめると、どのプロダクトマネージャーも孤独感が強く、成長実感がわかない、ということでした。
ただ、このような相談を複数のプロダクトマネージャーから受けていたので、それであればそのプロダクトマネージャーたちをつなげてあげるだけでも解決できることはあるのでは?と考えるようになりました。
そんな経緯で、まずはこの孤独感だけでも解消できれば、と作られたのが、MFBCの全プロダクトマネージャーが集まる「CPO室」という組織です。
CPO室スタート
CPO室設立時のキックオフ資料で、組織新設の目的をいくつか書いた中のひとつに、以下があります。
この実現に向けて、最初に大きく2つの取り組みを開始しました。
CPO室代表者MTG
この会を実施することで、類似の取り組みをしているプロダクトマネージャー同士がつながってお互いにアドバイスしたり、これから同じような取り組みをしようとしているプロダクトマネージャーが質問をして今後に活かしたり、など、相互間の協力が行われやすくなりました。
全プロダクト共有会
この会を実施することで、それぞれのプロダクトマネージャーが、どんなことを考えてプロダクト戦略やロードマップを作り、どんなことにこだわってプロダクトの機能やUXを作っているのかが全体共有され、自身のプロダクトマネジメント業務に活かせるようになりました。
結果的に、孤独感が強い、価値あるアドバイスが受けられない、といった課題は少しづつ解消してきました。
実は、このnoteのタイトルになっている「日本の to B SaaS業界でNo.1のプロダクトマネジメントチームになる」は、CPO室の組織ビジョンです。
ただ、CPO室新設時の状況は、まだ、みんなにこの高い志を目指していると宣言できるような状況ではなく、キックオフ資料の端のほうに小さく書いているのみでした(笑)
CPO室室長の採用
CPO室設立と同時に着手したのが、CPO室室長の採用です。
CPO室設立時、CPO室長は私自身が担当する形でスタートしました。
ただ、最高のプロダクトマネジメントチームを作ることを目指すにあたり、まず必要なのは、組織運営をトップレベルで担うことができる室長の存在だと思っていました。
運良く貴重なご縁で、CPO室設立からわずか9ヶ月で、現CPO室室長の広瀬さんにご入社頂くことができました。
その後の、プロダクトマネジメントチーム作りをうまく進めていくにあたって、広瀬さんにこのタイミングで入社頂けたことは、最大のキーポイントだったと思います。
今では、MFBCのCPOである私を知らない人でも、CPO室長の広瀬さんを知らない人はいないというくらいの業界内での圧倒的な存在感で(笑)、最高のプロダクトマネジメントチーム作りを強力にリード頂いています。
最高のプロダクトマネージャーを集める
最高のプロダクトマネジメントチームを作るために、まずやるべきことは、最高のプロダクトマネージャーを集めることです。
強いチームを作るためには、まずは、そこに所属する個々のチームメンバーが強いこと、つまり「個」が強いことが絶対条件です。
強いメンバーが集まれば必ず強いチームが作れる訳ではありませんが、一方で、弱いメンバーが集まって強いチームが作れるということはありません。
強いチームを作るためには、まずは強いメンバーを集め、そして強いチームにしていく、という順番になることを意識して、CPO室設立時から、とにかく、強いプロダクトマネージャーを集めることに全力で取り組んできました。
行ったことはシンプルに2つ、社外からの採用と、社内にいる人の育成です。
プロダクトマネージャーの採用
プロダクトマネージャーは比較的日本では新しい職種で、且つまだまだ数が少ないため、採用難易度が非常に高く、MFBCでもさまざまな工夫をしながら日々採用活動をしています。
優秀なプロダクトマネージャーとは、プロダクトマネジメントトライアングルの3頂点すべてにおいて高いスキルを持ち、且つ圧倒的に優れたマインドを持っている人です。
MFBCでは、プロダクトマネージャーに必要な優れたマインドを持っていることを大前提に、スキルにおいては、トライアングルの3つの頂点の中で、特に「ユーザー」の部分、わかりやすく言い換えると「ドメイン理解」を最も重視して採用をしています。
MFBCで取り扱うプロダクトは、企業のバックオフィスを支えるプロダクトなため、経理や人事といったドメインを深く理解していることが重要になります。
こう言うと、企業の経理や人事の経験が豊富でないと採用されないかのように捉えられてしまうかもしれませんが、私達が重視しているのは正確に言うと「ドメイン理解能力」、つまり仮に企業の経理や人事の経験が無くても、短い時間で深いレベルまでそのドメインを理解することができる能力、を重視しています。
MFBCでは現時点で20を超えるプロダクトがあり、今後も引き続き新しいプロダクトを増やしていく予定のため、プロダクトマネージャーの人数も揃えつつ、各プロダクトマネージャーのレベルにもこだわって採用していく必要があり、とても難易度が高いのですが、最近ではさまざまな角度から多くの優秀なプロダクトマネージャーに集まってもらうことができてきました。
とはいえ、まだまだ全く人数が足りていないので、引き続き、マインドが素晴らしくドメイン理解能力の高い優秀なプロダクトマネージャーを絶賛募集中です!
プロダクトマネージャーの育成
外部から即戦力となる優秀なプロダクトマネージャーにジョイン頂くことも重要ですが、それと同じくらい、社内のプロダクトマネージャーをさらに強いプロダクトマネージャーへと育てていくことにも力を入れています。
育成において、私自身がこだわってきたのは、社内で最も優秀なプロダクトマネージャーをもっと強いプロダクトマネージャーに育てることです。
育成というと、どうしても若手の基礎教育から始めるという発想になりがちなのですが、目的は、強いプロダクトマネージャーを揃えることですから、現時点で強いプロダクトマネージャーをさらに強く育てていくのが最も近道です。
プロダクトマネージャーは、そもそも職人的職種なので、育成の大半はOJTになります。社内で最も強いプロダクトマネージャーのレベルが上がれば上がるほど、そのあとに続くプロダクトマネージャー陣は、最上位のプロダクトマネージャーのレベルに引き上げられて成長していくことができます。だからこそ、レベルが高い人の育成にフォーカスするとこが重要になるのです。
この、優秀なプロダクトマネージャーのレベルをさらに引き上げる成長支援プログラムについては、CPOである私自身の最も重要な仕事として、コンテンツも私自身が企画し、自身で講師にもなって、かなりの時間を割いて現在も取り組んでいます。
具体的には、以下のnoteに沿って、実際のプロダクト作りをOJTで行いフィードバックを繰り返していくというコンテンツになっています。
この成長支援プログラムについては、以前取材頂いた以下の記事にてより詳細に書いて頂いていますので、興味がありましたらぜひご覧ください。
最高のプロダクトマネジメントチームをつくる
前述した通り、最高のプロダクトマネジメントチームを作るにあたって、まず重要なのは、強いプロダクトマネージャーを集めることなのですが、並行して、チーム作り、チーム力の強化にも取り組んできました。
この、チーム作りについては、以前に以下のnoteで記載したので、ご覧ください。
このnoteは2年前に書いたものなため、現在ではさらに進んだ組織フェーズへと入ってきているのですが、数多くの優秀なプロダクトマネージャーが揃ってきたCPO室を、フェーズに合わせて目的意識を持って組織化しながら、より強いチームとなるよう取り組んできています。
フェーズが進むにつれて、自身も強いプロダクトマネージャーでありながら、リーダーシップも発揮する、優秀なプレイングマネージャーの必要性が増してきました。
それぞれのプロダクト領域で、ミニCPO室のようなチームを作っていくことが必要になってきているのですが、そういったことができる人材と体制ができつつあります。
また、最高のプロダクトマネジメントチームを作る、という点においては、CPO室室長の広瀬さんが、次々と施策をうち実行してくれていっています。
広瀬さんは、「CPO室」こそが自分が担当するプロダクトである、という想いを持って日々取り組んでいると、いつも話してくれています。
最初のキックオフでは、社内資料の端っこに小さく書くことしか出来なかった、「日本の to B SaaS業界でNo.1のプロダクトマネジメントチームになる」という組織ビジョンでしたが、CPO室設立から3年、日々少しずつチーム力を強化することで、こうして社外にも堂々と宣言できるレベルにまでなってきました。(まだ、若干大きくぶち上げてしまったかな思いながら書いていますが笑)
最近は、CPO室設立前の我々のプロダクトマネージャーたちと同じように、社内で孤独感を感じながらより成長できる環境を求めている、各社スタートアップで所謂「ひとりPdM体制」で働いていたプロダクトマネージャーの方々が、我々のこのお互いに学びながら成長していけるプロダクトマネジメントチームという環境を求めて、続々とジョイン頂けるようにまでなってきました。
このようなプロダクトマネージャーの多くは、成長機会を求めて、社外のプロダクトマネージャーが登壇するイベントなどに参加して学びを得ていることが多いのですが、MFBCには50人を超えるさまざまな経験を持ったプロダクトマネージャーが在籍しているため、社内で月に1度、それぞれのプロダクトマネージャーの経験や考え方をシェアしてもらって、みんなで学ぶという会を行っています。
CPO室では、最高のプロダクトマネジメントチームとなるために、さまざまな取り組みを行っているのですが、その中でもこのコンテンツは社内のプロダクトマネージャー陣からNo.1の評価となっています。
グローバル化への挑戦
マネーフォワードは、早いタイミングから、エンジニア採用を海外にも広げたことにより、日本以外の世界中から多くのエンジニアを集めることができています。
多くのto B SaaSベンダーが領域特化型のSaaSを作るのが精一杯な状況の中、マネーフォワードが横断的に網羅的なプロダクトラインナップを揃えるSaaS ERPベンダーとなれてきているのは、エンジニアのグローバル化のおかげと言っても過言ではありません。
ただ、エンジニアの数が増えれば増えるほど、プロダクトマネージャーの数も必要となり、プロダクトマネージャーの採用進捗が、プロダクトの網羅性を高めていくにあたってのボトルネックになりつつあります。
前述の通り、国内のプロダクトマネージャー採用にはもちろん全力で取り組んでいるのですが、日本の労働人口減少と、特にIT領域でのタレント不足を考えると、プロダクトマネージャー採用についても、日本人以外の採用可能性を検討していくタイミングにきています。
これらを検討、推進するために、CPO室の中に、今期からグローバル推進部を作り、日本、ベトナム、インドでの、日本人以外のプロダクトマネージャー採用およびプロダクトマネジメントチーム作りについて、リサーチを重ねながらチャレンジを進めています。
この取り組みは、ここから数年間の大きなテーマになることは間違いなく、まずは、その一歩目のステップとして、もう間もなくMFBCに非日本語話者のプロダクトマネージャーがジョイン頂ける予定となっています。
すべては最高のSaaS ERPを作り届けるため
冒頭で、CPOの仕事には大きく以下2つがあると書きました。
ただ、この2つのうち、最高のプロダクトマネジメントチームをつくることは究極的には目的ではなく、最高のプロダクトをつくるための手段であると思っています。
世界一美味しい料理の裏には、必ず世界一のシェフがいるように、最高のプロダクトが生み出される裏には、必ず最高のプロダクトマネージャーがいます。
MFBCが作っている、マネーフォワード クラウドERPは、コンポーネント型戦略により多数のプロダクトが有機的に連携し、国内中堅成長企業の多くのユーザーのみなさんに最高の業務体験を届けることを目指しています。
この実現のためには、個々のプロダクトを担当する最高のプロダクトマネージャーたちが有機的に連携し協力し、最高のプロダクトマネジメントチームとなって、チームでERPを作っていくことが必要不可欠です。
すべては、最高のERPをつくり最高の業務体験を届けるために、これからも、最高のプロダクトマネジメントチーム作りに取り組んでいきたいと思います。
さいごに
今回は、MFBCのプロダクトマネジメントチーム作りについて、CPO室設立からの3年を振り返りながら書いてみました。
マネーフォワードは、12月から新しい会計年度が始まるのですが、次の3年に向けて、今期より「CPO室」の名称を、「プロダクトマネジメント室」と改称することにしました。
この名称変更には、これまで以上に、組織として最高のプロダクトマネジメントチーム作りにフォーカスし、みんなで一体となって最高のチームをつくっていきたいという意図が込められています。
「日本の to B SaaS業界でNo.1のプロダクトマネジメントチームになる」という組織ビジョンを目指して、MFBCの60人を超えるプロダクトマネージャー陣で協力して、これからも最高のプロダクトマネジメントチーム作りに取り組んでいきたいと思います。