マネーフォワード クラウドERP のプロダクトビジョンができるまで
マネーフォワード クラウドERP のPdMを担当しています、ヒロハラと申します。
マネーフォワード クラウドERPは、昨年の10月に発表させて頂いた成長企業向けのクラウド型ERPです。
ERPというと、歴史ある大手企業や成熟企業が使うもの、という印象が強いと思うのですが、マネーフォワード クラウドERPは、これからの日本をリードするような成長企業にフォーカスしたプロダクトになっている、という点が大きな特徴です。
この、成長企業のためのベストプラクティスをつくり、届けたい!という想いを、「変化をおそれない企業のための、進化しつづけるERP」 というプロダクトビジョンで表現しました。
今回は、このプロダクトビジョンにたどり着いた経緯や背景について書いていきたいと思います。
ERP とは?
まずは、実はわかっているようで難しい、そもそもERPとは?について書いてみます。
エンタープライズ・リソース・プランニング (英: enterprise resource planning、ERP)は、企業全体を経営資源の有効活用の観点から統合的に管理し、経営の効率化を図るための手法・概念のこと。(wikipediaより)
ERPとは、上記の通り、どちらかと言うと概念的なものに対する呼称です。
これを実現するための統合型(業務横断型)ソフトウェア(統合基幹業務システム)を「ERPパッケージ」と呼ぶ。(wikipediaより)
そして、その概念を実現するためのソフトウェアのことを、ERPパッケージと呼ぶ、とあります。
ここからは、そのERPパッケージについて、その誕生の経緯などを書いていきたいと思います。
個別最適から全体最適へ
ERPパッケージが誕生する前、各企業、各部門で使われるシステムは、基本的に個別に開発されていました。そのため、開発完了までに多額の開発費がかかり、開発期間が長くなるという課題がありました。
とはいえ、企業で使われるシステムは要件が複雑で、且つ企業毎に要件が異なるため、個別に開発する以外に構築の方法が無いと思われていました。
しかし、細かく要素を分解してみるとそれぞれの要件にも共通項があり、上手く汎用化すれば、1つのソフトウェアで全ての企業の業務要件を網羅できるのでは、と考える人たちが現れました。
その考えに基づき、たくさんの企業のニーズに1つのソフトウェアで応えられるようにしようと開発されたのがERPパッケージの原点です。
こうして開発されたERPパッケージには、作り手側にもユーザー側にも、それぞれにとても大きなメリットがありました。
■作り手側
・似たようなシステムを何度も開発する必要が無く、ムダが無い。
・個別開発であれば、開発が終わっても自社には何も残らなかったが、製品開発であれば、開発された製品は自社の資産となり、開発費をかけて投資をすればするほど資産価値が積み上がる
■ユーザー側
・完成品を購入して使い始めることができるため、個別に開発するよりも圧倒的に安く短い時間で利用し始めることができる
・短期間で利用し始めることができ、継続的なバージョンアップの恩恵を受けられるため、急速な時代の変化にも強い
このように、ERPパッケージの登場により、企業のバックオフィスシステムは個別最適から全体最適へと大きくシフトし、ムダなく合理的にシステム構築できるようになっていきました。
ベストプラクティス
ERPパッケージには、全体最適による合理化のほかにもさまざまなメリットがありました。その中でも大きなものが、ベストプラクティスと呼ばれる考え方です。
個別にシステムを開発していた時代においては、それぞれの企業の優れた業務プロセスやノウハウは、個別システムの中に閉じてしまい、他社と共有されることはありませんでした。しかし、多くの企業が、汎用製品であるERPパッケージを使うことになり、この状況が一変しました。
ERPベンダーは、各社からの機能追加要望を積極的に自社ERPに取り込み、製品を強化していきました。これにより、ERPパッケージは、多くの企業の業務プロセスやノウハウの良い部分だけを集約したベストプラクティスが詰まった製品へと成長しました。
そしてERPベンダーは、ベストプラクティスこそがERPパッケージの最大のメリットだと売り込むようになりました。
ユーザー側も、これまでより圧倒的に安く、これまでより優れた業務プロセスが手に入るのであれば、ERPパッケージに自社の業務プロセスを合わせて使ったほうが合理的でメリットが大きい、と判断するようになりました。この、ERPパッケージに業務プロセスを合わせて再構築することを、BPR(Business Process Re-engineering)と言います。
加えて、一度ERPパッケージを導入してしまえば、その後も各社から要望された機能や、法改正やトレンドの変化によって追加された機能が定期的にバージョンアップされるので、ユーザーは永続的なベストプラクティスを手に入れることができる、という点が大きな魅力として評価されました。
これにより、ユーザーが増えれば増えるほどERPパッケージが強化され、ERPパッケージが強化されればされるほど、ユーザーはさらに優れたベストプラクティスを手に入れることができる、という好循環がうまれ、ERPパッケージを使うことで、各企業は理想的な業務プロセスを手に入れることができ、各社の労働生産性は大きく回復、向上することになりました。
日本におけるERP
日本に本格的にERPパッケージが上陸したのは、バブル崩壊以降の1990年代になってからです。
しかし、日本では(世界の中で日本だけ)なぜか、この全体最適による合理化という考え方が受け入れられず、引き続き個別最適システムが強く求められることになりました。
この状況は、大きくは変わらず、いまもなお続いています。
では、日本では、ERPパッケージが普及しなかったかというと、それはこの30年ほどでかなり普及しました。ただ、日本の中堅〜大手企業ではほぼ例外無く、導入時に膨大なカスタマイズを行ってしまっています。
カスタマイズを行えば、そのシステムは個別最適システムとなってしまい、ベストプラクティスもカスタマイズ部分に閉じてしまいます。
そのため日本企業では、ERP本来が持つベストプラクティスが安く且つ短い時間で手に入れられるという最大のメリットを得ることができない導入のされ方になってしまっています。
この結果、日本では、ERPパッケージが普及したにも関わらずユーザー企業の生産性は向上せず、時代の変化にも弱い、という状況になっただけでなく、ベンダー側も個別最適のニーズに応え続けたことで、ベストプラクティスを備えた高機能なERPパッケージがマーケットになかなか登場しない、という悪循環に陥ってしまいました。
マネーフォワードクラウドERPが目指すもの
ERPパッケージが本来目指さなければいけないのは、全体最適による合理化です。
みんなが同じ1つの製品を使うことで、優れたシステムを安く短期間で手に入れることができるようになります。
それをさらにみんなが使うことで、製品自体がベストプラクティス化します。
そして、それをさらにみんなが使い続けることで、製品自体がベストプラクティスであり続けます。
その結果ユーザー企業は、高い労働生産性と、時代の変化に対応できる強さを手に入れることができるようになります。
日本では、過去の歴史を引きずる世代を中心に、いまだに個別最適にこだわる傾向にあるのですが、一方で、バブル崩壊以降に社会人となった若い世代においては、コストや労働生産性への問題意識も高く、全体最適による合理化への理解がすでに十分に進んでいます。
そういった世代が中心となる、これからの日本の主役となろうとしている新興企業、成長企業などの各企業にとって、もしこれからの時代のベストプラクティスとなるERPが存在するならば、それは強く必要とされているのではないかと思っています。
そんな経緯から、これからの時代を担う成長企業のためのベストプラクティスを提供し、日本企業の労働生産性の回復と向上に少しでも寄与していきたいという想いを、このプロダクトビジョンにまとめました。
さいごに
プロダクトビジョンが生み出された過程や背景を含めて、多くの方々に共感して頂けたらうれしいです。
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