在宅医療は看取りの医療?
在宅医療は看取りの医療と言われることがある
が、それはなんだか違う気がする。
確かに、在宅医療を受けられる方の多くは人生の終盤に差し掛かっている時期であることが多いのは事実だろうし、実際最期をお見送りすることも多い。
それでも、在宅医療の役割は、看取りだけではないと思う。
もちろん自宅や施設できちんと最期を迎えさせて差し上げることは在宅医療の大事な仕事の一つだろう。
しかし、本当に大切なのはそこに向かうプロセスなのではないだろうか。
悔しいが、医療にできることは正直限られている
と日々の診療で実感する。
老衰の方、癌末期の方を元に戻すことは自分にはできない。
無力さを感じる時もある。
どんなに医学が発展しても、人は必ず死ぬ。
これは生まれた時にもう決まっていること。
いくら病気を治しても、次の瞬間から時計は進んでいってしまう。
(いつか想像を超えた不老不死の時代が来るのかも知れないが…)
そうであれば、その最期の時までをどうやって生きるのか。
どうやって生きたいのか。
それがいつも大切なことではないだろうか。そしてそれはきっと人によって千差万別。
それを具体化して、実現するお手伝いをして差し上げるのが在宅医療の仕事なのだと思う。
終わりがあるからこそ生を大事にして、納得できる人生でゴールを迎えてもらいたい。
そう言った意味では、急性期病院での治療も、もっと言えば新生児や小児の治療も、どこに位置するかだけの違いで、もしかしたら方向性は同じなのかも知れない。
安定させた状態をできるだけ長く維持
し、自宅や施設に住み続けられるようにすることも在宅医療の目標であろう。
例えが悪いかも知れないが、在宅医療の役割は、患者さんを墜落させないことだと思っている。
徐々に高度が下がっていって、着地するのはもう決まっていること。
そうであれば、どうやって皆が心乱さずに軟着陸できるかが大事。
それを実現するには、限られた環境の中である程度の技術が求められる。
なので、私は在宅医療とは究極の総合診療であると思っている。
日々学ぶことが多い。
いずれにしても、ご本人、ご家族がなるべく悔いのないように過ごしてもらえたら、在宅医としてはとても嬉しい。