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【生き残り戦略コラム】AI時代にミドルシニアが生き残る術

“AI時代の到来により、人の手に残されていく人間の仕事は何か?”という議論がますます加熱しているように感じる。それは、恐らく、1~2年前には“ちょっと先の話”だったものが、もはやもう目の前にある現実として実感する人が増えているからだろう。それだけ、AIがらみ(だけではないが…)のテクノロジーの進化は早いということ。ちょっと目を離している隙にAIさんは、我々人間の仕事領域を侵すような存在になっていた。あるルールに則った計算のような単純作業はもはやAI云々以前から存在したテクノロジーにとっくに奪われてしまっていた。スピーディでミスもない。なんならチェックまでしてくれる。

もう少し高度な知的労働も奪われていく。WEBを駆使した調査なんてお手の物だ。生成AIは欲しい情報を素早く集めて、端的にまとめて持ってきてくれる。そして対話もできる。さらにAIは画像の識別能力も高い。高性能なカメラと組み合わせれば、出荷前の製品検査にも活用できる。下手をすれば意識の低い人間よりも学習能力が高いから、“一定のルールに従って”とか、“前例に従って”という仕事はどんどん奪われていく。例えば、弁護士よりも早く過去の判例を引っ張りだしてくる。会計データを読み込ませれば間違いのない決算は組めるし、財務分析もできる。AIさんは冷静で(ある意味で)公平なので、何だったら、経営判断においてそれなりに有効なアドバイスだってできるようになるかもしれない。

クリエイターの仕事も奪われていく。AIさんは、しっかり根拠が明確なデザインを素早く提案してくれる。文章を書く仕事も、いわばルールやセオリーがあるから、膨大な量の名文を学習させさえすれば、全く破綻もない、誤字脱字のない記事を一瞬で出力してくれるようになるかもしれない。これももはや時間の問題だ。コンサルタントの仕事だってAIさんに持って行かれるかもしれない。AIに過去事例や、どっかのセミナーで学んだフレームを学習させれば、それっぽい解を導き出してくれるようになるかもしれない、スピーディかつ安価に。要するにどっかのセミナーで学んだフレームを何の工夫もなくそのまま使って「コンサルティングでっせ」と称しているような人間はもはや用なしになる。こうして学習意欲が高く、理解力のあるAIさんよって、“中途半端な知的労働”は一気に淘汰されていく。

冒頭の問いに戻る。人の手に残る仕事は何か。単純な事務作業が奪われ、半端な知的労働も奪われた後に残るもの、それはエモーショナルな仕事、すなわち人の感情をコントロールし(というと、何となく宗教めいているが…)、気持ち動かす仕事なのだと思う。気持ちを動かす仕事とは何か。それは例えばインタビューもそうかもしれない。まだまだ人はAIさんからインタビューを受けても、しっかり応える気にはならない。楽しくお話をすることもできない。本音だって語れない。人が人をインタビューするからこそ生まれる化学反応というか、心の動きの中で会話が弾み、名言が生まれていく。

もっと、良い仕事がある。AIではできない、人にしかできない仕事。最近、様々な業界、立場の方々をインタビューするなかで気づいたことがある。“人の気持ちに作用し、かつ現実的に求められている仕事”の最たるものが、プロジェクトマネジメントやディレクションではないかということ。しかも嬉しいことに、このAIにはできない、人の気持ちを動かす仕事の領域において、我々ミドルシニアが活躍できるポテンシャルがある。これこそが大人がやるべき仕事だ、と。

以下に理由を述べる。まずは、これまでの経験、成功体験も失敗も生きてくる(もちろん、過去の成功談を大人ぶって押しつけてはいけないが)。複数の関係者をまとめあげて何かを作る、円滑に現場を回していくというのはまだまだAIには難しい仕事なのだろう。しかも今、プロジェクトマネジメントやディレクションができる人材が様々な制作現場、企業において求められている。

裏を返せば、今後は、モノを作る上で多様な目線が必要な時代になっていく。いや、すでになっている。多様性、ダイバーシティがキーワードだ。プロパー社員、外注パートナーなど立場の違う人間の総合力を集結する必要が生じる。様々な立場の人が絡むプロジェクトをまとめあげるには、いわゆる調整力が必要だ。この調整力の根底には人間力があり、それは経験のなかから積み上げてきたモノだ。恐らく多くのミドルシニアの方々は会社員生活のなかで、この調整力を無意識のうちに育んできた。だって、自分に任されたプロジェクトがこけたら、会社の中での自分の立場が危うくなる。必死になって根回ししたり、部下を懐柔し、叱咤激励して仕事を動かしてきた。言い換えれば、バランスをとりながら生きてきた。その経験が今、世の中に求められているのだと思う。

AIにはまだできない、人の気持ちに作用しながら、プロジェクトやチームを動かしていく仕事。決して社員として関わらなくてもいい、フリーランスのPMだって求められている。働き方は時代とともに大きく変わっている。そこにミドルシニアの活躍のポテンシャルがある。

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