2022年の3つの注目トレンドとドーナツ経済学
2021年12月22日にGREEN×GLOBE Partners(SMBCグループが設立)のイベント、「サステナ注目トレンド2022 – ゲームチェンジを読み解く」にて2022年のキートレンドとして発表されていたのがズバリ「脱炭素」「ダイバーシティー&インクルージョン」「ステークホルダー資本主義」でした。
・脱炭素
・ダイバーシティー&インクルージョン
・ステークホルダー資本主義
この三つのキーワードを知っておいても損はなさそうですね。
KEYWORD・出来事 1 【脱炭素】
脱炭素とは地球温暖化の原因となる炭素を減らそう!という運動のこと。
1997年京都議定書は地球温暖化防止京都会議(COP3)では6種類の温室効果ガスについて法的拘束力のある排出目標などが採択されましたが、対象が先進国という限定的でした。
一方、この京都議定書に変わるものとして、2015年に採択されたのが「パリ協定」です。先進国に限らず、今度は参加するすべての国が対象となりました。アメリカのトランプ政権はパリ協定から脱退を表明し国連のグテレス事務総長報道官も、アメリカのパリ協定脱退に「大いに失望した」と表明していました。アメリカはその後、バイデン大統領が就任直後の2021年1月20日に復帰を決定し、2月19日に認められ、同年4月22日地球の日に気候変動サミットを主催することに言及し開催するなど、アメリカは気候変動と科学外交の本気度もブリンケン国務長官の声明で伝わってきました。
日本はこの2030年にむけた気候変動サミットで13年度比で46%減、米国は05年比50~52%減らすと表明。
2015年に採択されたパリ協定では、「産業革命前と比べた世界の平均気温上昇を2度未満、できれば1.5度に抑える」との目標を掲げられ、2度未満が目標で、1.5度は努力目標との位置づけでしたが、COP26(国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議)で採択された成果文書では「「1.5度目標」を実現するため努力が最優先課題とされ、その目標が明記されたことが大きな前進といわれています。
しかし、課題も多く、先進国は2050年のカーボンニュートラル、2030年までの地球温暖化ガス排出量の50%程度の削減で足並みはほぼ揃いましたが、途上国・新興国の足並みはそろわず。世界最大の排出国の中国は、2060年カーボンニュートラルという従来の目標を変えませんでした。
一方、日本も他の先進国からの批判を浴びました。欧州を中心に多くの国が石炭火力発電の早期廃止の姿勢を打ち出す中、日本は石炭火力発電の比率を下げていく方針ではあるものの、具体的な廃止の目標は打ち出しませんでした。
COP26の成長として「グラスゴー気候変動」が採択され、パリ協定のルールブックも完成し、同合意最大の争点となった石炭火力発電は、合意文書案の「段階的廃止(phase-out)」の表現に対し、インド、中国が反対し、「段階的に削減(phasedown)」と表現を弱めるかたちでの合意となった。なお、非効率な化石燃料への補助金は「段階的に廃止(phase-out)」と明記。
次の2022年のCOP27はエジプト、2023年のCOP28はアラブ首長国連邦(UAE)で開催される予定です。 2023年開催国のUAE首相でもあるシェイク・ムハンマド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥーム殿下は「会議を成功させるため、最善を尽くす。UAEは地球を守るための世界的な気候変動対策に取り組み続ける」と述べています。
脱炭素キーワードからの2022年予測
中東が本気になると何を必要とし、何が起きるのでしょうか? 日本の企業がエジプトやUAEと歩もうとする先に2022年のヒントがあるかもしれないですね。 2050年脱炭素というスローガンは、目標達成の推進力となるか? 日本政府は2020年12月の成長戦略会議、2050年カーボンニュートラルの実現にむけたグリーン成長戦略を打ち出しています。この波を有効に生かせられるよう更に情報を取得し吟味、研究していきたいと思います。
KEYWORD・出来事 2【ダイバーシティー&インクルージョン】
ダイバーシティー&インクルージョンとはひとことでいうと「多様性の受容と活用」です。
「排除しないとはどういうことなのでしょうか?」
ダイバーシティの目的は、人材多様化・人材活用による、自社の優位性保持や競争力強化の実現ですが、ダイバーシティーだけでは逆効果になってしまっていることもあるようです。 女性管理職登用や障害者雇用の促進を理念に打ち出す企業も多くなってきましたが、一見、多様性に見えても個々の個性を活かしきれておらず、結果、カタチだけのダイバーシティーとなっているケースもあるようです。
個人の力を最大限に活かす「インクルージョン」の実現とセットにならないと、ダイバーシティとインクルージョン経営が成功しているとはいえません。この二つは切っても切り離せない関係にあるため、海外では「D&I」とセットで表記されることが多くなってきています。
内閣府「令和元年度 年次経済財政報告」のデータによれば、性別・国籍の多様性は、企業業績にプラスの効果を生むとされています。ところが、経済産業省「多様性の増加が生産性に与える効果」では、多様性を活かすための取り組みなしにダイバーシティを推進することで、生産性が低下するという結果が見られました。
多様性の受容と活用を最大に活性化させるのは何事にもフェアな思考と行動が必須になってきます。
しかし、フェア定義するのも大変で、各企業ごとに性質も異なるためにマイナスの影響になってしまうのかもしれません。
ダイバーシティー&インクルージョンキーワードからの2022年予測
海外での取り組みから考察してみましょう。
まず、理解を深めるための啓発やイベントを開催することが多いようです。
例えば、D&I浸透に向けて、ディスカッションやワークショップ、ランチ会などを開催します。
家庭の介護や育児中の社員同士など、ターゲットを絞ったイベントなどは参加した本人が有用な情報も得られ、交流も促進され、コミュニティーが生まれ、独自のスキルの共有や、研修、セミナーの開催などで多様なキャリアの存在に気付き、自身のキャリア形成にも役立つようになります。
また、現場でしか分からないようなスキルや必要な人材という認識や理解できることで、自分とは違うことへの尊敬や尊重する精神を育む機会にもつながります。おのずと管理職も同じ輪にはいることで適材・適所につながる行動変容を加速していきます。
市場のグローバル化、顧客ニーズの多様化、少子高齢化など次々と迫ってくる課題を乗り切っていくには、個人の信念や価値観、ライフスタイルなど、目に見えづらい多様性を許容、受容することが求められますが、一人ひとりの違いを認め合い、個々の能力を100%活かし切る「ダイバーシティー&インクルージョン」の実現が鍵となるのではないでしょうか。
KEYWORD・出来事 3【ステークホルダー資本主義】
2020年1月のダボス会議(世界経済フォーラム)の主題となった、「企業は株主の利益を第一とするべし」という「株主資本主義」とは違い、企業が従業員や、取引先、顧客、地域社会といったあらゆるステークホルダーの利益に配慮すべきという考え方です。
具体的には、環境破壊の防止や、企業がオフィスを構える地域社会への投資、従業員への公正な賃金の支払い、労働者間の格差の是正、適切な納税などが求められています。
きっかけは2019年8月にアメリカの大手企業で構成される非営利団体「ビジネス・ラウンドテーブル」が、格差拡大や短期的な利益志向などこれまでの株主資本主義の問題点を指摘し、あらゆるステークホルダーにコミットする旨の声明を発表。新たにステークホルダー資本主義を提唱するダボス会議にて「ダボス・マニフェスト2020」が作られ下記の6項目が重要項目として議題にあがりました。
2017年には、60社を超えるS&P 500企業が、気象に起因する収益への悪影響を公表するなど、これまでの資本主義のあり方が問われています。
従来の株主資本主義(株主至上主義)では、「株主の利益の最大化」が最も重要で、短期的な利益を出すために従業員や環境、地域社会に負荷がかかっていたとしても利益追求には当たり前と捉えられていたことも多いのではないでしょうか。
社会は多くの課題を抱えており、企業は成長のあり方を見直すことが必要だと「ドーナツ経済学」を提唱するイギリスの経済学者ケイト・ラワース氏も声を上げています。
ステークホルダー資本主義を取り入れる企業としてビジネス・ラウンドテーブルが2019年に発表した声明、「顧客、従業員、サプライヤー、地域社会、株主といったすべてのステークホルダーの利益のために会社を導くことをコミットする」という宣言がなされ、米大手の経営者ら約180人が署名した。
同団体のメンバーには、Amazonや、Apple、Booking Holdings、General Motors、HP、IBM、Intel、JPMorgan Chase等。
参加メンバーいずれもアメリカの大企業であり影響も大きいことから、今後はステークホルダー資本主義の考え方が世界中で浸透していくことが予想されます。
現在の世界は、経済、社会、環境などといった様々な面で問題を抱えたまま、未来に向かっています。現在のままでは、立ち行かなくなることは明らかで、変化が必要なのは確かです。
ステークホルダー資本主義キーワードからの2022年予測
では、何をどう変化させていったらいいのでしょうか。
イギリスの経済学者ケイト・ラワース氏が提唱しているドーナツ経済学は、経済成長だけに注目することを避け、持続可能な未来をつくるための考え方を示してくれました。
仮に、ドーナツの食べられるところ(緑の部分)を「中身」、穴の部分を「穴」、外側を「外側」と表現しましょう。「外側」には環境指標が、「穴」には社会指標が配置されていることがわかります。
ドーナツの外側
ドーナツの穴
今回のテーマ、脱炭素、ダイバーシティー&インクルージョン、ステークホルダー資本主義に関する内容が網羅されているのが分かります。途上国と先進国の協力のバランスもドーナツの輪を見れば理解できます。
途上国の発展を先進国の技術によって、悪い影響を抑えながら互いに発展してくことができる可能性をドーナツによって表現されています。
ドーナツの中身に収まることを目指して
持続可能な未来をつくるためには、環境面での超過と社会面での不足をなくし、すべてをドーナツの「中身」におさめていく必要があります。
ドーナツの図を見ることで、GDP成長という一つの目標だけに目を向けることを避け、総合的に考えることができるように。
そんな願いからこの図はつくられています。
ステークホルダー資本主義と同じような特徴を持つ「ゼブラ企業(ZEBRA UNITE)」という考えも出てきました。「顧客、従業員、創業者、株主」の4つのクラスにオーナーを分け、あらゆるステークホルダーが経営に参加できる権利を持つような体制を構築するものです。ケイト・ラワース氏はこのゼブラ企業のコミュニティーでも発言をされています。ゼブラ企業というキーワードも2022年以降、注目するキーワードとなるのではないでしょうか?
2022年、今年の干支は壬寅(みずのえとら)ですね。
虎は、毛皮の模様から前身が夜空に輝く星と考えられていた存在。『決断力と才知』の象徴としての意味もあり、縁起物としても親しまれています。
「壬」は「妊に通じ、陽気を下に姙(はら)む」、「寅」は「螾(ミミズ)に通じ、春の草木が生ずる」という意味があるそうです。「壬寅」とは厳しい冬を越えて、芽吹き始め、新しい成長の礎となるとのこと。
みなさまにとって幸せな一年でありますようお祈りいたしております。
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