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10年前の自分達のライブ映像を観て

会場である代官山UNITでは内澤氏作のBGMが流れている。

このBGMは家でくつろぎながら聴く分にはリラックスできて心地よい気分に浸ることが出来る最高な音楽だが、バンドとして初めてのワンマンライブを前にした若輩者の緊張感をピークに増長させる非常に迷惑な効果も抜群であった。

このワンマンの前にはカメラマンの橋本塁さん主催のライブイベント「Sound Shooter」があった。会場は新木場スタジオコースト。対バンはBEAT CRUSADERS、THE BACK HORN、Nothing’s Carved In Stone、そしてシークレットのオープニングアクトで9mm Parabellum Bullet。この時のライブレポートがあった。9mmとは時を越えて4月8日に対バンをする予定だったのだがそれはまたの機会にお預け。

https://rockinon.com/live/detail/32449

anewのリリースくらいから、合宿を重ねていた我々にとっては実質このSoundShooterとUNITでのワンマンライブが当面の目標だったわけである。
新木場スタジオコーストでライザーの上にセッティングされたドラムセットに座ると自分自身の体感する低音も凄まじく、そこまで合宿で自分自身が養ってきた何かの要素が全く通じないものがある様な感覚を初めて味わった思い出は今も鮮明に残っている。
地に足が全くつかず、このままではどこかに飛んで行ってしまうのではないかという緊張感に包まれながらどうにかライブを終えた。
この日の打ち上げではその日のトリを務めたBEAT CRUSADERSの方々を筆頭に、既にライブハウスを主戦場に幾多の修羅場を乗り越えてきた先輩方の深すぎる懐に触れて感動したのであった。

そしてUNITの日を迎えた今、改めて上質なBGMが彼の中にある緊張の炎を再燃させていたのであった。
しかもこの日のライブにはSEという名の所謂出囃子がなく、会場BGMからシームレスに1曲目へ繋がるという構成であった。映像を見てもわかるが、メンバーが入場していても一体誰なのかわからず拍手なども起きていない。

そういった経緯もありながらこの愚かな若者はイヤモニを自身のミキサーへ接続するのを忘れる。始まる前にメンバーとアイコンタクトを取り、スタートしようという意思確認はしたものの、最初のきっかけに気づかず突如暗転からのボーカル歌い出しという事態に直面する。

これは自らの火種に向けて火炎瓶を投げ込む様なものであった。ご覧いただいた通りこの映像はしっかりと事前に収録されることが決まっていたにも関わらず出だしから事故を起こしてしまうと一体なにがどうなってしまうのかは計り知れない。彼がキックを踏み始めるまでに残された時間は2小節しかない。今までの記憶が走馬灯の様に蘇る。人生の中でも指折りの演奏中に死を覚悟した瞬間の一つであった。

どうにか接続を終え、はっきりと外耳道から鼓膜を通じて声とギター、そして自身のバスドラムが三半規管を揺らす様な感覚を得た。
まだ1曲目の冒頭であったがそれはこの先の旅路が容易なものではないことを予感させるものであった。

Colorfulという楽曲は確かこの時点ではまだリリースもされていなかった。ただでさえ緊張する1曲目にも関わらず変拍子と戦いながら半拍ズラしの刑に襲われるので緊張の火種を爆発させた自身の数十秒前の愚行を呪うしかないのであった。

セットリスト
1 Colorful
2 Tonbi
3 Halo
4 Glider
5 Merrow
6 Clover
7 Noah
MC
8 Traveler
9 Nam(a)e
10 Roots
11 Basho
12 Te To Te
13 Meme
encore
14 Image Word

まだ14曲しかワンマンでやっていないのだな、と思いつつ自分が観る側ならそれくらいでちょうど良いなと思う。これは人によって感覚が違うかもしれない。MCは無いに等しいけどこれでもいいと思った。

この頃はまだCanopusとも出会う前。使っていた機材は

・Drumset
 Pearl Masters RetroSpec 22" 12" 16"
・Snare Drum
 Ludwig LM404 Acrolite (70's)14"×5"
・Cymbals
 SABIAN AA Splash 8"(or 10")
 Zildjian K Custom Hybrid 14" 16" 18" 20"
 SABIAN HHX O-Zone 18"  

ドラムセットは先輩のお古。そういえばこれもダイキャストフープだったし、全体的にがっしりした造りだった。全体的にパーツがゴールドなのが特徴だったけど、受け継いだものなので見た目に関しても選ぶ余地がなかった。重かったしケースも古くて取手がなくなっていたものだからローディー陣からも文句をよく言われた。
ハードウェアはその時一緒に付けてもらったパール一式。
スネアはアクロライト。アルミで、軽い。お手頃。明るい。曲によって載せ替えはしていない。多分周りにビビっていた。笑
シンバルもO-Zone以外には特にこだわりが強いものはなかった。
学生時代から周りに貸してもらったりして使ったことがあったHybrid Kを一式買ってみたくらいの感じだったと思う。でも良い楽器だと思う。いくつかはいまだに結構使ったりする。

現場におけるドラムのチューニングをどうすればいいのかわからなかったので、知っているチューナーの方に来てもらってお願いしていた。自分のわがままとPAチームからの要望などの間に入ってもらって、すごく大変な思いをさせてしまっていた。正直周りの人たちのことが怖かったし直接戦う勇気もなかった。
とはいえいつまでもそれではいかんと思ってはいたので目の前でやってもらって質問責めにしていた。技術的なことを色々教えてもらったけれど結局は自分でやってみて、とあーだこーだと周りに言われながら少しずつ覚えていかないと身につかないという現実も痛感した。
自分でやって自分で傷ついて考えるから楽器のことも演奏のことも自分ごとになる。先輩方から教わるのも過去の失敗から学んだ姿で、そういうことが沢山ある人は魅力的だしストーリーが深い。
昔の自分の姿を見ているとおいおいもっとこうしろよ、、え、何その〇〇、いやいやそこそっちなのー!?wwと果てしなく自分自身にツッコミを入れたくなるし、大抵草生えまくる。
多分そのツッコミは昔から振り返る度に入れていて、日々それを少しずつ少しずつ修正している最中なのだと思う。
昔の方が良かった、とは感じていないのだけれど、そうやって自己否定と修正を繰り返しているのもあってその時の演奏っていうのはその時しか出来ないのかもしれない。
自分自身も好きな人のライブ映像を観ていると、あの時のあの感じがいいよねというのは沢山ある。それももしかしたら本人的にはとっくに殺した過去だったりして色々修正してるのかもしれない。ファンも勝手だし本人も勝手。自由に楽しんでほしいし自分も演奏を自由に楽しみたい。
それでもただただ気になるのは、よもや内澤君のものより長いのではないかと思われる前髪なのでした。

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