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ジストニア、メンタル、レッスン

好きだから難しい

何年前か覚えていないけど一時期、ライブの中で何回かキックが抜けてしまう時期があった。
リズムが止まってしまうわけではないので曲は進行していくのだがなんとなくスカッとする瞬間が生まれる。どの程度聴いている人が気づいているのかはわからないが少なくとも一緒に演奏しているメンバーやスタッフはみんな気づいている。
そしてそれを直接本人に強く言ったりはしないことの方が多い。でもドラマー本人は周囲の顔色に気づいている。そして思っている、
自分は今みんなに迷惑をかけていると。

全ての瞬間で自分にできる最高の演奏をと思って突き詰めた結果、一打一打に対する集中力と感覚が高まっていくと時間がゆっくり進むようになることがある。ひとつひとつのキックを踏む時、ビーターの先端がヘッドに当たるまでの空間に宇宙を感じる。それを例えばワンマンライブで2時間続けようと思うと果てしない長さに感じる。そんな中でどこかで「あぁもういいかな。」と思ってしまった瞬間、自分の中で頑張ることをやめる。もちろん一回休んだので次の宇宙ではまた頑張る。そうすると自分の宇宙の外では一瞬だけキックが抜ける。今だから自分自身をそういう風に分析して、あの時はああだったのかなと振り返れるがその時はそんな余裕はない。
しかもその宇宙は練習や考察を繰り返せば繰り返すほど膨張していく。良くしようと思っているが故にどんどん大変になる。
検索して出てこない情報はもはやない。自分が抱えている悩みと同じ悩みを抱えている人たちが沢山いて、その中に解決策がないかを必死に探す。でも解決策はほとんど出てこない。それもそうだ、悩みがなくなってしまった人はそんな過去を振り返らず未来に向かって突き進む方が楽しいに決まっているからだと思う。
だから調べれば調べるほどやばいと思ってMacBookの蓋に天空落としをかますのであった。

当時のPAの方はとにかく普段から練習しろ、練習して上手くなることでしかお前は救われないぞということを言ってくれる人だったがその時ばかりは「練習は忘れてゲームでもやれ」と言ってくれた。そして俺は思った。
心配させてしまっていると。
そして自分が練習や努力だと思っていたことが結果に結びついていないと。

ではどうするか

話は変わって、自分はandropをやる前にプライベートやドラムやバンドのこと全部で一度メンタルをがっつりやられた時期があった。
大学も卒業していたので外から見たら既に道を選んでいたと思われていたかと思うが多分そんな大それた覚悟もできていなかった。
人間関係含め色々嫌になり、逃げ出したいが逃げ出す勇気もなく病院へ逃げようと思った。もちろん全ては自分のせい。
その時止めてくれたのが音楽の道を反対されて家にいられなくなった自分を迎え入れてくれた友達だった。病院に行ったらお前はそこで言われたことを信じると思うとのことだった。もちろん病院がどうだからとかではなく、その時のこいつはそういう感じだったとかそういうのを考えてくれてのことだろうけどとにかく俺は感謝している。もちろん今に満足しているということではないけれど、その時の選択があって今の世界線でなければ出会えなかった人が沢山いる。

そんな経験を経ていたのもあって自分が何かに傷ついたり悩んだとしたらそれは自分自身を変えることでしか立ち直ることは出来ないとなんとなく思っていた。
もちろんわかっていても難しいことではあるのだけれど。

それ以外にも沢山の要因があったと思うが、ひとまずドラムの傷はドラムでしか癒せないぜ!と、バカになった。練習と考察を辞めるのではなく宇宙空間におけるスペースジャンプを模索した。結果がどうかはわからないけれど気づいたらそのことについて考えなくなった。PAの方からも呼び出されて「この曲はどういうつもりでやっているの?」と聞かれ「はい!◯◯年代の××みたいな感じのディスコです!」と答え「じゃ、そうやれよ。」と言われるくらいになっていた。

今の積み重ねでしかない。

メンバーの脱退、といえばドラマーの脱退が代表格。また、普段生活していても昔ドラムやってたんですよねという人と沢山出会う。プロだからアマチュアだからとか関係なくなかなか一生続けている人やそうしたいと胸を張って言っている人に出会えない。
だからレッスンで出会った人が自分のバンドやサポート先で褒められた話をしてくれたり、前よりドラムが楽しくなってきた話をしてくれたりすると自分のことの様に嬉しい。本当に。

内澤くんプロデュースで我々も演奏面で手伝わせてもらった映画「サヨナラまでの30分」でもバンドマンのセカンドキャリアとしてギター講師の姿が描かれていたり、君は仮に10年後にandropがなくなっていたらなにするんだ?ドラム教室の先生か?と言われたり、近くで支えてくれていたスタッフの方がキャリアアップでと仰りながら会社を退職されたりした。自分の考えを整理しようと思った。

バンドのメンバーである前に自分は一個人として自分の宇宙と向き合うべき存在と思っているし、そうでないとそもそもバンドの中で役に立てない。だから自分に出来ることをキャリアみたいなものとして順番をつけて考えたりはしていない。それをもっと考えろよという周囲の声なのかもしれない。でも全部つながっている。結局どこにいっても、何をしていても自分との勝負と思う。レッスンは冒頭に書いた様な経験を元に「今の立場だからこそ」できる考えで目の前の人に少しでも寄り添いたいという気持ちで初めた。沢山くらってきたし考えながら取り組んできた自負があるから誰かを助けられると思うからやっている。10年後のドラム教室はわからないけれどそんなことも並行して出来るだけの器になれていたらいいなと単純に思う。その為には自分だけでなくもっと仲間を作らないといけないかもしれない。昔でいう秘密基地、学生時代でいうところの部室を作りたいみたいなのは一人の男子の夢みたいな想いとしてなくはない。もちろんドラムは死ぬまで上手くなり続けたい。

そしてandropに貢献するための宇宙への向き合いと同じ様に、サポートなどで、ありがたくも自分も参加させてくれるところも険しい宇宙調査をさせてくれているし、もっといい音を出せるようになって貢献したい。「サポートだから」呼ばれなくなったらおしまいだなぁ、じゃなくてandropもそういう気持ちでずっとやっている。10年前もandropが10年後どうなるか考えている暇があったら宇宙に行った方がいいと思っていた。自分以外のことを信じて自分と戦う。プロ、アマとかも関係ないし、バンドメンバーかサポートかも関係ない。自分は目の前のあなたにいつも気持ちをもらっている。続けることを目的にするのではなく10年間だろうが100年間だろうが自分が出来ることを全力で目の前にいる人のためにやっていたい。何事もそれがちゃんと出来て初めて20周年、30周年になるんじゃないだろうか。

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