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ロズタリア大陸2作目『その26』

『残された者の義務』

わちゃわちゃ現れる医療都市の大公家が抱える衛兵達の数にアーシュ達は多勢に無勢で徐々に苦戦し始めていた。
「キリがねぇな……!」
一旦、医療都市の駐屯地に撤退して工芸都市に転移することをアーシュが提案する。
「なぁ、このままじゃジリ貧だ!
一旦、屋敷脱出しねぇか!?」
シェドが他国間戦争は邪教集団の利益になる!と否定する。
「戦争は大量の生命エネルギーが冥府に流れこみます!
それこそ破壊神復活の思う壺です!!
みなさん、こちらです!!
僕についてきてください!!」
懐から煙玉を取り出して、床に強く叩きつける。
途端にモクモクと白煙が立ち上ぼり、周囲が全く見えない状態となった。
シャールヴィ一行は手を取り合い、シェドの言われるがまま、黙ってこの隙に当主の命令で行われていた人体復活儀式部屋から脱出したのだった。

医療都市の大公家当主ですら、知らない隠し部屋に逃れ、身を潜ませ一時的に体勢を立て直すことにした一行は、携帯食をかじりながらこの後の作戦会議を行っていた。
「しっかし、当主の野郎……よりによって死者蘇生に手を染めていやがったのか……」
それならば、駐在の魔道師達がなるべく議長である自分と関わらないように、態度がよそよそしくなったのも合点がいった。
各都市を統治している大公家は駐在中の魔道師にとって最大の理解者であり、金銭的な支援者。まして、魔道都市では【最大の禁忌タブー】であり、制約が課されなかなか出来なかった冥府に関する研究が密かに実行出来る。故に共犯者として積極的に死者蘇生の秘術実行に加担していた。
「俺達はこれからどうすればいい?
というか……母上は……その、大丈夫なのか?」
アーシュが怪訝そうに肉体面の問題なのか?それとも魂魄の問題なのか?を逆にシャールヴィに問いかける。
「肉体なら術を破壊、停止させれば問題ないよ?
魂魄もあたしが責任もって、ちゃんと女神アイラの元に炎の精霊長の力を借りて送り届ける」
もっと別の問題を定義する。
「ヤベェのはタチアナ妃を生存させる為に犠牲にさせられ続けている連中のほうだ」
現在は恐らく大陸中の凶悪犯や堕胎児童など生け贄に捧げる事で【生存を維持】し続けている。
人間、処刑と称して生け贄に出来るのは一度限り。人数が必ず足りなくなってくる。
その時は恐らく医療都市の住民が狙われ、ドンドン居なくなっていく事態に陥り兼ねない。危険性や今後の展開を予測する。
シェドがその前にどうにかして大公自身を討伐して、正当性を執事や医療都市、他都市住民や統治者達の理解が得られる手段で事情を公開したい。と訴える。
「このまま強硬的に大公当主を討伐したら、僕らは統治者殺害の凶悪犯罪者です。
それこそクラヴィスが【正義は我にあり!】と大軍での戦を仕掛けてきます」
「どぉ~にかして、生け贄儀式を暴露!止めさせねぇとなぁ~……」
八方塞がり的な状況をアーシュが、ぐわぁしわし!賢者の胸ぐらを掴み強く揺さぶり八つ当たる。
「なんか上手ぇ言い逃れ考えろ!!
その為のお、ま、え!だろうが!!!!」
「確かにそうですね……!
考えますから、ちょっと待ってください!!」
若干、目を回しつつシェドが答えたのだった。

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