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ロズタリア大陸2作目『その4』

統治者としての『正解』とはなにか?

「その節は本当に申し訳なかった!!」
シャールヴィは捕縛状態のまま身体を落として、深々と頭を下げる。
!?
まさかの行動に公国統治者のレイドルフはもちろん。その場に居合わせた人物がこぞって大きく目を見開く。
そんな彼らに構わず、シャールヴィは言葉を続ける。
「地位も身分も失った俺が今さら言って許されるモノではないし、なにより銅貨一枚の価値すらない!!
それでも父は酒に溺れながらも、よく気に病んで愚痴をこぼしていたのを俺は知っているから、あえてこの場で言わせて頂く!
何をしても善政、俺にとって祖父は王国民や執政官達から【為政者の鑑!】と評され、父はその手本となるように!と常に教育され続けていた。
しかし、周囲の期待に応えられず、そしられ失望させ続けていた。
「ぽっと出の庶民に何が分かる!?」
先代妃殿下の人気が羨ましくて、思わず八つ当たりしてしまった!!んだと……」
レイドルフは深い海を思わせる紺碧の瞳をぱちくり何度も瞬かせる。
そして、軽く髪をかきあげ、快活に笑い始めたのだった。
「あっはははは!
面白いね、君!
まずは自分が宝石泥棒したことを必死に弁明する訳じゃないんだ!!!」
そうしてレイドルフは玉座から降りて、すたすたとシャールヴィの近くまで歩み寄っていく。
「レイフ様!?」
謁見の間で控える近衛兵士達に緊張が走る。
レイフは軽く手で兵士達を制止する。
「大丈夫、商業都市での蛮行や見事な手口、殺人鬼と呼ばれている彼だ。
そのつもりがあるならば、とっくの昔に僕らを斬り殺して逃亡を図っているはずだよ?」
大人しく捕縛されている訳がない。
「えっと……、僕とアーシュに話?っていうか用事があるから犯行に及んだんだっけ?
詳しく聞くよ、場所を移そう」
そう言ってレイフはシャールヴィに顔をあげるように伝え、隣で大人しく事態を見守り続けていたシェドのことを一瞬、チラリとみやる。

その後、興味なさげに視線を戻す。思い出したかのように、レイフは宝石泥棒の被害者である商工会長に顔を向け、声をかける。
「あ、そうだ!
ひとまず被害にあった宝石は全部、近衛達が没収!回収済みなんだったよね?
もし傷が出来てたら申し出て?
どうやら僕逢いたいが為の犯行みたいだから、修理費はうち(大公家)が持つよ」
早急に謁見したかった。故にシェドとシャールヴィの二人が盗んだ宝石は全て、捕縛時に大人しく近衛兵士に預け、返還しているのだった。

ちんたら謁見の申し込みなんぞしていられない【急用】が生じている。二人の行動原理を理解したレイフは大胆な手口とあまりにもバカ正直すぎるシャールヴィの態度をまんざらでもない様子で終始、口元を緩ませて別の場所に移したのだった。

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